第六十四話
ドデカい剣が振り下ろされる。
人間離れした膂力と重力によって加速した刃が空気を押しのけながら迫りくる。だが振り下ろされた相手、つまり俺はその攻撃を片手で難なく受け止め、掴んだ剣を引き寄せながら持ち主に蹴りをお見舞いする。鎧が拉げて中の物が全て破裂したのかと疑いたくなるような打撃音が辺りに響き渡り、くの字のまま建物の向こう側まで貫通してぶっ飛んで行った。
小休止をとっている時に襲われなかったのが奇跡に思えるくらい俺たちは何度も襲撃されていた。何度返り討ちにしてもすぐに別の奴らが襲ってくることにそろそろ嫌気がさしてきたところだ。
だが面白い事が判明した。それは……
エ…エ、ギ…… エギ。
敵?
テ…キ。
直後左右の建物を破壊しながら首無しの二体の巨漢共が突っ込んでくる。
俺はその場で跳躍して激突を躱し上からスキルで生やした両腕を思いっ切り振り下ろす。俺の鉄槌をもろに喰らった両者は破裂し肉片が辺りに飛び散る。
俺は意識の奥に潜むコイツに語り掛ける。
他の敵は?
イ……イナ、イ。
何とリルとは一方的なコミュニケーションしか取れないがコイツとは完全なコミュニケーションが取れるのだ。完全と言ってもまだ歯切れも悪いし言葉も覚えているわけでは無いが時間が経てばマジで会話ができるかもしれない。
それに俺は今までコイツの事をどこかネガティブな存在だと思っていた。始めて現れた時は敵じゃないクラゲちゃんに問答無用で襲い掛かってたし、何より最初の時と二回目に現れた時も同様に俺の体の主導権を奪ってくることに危機感を感じた。だけどこうして何度も、どうやってかは分からないが敵が来るのを教えてくれるので強ち完全に『敵』という訳でもないのかも。俺の気の所為かもしれないが。どっちにしろ今はこれ以上何も分からないし、これからコイツと会話してけば何か分かるだろう。
呑気にそんなことを思っていると抱えた箱がもぞもぞ動くので俺はこの場をすぐに離れる。
こんな、辺りに肉片の散った凄惨な光景をリルに見せるわけにはいかないからな。というか、こう何度も襲われてちゃキリが無い。揺れるかもしれないけど仕方ない…… 少し急ごう。
俺は箱の蓋を閉め両腕でガッチリ抱え走り出す。
あまり速く走ると箱の中が悲惨な事になりそうなので車くらいの速度で走る。まあそれでもヤバいかもしれないがジェットコースターだと思って我慢してもらおう。
さて、リルはどの辺を見ていたんだっけか、確か真ん中のデカい城の左奥だったかな。




