第六十三話
最初は一桁のポイントしか無かったこの作品も気付けば50を超えてました。なろうの数ある作品に比べれば決して多いポイントではないかもしれませんが、1ポイント1ポイント徐々に増える事に顔がニヤけてしまいます。これからもよろしくお願いします。
月も無いのに月明かりに照らされた都市はまるで時が止まったかのように静かに佇んでいる。虚しい事におそらく終わりを迎える寸前か迎えた瞬間で時が止まっていることが残念だ。
静止した空間に響くのは自分の足跡だけ。廃墟探索にノスタルジーを感じる人の気持ちはこういうものなのかと、崩れた屋根や割れた窓ガラスから覗く荒れた食卓から感じる。
手に抱えた箱の中の少女、リルも物悲しそうに街を眺める。
俺のスキルで彼女の名前を聞き出す事ができたのでスキルを使って会話試みたのだが、何如せん何を言っているのか全くわからなかった。
暗示スキルで俺の聞きたいことは伝わっているはずなので聞いたものに対応する単語や文章なのだろうが英語や、ましてや日本語であるはずも無く会話というコミュニケーションは無惨な結果に終わった。
どっちにしろ英語だったら分からないんだけどね。
俺の聞きたい事に対して単語を言ってくれるのでこの子の言語習得は可能だろうが…… うん。めんどくさい。
まぁ、会話ができないのはちょっと意外だった。というのも異世界内での会話は全部日本語に聞こえるからだ。正確には相手の話す言葉が自分の馴染みのある言語に変換されるからだ。
異世界はかなり広大かつマナの壁によるレベル制限、加えて門の出現から消失まだのタイムリミットもあるため門を出てからの行動範囲をかなり狭められている。本来なら異世界探索に東奔西走、虱潰しに走り回るのだがそれが出来ないのが調査員の現状だ。
なので異世界で遭難して門が消失した場合、別の門から帰ってくるのはほぼ不可能と言ってもいい。ただ事例が無いわけではない。
とある海外の調査チームが異世界で遭難するも奇跡的に別の国の調査チームに保護され無事帰還した例がある。
その時にあった話なのだが、最初は保護された人達は助けに来たのが自国の救助隊だと思ったらしい。装備や顔立ち仕草など細かいところを見れば普段なら国籍が違う事に気付けたはずだが、遭難して半錯乱状態だったのと相手の話す英語の訛りが聞き慣れたものだった為、門をくぐるまで分からなかったそうだ。
門を出ると相手の喋る英語が先ほどまで聞いていたものとは違っていたためお互い困惑したらしい。
その事が報告されて以来、各調査機関で検証を行った結果相手の話す言語が異世界内では自動で翻訳される事がわかった。余談だが吹き替えられてない海外の映画を異世界で見てもそのままの音声で流れるし、英語の文章を異世界持っていっても書かれた文字が日本語になることは無い。
なのでこの街の道すがらに書いてある看板や道端に捨てられてる新聞の文章は読めないし俺に読めるようになる日は一生来ないということだ。
意識の奥から喉を鳴らす低い音が聞こえる。
おそらくコイツと会話することも一生出来ないだろうな。




