第六十二話
ウアアアアアアアアアアアアッッッッッと……
体の節々を伸ばすと相変わらず変な声が漏れちゃうな、これが数少ない人間時代と変わらない癖かと思うとちょっとどうなんだろ。
リルが俺の声に驚いて箱から俺の事を奇妙なもんでも見るかのように見ている。
リルとはこの少女の名前だ。あの戦いの後この空き家で休んでいる時に聞いてみたら答えてくれた。俺の聞き間違えじゃなければいいんだが。
伸びをした拍子に周りに避けていた物にぶつかりさらに押し退けてしまう。俺の体が家の大きさと合わないため家具やら何やらをどかして漸くスペースを確保したのだがそれでも足らないみたいだ。
相変わらずの月明かりに時間の感覚が狂ってしまいそうだ。ここに来てからどのくらい経ったのか正確には分からないが多分今で二日目くらいか?
そんな思考を巡らせていると、意識の奥底から低い唸り声が響いてくる。どうやらコイツも目を覚ましたらしい。
あの戦いは俺が叫んだあと呆気なく終わった。というのも奴ら俺にビビったのか一目散に逃げだしてしまったのだ。流石に手足を一本ずつ千切られた奴はその場から動けず、苦しんでる様子だったので介錯はしておいた。
民族少年の時みたいに助ける選択肢も無きにしも非ずだがリルを抱えている以上リスクは負いたくないし、何より意思疎通が出来そうに思えなかった。
アイツらと戦った印象は何かしらの指示に従って行動しているように感じた。何処まで行っても俺の勘でしかないから確信は無いんだが。
戦闘が呆気なく終わってくれたので俺は頭の中のコイツをどうするか一旦整理するために休むことにしてこの家にお邪魔したというわけだ。
まあ整理と言ってもコイツと会話したとか一切ないため何ら進展していないんだけど。
だけど幸いなことにあれから特に吠え散らかしたり勝手に手足を動かすことなく俺を意識の深い所から見るにとどめている様だ。
しかし一体コイツは何者なんだ? 最初に出てきたのは遺跡での戦闘中、呼び名は忘れたが確か根っこ?野郎だか何だかみたいな影の中を移動する奴と戦っている時だ。
あの後、現れたミラーフェイスの鏡の空間内で自分に暗示をかけて鎮めることができたんだ。それが今になってまた現れた。暗示の効果が切れたのか? もしくは何かしらの要因…… あああああッ!ダメだ!
俺なんかが何かが考えたって仕方が無いじゃないか、とりあえずリルがこの町で気になっている場所に向かおう。
コイツも今は大人しそうだしまた何かあったら黙らせればいいから大丈夫…… のはずだ。
俺はリルの入る箱を抱え家を後にした。




