第六十一話
遥か昔にその栄華を極め、今はもうその名すら跡形もなく消えた文明があった。マナを読み解き、マナを自由自在に操る術を見出したその文明は他国に服従か蹂躙の二択で以て世界の悉くを手中に収め時代の頂点に君臨した。
人々は永劫に続く幸せを謳歌していた。その栄光は無限に続くと思われていた。
だが輝かしい黄金の時代は突如地の底から這い出た悪夢によってその輝きは穢されていった。
何者か、なぜ現れたのか、目的は。繁栄を支え常に人々を導きマナを知り尽くした賢人達でさえ答えを出せずにいた。蹂躙は津波のように押し寄せ時代は終焉へと向かって行った。
だが諦めなかった。
築き上げた自分たちの歴史を踏みにじられる訳にはいかない。歴史の中で培われた知恵を、武器を、誇りを掲げ悪夢に立ち向かった。
賢人たちは嵐を呼び、雷鳴を轟かせ、龍の息吹で焼き尽くし、英雄たちは大地を砕き、空を切り裂く光の剣を振り下ろす。
押し寄せる終焉は英雄たちの活躍によりその進行を食い止めた。が、どんなに英雄と呼ばれる力を持っていても所詮は一人の人間に過ぎなかった。英雄たちは長く続く戦いの中で一人また一人と命を落としていった。
悪夢はそれを見逃さなかった、
悪夢は英雄らの死体を手に入れると自分の秘術を使い今一度現世に蘇らせある物を奪った。再び生を得た英雄たちは当然悪夢に刃を向けるがそれは叶わなかった。
悪夢によって奪われた物…… それは体だ。
首だけとなった英雄は悪夢に囚われ絶望と恐怖を無限に味わい続けることになり、残された体は自分の首を取り戻すため悪夢のために働き続ける永遠の奴隷となった。
人々を守り安寧をもたらしたかつての英雄たちの成れ果て共は守るはずの国や人々にその刃を振り下ろした。
悪夢はいつしか邪神と呼ばれ恐れられていた。
戦況は一気に傾き気づけば首都一つ残して追い詰められていた。
だが、ある日希望が現れた。
それは邪神の到来にも似ていた。何者なのか、何処からやって来たのか、素顔は性別は、そのどれもが謎に包まれていてた。
何処からともなく現れたその騎士は二対の剣を持ち、人間一人分の太さと大きさの斬首用の刃がそれぞれ持ち手の両端に付いた両刃剣を手を使わず意思で操った。
人々は騎士に最後の希望を託し、騎士は邪神に挑んだ。
三日三晩に及ぶ死闘を征し騎士は邪神に深い傷を負わせ地の底に退いた。しかし、絶望は終わらず、寧ろ始まりに過ぎなかった。
邪神は負ける直前に秘術を使い残された町ごと地の底に沈んでいった。
騎士は何を思ったのか邪神を追って自らも地の底へと向かった。そこは元々邪神の領域、決して生きて帰れるはずがないのに。




