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第六十話

 頭の中でガンガン、声が響き渡ってる。何を言っているかまでは分からないが、おおよそ人に向かって言ってはいけない言葉だろう。


 俺はその場に膝をついてしまった。その隙を周囲を囲む敵は見逃さず攻撃を仕掛けてくる。だが、頭の中があまりにも煩すぎてそれどころではない。が、スキルで生やした両腕は幸いにも俺の制御を離れ、もう一つの人格が操作しているからか迫る攻撃をすべて迎撃し、仕掛けて来た内の一体を掴んで拘束した。


 そいつは両手に剣を持ちフルプレートの仰々しい騎士では無く、動きやすそうな服とその裏に仕込んである最低限の防具を着る言わば旅人のような印象の首無しだ。よりにもよって情け容赦ない別人格に捕まるとは運が無い。


 左腕と右足をそれぞれ掴まれ宙に固定されている。何とか空いている手と足で抵抗するがそれが気に障ったのか頭の声がより一層煩くなった瞬間、掴まれていた手と足がそのまま力任せに引き千切られてしまった。


 決して流してはいけない量の血が捥ぎ取られた場所からドバドバと流れ、立っていた建物の屋根に赤い川が流れ地面まで血が滴る。


 少女にこの光景の一部始終を見せずに済んでよかった。もしこの箱を別の腕で抱えていたらと思うと心臓がキュッと締まり変な悪寒が走る。


 今のうちにこの人格を抑える方法を考えないと。まだ周りに敵がいるうちはいい、そいつらがいる限り標的はそいつらになるからだ。問題はその後、もしもこの箱の少女が標的になったら…… 一体どうすればいいんだ。


 頭の中が騒がしい、五月蠅すぎて考えがまとまらない。


 俺の内に潜む何かは敵の腕や足を潰したくらいでは決して満足することはない。目に映る全てを蹂躙するまで止まらない。そんな予感がする。


 尚も頭の中に声が響く。


 うるせえ……



 叫び声のような何かが頭を叩く。


 五月蝿え……



 外の音が何も聞こえない。


 静かにしてくれ……



 まるで嵐に晒されているかのように打ち付ける怒号。


 あくまでコイツが操れるのはスキルで生やした両腕のみで、攻撃を仕掛けに行こうにもそれ以外の主導権は俺が握っているためその場から俺が動かない事にはコイツも動けない。


 周囲の敵は捕まることを恐れてか、先程から遠距離攻撃に徹している。


 コイツが操作する腕がそれらの攻撃を全て対処し、未だダメージは負っていないが、一方的に攻撃される状況に腹を立ててか、俺にしか聞こえてはいないが敵に向かって吠えていた怒号が、さっきから俺に向かって叫んでいる気がする。


 いや、気がするというか100%俺に向かって言ってきている。



 ムカつくぜ、誰のせいでこうなってると思ってんだ。さっきから、ぺちゃくちゃぺちゃくちゃ……


 堪忍袋の尾が切れるとはまさにこの事。今まで堰き止められていた感情が爆発し、頭の中でもう一つの人格に向かって言ったつもりが力み過ぎて、言葉にならない叫びを上げてしまい、異空間中に俺の咆哮が響き渡った。



 いい加減黙れつってんだろ!!!

もう少し書いたほうが良かったりするのか、と考える今日この頃。

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