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第五十九話

 都市を囲む城壁はよくよく見ると巨大な剣で斬られたような跡や凹み、人間サイズでは決して運用出来ない大きさの矢と言うか、もはや槍があちこちに刺さっていて想像もつかない計り知れない敵からこの都市を守ってたことをこの傷跡達が物語っていた。


 軽く飛び上がり、立ちはだかる城壁の上に難なく飛び乗り、目に飛び込んできた中々雰囲気のある街並みに俺は心躍らせるもすぐにそれも消沈した。


 石造りの建物がびっしりと並び、道も歩きやすそうな石畳で舗装されこの都市が文化的に優れていたのが伺える。が、あちこちに城壁に刺さっていた物と同じ物が刺さっていたり屋根が崩れていたりと美しい街並みは何者かによって破壊された後だった。


 そんな中でも一際目を引いたのが都市の真ん中に鎮座する城だ。よほど高貴な者が住んでいたのだろう、この不思議な月明かりに照らされ中々幻想的な光景で、まるで映画を見る時最初に映る城のようだ。


 取り敢えず目的地をあの城に定め、俺は城壁から飛び降りようとしたが、手に抱えていた箱が揺れた。


 中の少女が何か伝えたいようだ。


 見つめる先は鎮座する城の左奥。そこに行きたいのか尋ねると少女は頻りに頷く。何か心当たりがあるようだ。


 わかった、と了承し改めて城壁から飛び降りる。そろそろ彼女に呼び名が欲しいところだが、いかんせん何も思いつかない。というより名前を聞いてみれば教えてくれるのではと今思った。


 今までの奴らは俺自身で勝手に呼び名を付けてたから彼女の呼び名を必死に考えていたが、無駄だったようだ。そのうち聞くかと思い崩れ寂れるもその崩壊前の町の姿を想像しながら歩いていると枯れた噴水のある広場に出た。


 かつて人々が行き交い、この噴水を中心に街の人たちの憩いの場になっていたであろうが、広場を見渡すと頭部の欠けた人骨がちらほら転がり、今や見る影もなくなっている。


 噴水を覗くと大量の人骨で埋め尽くされている。ここに集まったのか、はたまた何かから逃れるためにこの噴水に飛び込んだのか、もしくは俺の想像を超える何かか、いずれにしても見当がつかないし分かりたくない。


 彼女も悲しそうに眺めている。これ以上この光景を見せるのはなんだか気が引けるのでそそくさと噴水の広場をあとにするが、不躾な足音が遠くから聞こえてくる。どうやら屋根伝いにこちらに向かって来ているみたいだ。


 蓋を閉め箱をがっしりと抱え俺も建物の屋根に飛び乗る。


 扇状の方向から複数の首の無い人影がこちらに向かってくる。箱を抱えているため両手が塞がっているので生成スキルでもう一組腕を生やし迫りくる敵に応戦する。


 馬鹿長い突撃槍(ランス)を軽々と片腕で持ち上げ走った勢いのままこちらにフルアーマーの騎士が突っ込んでくるが、生やした左腕でその先端を掴む。追撃を入れようと掴んだ武器を引き寄せるが、回り込んだ痩せ細った体のパッと見囚人のような見た目の男が元々頭があった位置に熱を溜め熱球をこちらに放つ。


 空気を焼きながら高速でこちらに飛来する熱球を回避するため掴んだ手を離し後ろに飛び退く。すると間髪入れずに視界の端から鋭いオーラを纏った手刀が迫る。


 間に合わない。完全に不意を突かれ反応できそうにない。瞬時にマナを集め防御に徹するが、その時…… 生成スキルで生やした右腕が勝手に迫る攻撃を受け止めた。


 生やした腕は掴んだ相手の腕をそのまま握りつぶし相手は痛みでその場で倒れ悶絶する。俺の制御を離れた腕は尚も倒れた相手に追撃を入れようと暴れてる。この現象には覚えがある。


 まさか…… 


 自分の内から何やら呻き声が聞こえる。


 久々に()()()が目覚めたようだ。

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