第五十八話
首だけの少女とはあれから特にコミュニケーションをとる事はしてないが、俺の顔を見るたびに泣きわめいていた少女が今では俺の事は気にせず流れる景色を思う存分堪能している。
あれから割とすぐに洞窟を抜けることができ、抜けた先の外は不思議と明るく月明かりのように優しく静かに辺りを照らしていた。その先は森になっていて、特に珍しいものでは無いんだが彼女は一々楽しそうに見ている。
長い間箱に仕舞われてずっと暗闇だったんだから、まあ無理も無いか。
そんな何もかもが新鮮な彼女を配慮してか俺は歩くスピードを自然と緩めていた。いつ敵に襲われるか分からない状況なのにも関わらず呑気なもんだが、それらしい気配が全く無いので自然と気が緩んでしまう。
何事も無くしばらく歩き続け、ようやく森を抜けその先にあるのは、巨大な都市だった。
堅牢で巨大で広大な城壁が都市全体をおそらく覆っている。というのも都市の半分近くが闇に覆われていて城壁が町全体を囲んでいるかは推測でしかないからだ。
よくよく周りを見渡すと都市だけでなくある一定の場所はまだまだ闇に覆われたままで、感覚で言うと俺が最初に居た洞窟を中心に目の前にある都市までの長さで円を描いた範囲が闇が無くなり明るくなっている感じだ。
心当たりがあるとすれば、ちょっと前に聞こえて来た不気味なうなり声。それを聞いて思わず強めに吠え返してしまったのだが、多分だけどそれが原因だと思う。てかそれしかない。
そんな推測を立てていると少女の表情が変わる。かなり驚いているのが見るだけで伝わってくる。
あの街を知っているのか?
スキルでそう聞くと、ゆっくりと少女は頷く。それから何かを探すように視線を動かし始め、やがて闇に呑まれている場所を凝視し始める。
どうした?
少女は俺を見上げ何かを願うように見つめ、また闇を見つめる。
行きたいのか?
正直聞かなくても答えは分かる気がするが念のため聞いてみると、少女の首は力強く頷く。
よし、じゃあまずはあの邪魔な暗闇には消えてもらおう。
ということで少女の入った箱を一旦地面に置く。さらに少女の入った箱をデザインそのままに二回りほど大きい俺製の宝箱を生成し、その中に少女の入った箱を入れて俺が作った箱の蓋を閉める。
さらに俺の作った箱に暗示をかけ、さらに強化する。
『中身を守れ』や『音を遮断しろ』などの暗示をかけまさに鉄壁の宝箱を作る。
少女の鼓膜はこれで守られるな。
俺は腹の底にマナを溜め、数秒後一気に咆哮として解放。俺の爆音の叫び声が異空間中に響き渡り、その衝撃で俺の周囲が吹き飛ばされ禿げ上がっていく。
それから、マナによって強化された俺の叫び声は先の暗闇をどんどん押し退け、先ほどまで半分しか見えなかった都市が、今やその全体像がくっきりと映っている。
これで良し。じゃあ行きますか。
俺は箱を抱えまた先に進む。




