第五十四話
箱の中の少女の首が泣き叫び、暗黒にギャーギャーと喚き声が木霊する。目に涙を浮かべ、何かを懇願する様はまるで「命だけは」と命乞いをしているようだ。
箱を開けて周りの雰囲気も相まって生首とご対面した俺も相当ビビったが彼女の方がもっとビビってたみたいだ。
よくよく考えれば、1人悲しく箱の中で泣いているところに突然蓋が開いて現れたのがコレでは泣き叫ぶのも無理もない。
どうにかして宥めて泣き止ませたいが、パニックに陥っているためか暗示スキルが効いておらず、宥めようにもこの顔ではどのみち不可能な為、俺はほとほと困り果てていた。
少女の首を放置して行くことも考えたが、明らかに理由ありな少女をこのままにしておくのも何だか忍びない気がして行くに行けなかった。
どうしたものかと考えていると、ふと背後に気配を感じる。
それも一つでは無く複数の気配。迷いなくこちらに近づいてくる気配は段々大きくなっていきこちらも身構える。
少女の首は泣き疲れたのか、それともこちらの緊張が伝わったのか目に涙を浮かべたままだがいつの間にか泣き止んでいた。
相変わらずの暗闇で何も見えないが確実に何かがすぐそこまで迫って来ている。
姿が見えないため迂闊に手を出さないでいると少女の首がある一点を見つめ固まり、だんだんと恐怖で顔が崩れていく。
すると不意に少女が見ている方向から何が空気を切り裂きながら高速で少女の首目掛け飛来する。
俺はそれを少女に当たる寸前で掴み取りそれを見る。投げ込まれたのは斧だ。気色の悪い肉片に侵蝕された掴むだけで気持ちの悪い錆びついた斧が投げ込まれた。
さらに別の方向から鋭い触手が不規則な軌道をしながらまたもや少女に殺到するがそれを尻尾で払いのける。
どうやら、あちらさんの標的はこの少女の首らしいが、今はそのことを考えている余裕が無い。向こうはこの首を狙っているのは確かなので、見つけてしまった手前、取り敢えず守る事にする。
箱を閉めてから地面に置く。抱き抱えようかと思ったが、持って動くと中が大変な事になると思い待つのはやめた。
待ち構えていると遠距離からの攻撃では無理と悟ったのか闇の奥から2体の異形が姿を現した。
どちらも共通しているのは頭が切り落とされている事だ。
一体は人型で太った厳つい男性で膨らんだ縫い目が縦に大きく入り、左手に俺がさっき掴み取った斧と同じ物を握っている。
もう一体は恐らく犬。頭が無く、代わりに地面まで伸びた複数の長い触手を引き摺っている。もしかしたら元は別の生き物かもしれないが雰囲気とか佇まいから多分犬だ。
ペットとその飼い主がジリジリと近づく。俺を見ても引く気が無さそうなので戦いはどうしても避けられないらしい。
遺跡以来の殺し合い。久々の戦い。
なので……
ちょっとだけ本気を出す




