第五十三話
マズいな、ここが異空間だとすれば脱出するのは容易じゃない。スキルをどうにかして解除させない事には永遠にこの暗闇を彷徨うことになる。
さらにこの暗闇。これが想像以上にやばい。俺の目は光の反射を捉えるのではなくマナが発する光を捉えている。だから日の光の無い暗闇でも何の問題も無く動くことができるが、ここでは自分の体以外何も見えない。
どうなってんだ? もしかしてマナが無い? いや…… その逆だ、これは。
暗く、深く、淀んだ光を発しているんだ。そのせいか俺の体が少しだけ曇っているように見えるんだ。だがどうする? 視界に頼れないなら他の部分を強化するか。
試しに耳にマナを集めて聴力をめちゃくちゃ強化してみるか。まあ、音が聞こえるだけで耳なんて付いてないんだけど。
頭の何処を触ってもそれっぽい穴は空いてないし、そもそも耳が付いてないからどうやって音を聞いてるのか分からないが、何故か聞こえてくるのでその場所になんとなくマナを集める。
僅かな音も逃さないため、静かに呼吸をし体を動かさずジッとその場で耳を澄ませる。
キーンという何も聞こえない時に耳の奥で聞こえる音がだんだんと大きくなっていく。
やっぱり何も成果は出ないか、そう思った時。極限まで強化された俺の聴覚が微かな音を拾った。
何の音かは分からないが、この何もない空間に俺以外の何かが居ること、もしくはある事が分かっただけでも僥倖だ。
俺はその微かな音を頼りに歩き始める。
俺は内心ホッとした。この空間をただ闇雲に進むのだけは避けたかったからだ。
しばらく進むと音の正体がわかる。泣き声だ、それも女性の。
いよいよ不気味になってきたぞ。異世界に来てまでホラー演出を味わうなんてごめん被る。俺の勘違いであってくれ、頼む!
だが、いよいよ音に近づいて行くと、暗闇から現れたのは一つの宝箱。俺からしたら小さいが人間サイズなら抱えるくらいの大きさだ。
そして中から、ハッキリと聞こえる女の泣く声。もはや俺にとってこんなの宝箱でも何でもない。
開けても大丈夫だよなぁ、いややっぱり開けずにそのままにした方が…… いやいやダメだ! よし! やるぞ!
俺は意を決して宝箱の蓋に指をかけ静かに開ける。箱が開いていくたびに顔を思わず逸らして目を瞑ってしまう。
蓋が空いた拍子に入れ物の部分とぶつかりゴンッという音が鳴る。恐る恐る目を開け箱の中身を確認すると、中に入っていた物と、いや中に入っていた者と目が合った。
箱に入っていたのは可愛らしい女の子の…… 生首が入っていた。
心臓がキュッと縮んだように感じ背中から頭の頂点にかけ寒気と鳥肌が全力疾走し顔に汗が滲み顔が強張ってしまった。
次の瞬間、少女の生首がこの世の終わりのような表情を浮かべ大号泣するのだった。




