第五十二話
ドンという衝撃に体を起こし気怠げな唸り声を上げながら、俺は目を覚ました。
あれ? 俺、今まで何してたんだっけか…… 確か、やたら豪華な屋敷の庭に不法侵入して、えーっと。なんだか頭が上手く回らない。ボーっとしちゃってる。
俺は自分の顔を両手で挟むように強くバシバシと叩き痛みによる覚醒を促す。
あーー、段々思い出して来たぞ。えっと、メイドちゃんに会ってから屋敷に案内されて、そっから別の執事とメイドに中まで案内されてから…… そうだ! 豪華な飯を食ったんだった。
マナーとか全く知らなかったから結局素手でバクバク食ってて、それから…… 気付けばこの真っ暗な空間に居た。
クソ!
やられた!!
今思えば、首が無い連中の集まりなのに飯が出てくる時点でおかしかったんだ。口が無いのにどうやって食うんだって考えれば何か違和感があるって気付けるだろ、俺! 何やってんだよ全く! 呑気に差し出された物を食って今まで気を失っていたと思うと自分に泣きたくなる。
てか…… また暗いところに来ちまったな。
門から落ちてこの世界にやってきて最初に目にした光景は暗闇だった。何も見えず、何も聞こえず。ただ不安が募っていくだけの虚無。
物理的な先の見えなさと、将来的な先の見えなさが重なりあの時の俺は深い絶望に陥っていた。何とかあの場所を抜け、立ちふさがる敵や障害を乗り越えようやく日の光を浴びれたと思ったら、これだ。
まあ、あの頃と違って今はできることが増えたし、この体の底知れない力に自信を持っている。変な物食って気を失っていたのは忘れるとして、さてここはどこか。
真っ暗で何も見えない、辛うじて見えるのは自分の体のみ。足元は元々屋敷に居たはずだが打って変わって地面の感触、それも土や砂の柔らかさでは無く岩肌の感触。恐らくだが洞窟のような場所、だと思う。
その時、見えないながらも辺りを見回している時だった。感じない。俺が作り出しクラゲちゃんに持たせてある物の信号が感じられない。つい最近作って実をくれた木の近くに刺した剣の信号も。
俺は一体何処に居るんだ? もしかしたらあの屋敷からかなり遠くにいるのか? 確かにそれも無くは無いが、どうやって? スキルにしても吹っ飛ばしたりしたら流石に起きるはず…… そういえば俺、何かにぶつかったような衝撃で目を覚ましたんだった。
周りに壁のようなものは無い。俺はふと上を見上げ思う。
もしかして落ちて来たのか? いやいや、人生でこんなに落ちるって事あるのか、もし俺が育成校に行かず普通の学校に行こうとしてたと思うとゾッとする。
まあそんなことは置いておいて、思いっ切りジャンプしてみてもいいが、ただ。落ちて来ただけなら俺がクラゲちゃんや木に持たしてある物の信号を捉えられるはず、だけど今はそれらを感じられない。
もし俺が何かしらのスキルで別空間に落ちて来たなら? 俺が作った物の信号を感じ取れないのには心当たりがある。
俺が作った槍。あれにも自分の位置を持ち主に教える信号を発するようになっていたが、わけわからん奴の体に取り込まれてしまった瞬間信号を感じられなくなっていた。さらにそいつをぶん殴って星にしてしまいその槍は二度と俺の元には戻ってこなくなった。
この事から分かるのは、一つ、異空間に行った物の信号は俺に届かないし分からない。二つ、異空間の主がスキルを解除しない限り、中にある物はこちら側に帰ってこない。
あのわけわからん奴を倒したのに槍の位置が分からないのは、多分スキルが解除されてなくて、取り込んだ物が外に出て来てないからだ。
……ヤバくね?
俺、ここから出れなくね?




