第五十一話
俺は今、首無しのメイドさんに連れられ豪華な屋敷に向かって庭園を進んでいる。
もう少し辺りを見て回りたい気もするが、不法侵入なうえ咄嗟に暗示をかけた手前、メイドさんの案内を無碍にするわけにはいかず大人しく後に着いて行く。
屋敷に近くなるほど人影も増えていき、メイドさんの他、庭師や執事の様な人達も居るみたいだ。まあ、メイドさんと最初に会った時のようにこちらを見る?と驚愕したり怯えたり様々だ。
俺はここに来て少し違和感を感じている。恐らくだがこの屋敷周辺のマナレベルはかなり高い。それこそ俺がいた遺跡とほぼ同じか若干低いかだ。
それだけの高レベル地域ならここに居る首無し族達もかなり高いマナを宿しているはずなんだが、俺を見た途端この恐れよう。
確かにある日突然こんな化け物が庭を闊歩してたら誰だって、驚くどころか失神しても可笑しくないが、ここの連中もそれなりに強い筈なのにどうして?
俺がそんなくだらない事を考えていると、屋敷の方から何だか役職が高そうな執事とメイド、そして数人の騎士が駆け足でやって来た。
ヤバいなぁ、最初は暗示をかけて一安心って感じだったけど、段々ややこしくなってきちゃった。
騎士はこちらをかなり警戒している様子でこちらを見て?いる。俺を案内したメイドは側から見ると身振り手振りだけなのだが慌ててやって来た執事とメイドと何やら話している。
数分後、どうやら俺を屋敷に招き入れる事にしたらしくメイドさんに変わり、ここからは役職の高い執事とメイドが案内してくれるみたいだ。
今まで案内してくれたメイドさんと別れを済ませ、屋敷に向かう。
え!? あれってドラゴンか? やっぱり異世界にドラゴンって居たんだ!
首輪が付けられリードと言うかぶっとい鎖に繋がれた頭の無いドラゴンが屋敷のそばの広場に横たわっていた。
頭が無えからあの首輪は意味があるのか、てか生きてるのか疑問に思っていると、こちらに気付いたのか長い首を持ち上げこちらを見つ?める。
ドラゴンの頭の断面は黒く塗りつぶされて奇妙だがグロくは無い。よくよく見ると執事もメイドも騎士も同じように断面は黒く塗り潰されている。
多少、いやかなり気になったが急に触ったり指を突っ込んだりする訳にもいかないので、大人しくしていると、屋敷の入り口に到着しまた。
ガチャっと開く重厚な扉の音に思わず感動していると屋敷に入ってすぐの目の前の階段から豪華な黒と紫のドレスに身を包んだ、ザ・お嬢様と言わんばかりの首無しの女性が降りてきて俺を手招きする。
行っていいのか?っと思っていると周りの使用人達に『どうぞ』と促されたので意を決してお嬢様の元まで歩く。
すると俺が近くに来るや否や俺の手を引き部屋に案内し始めた。
何やらトントン拍子で事が進んでいくが俺は不思議と慌ててはいなかった。
フッ、俺を甘く見るなよ。これまで俺は幾度となく意味不明な攻撃とか状況に晒されてきたんだ。ここは異世界、しかもかなりの高レベル地域、何が起きても不思議…… ではあるけど、俺は決して動揺、しない!!
ガチャンと進んだ先で開いた部屋に入り、用意されたでかいテーブルで着席…… は俺がデカ過ぎて出来ないので楽な姿勢で待っていると、その向かい側にお嬢様が座り、しばしば沈黙の時間が流れると再び部屋の扉が開かれる。
やって来た使用人たちが次々とその手に持って運んできた物をテーブルに並べていく。
ゴクリ。
俺は思わず生唾を飲み込んでしまう。目の前に並べられたのは豪勢豪華の料理たち。異世界にきてから、いや生まれてこの方見たことも無い料理が目の前に並べられ俺は困惑した。
チラリとお嬢様を見ると、どうぞと手で促してくる。
よっしゃ! いただきまー…… いや待て、俺、食事のマナーとか全然わかんないだけど。




