第百七十五話
か細いマナの痕跡を頼りに俺は真っ暗闇を突き進む。日の暖かさや吹く風、それと乗り捨てられた車やガードレール、何かしらの建物の外壁をこれでもかと体で感じている。
真っ暗闇に奴から漏れ出たマナの残滓しか見えないため体格のデカさも相まってそこら中の障害物を吹き飛ばして進んでいる。
やべぇ、また何かぶつけたぞ。
ベンショウ、ダナ
いや無理だよ、金なんか無えんだから。それよりも人とぶつかったりしたらマズいぞ。確実に轢き殺す事になっちまう。
シカタナイ、シカタナイ
仕方なくねぇよ!
実際そこら辺を気にしている関係であまりスピードを出せていない。そのため奴の気配や姿は未だ確認できない。
さっきから周りから聞こえる人々の叫び声から判断すると後を追っているのは確実だが、近づけてはいない。何なら寧ろ離れている可能性が高い。
あまり遠くに行かれるとかなり面倒な事になるのは目に見えている。
このまま時間が経つと目印は次第に消え、帰れなくなる恐れ、というか確実に帰れなくなる。
どうする……やっぱり一旦引き返すか?
オイ
お、まさかいつものか?
ミギナナメマエ
え? 右斜? こっち?
チガウ、モウスコシ、ウエ
上? こっちか!
チガウ!!
突然体から生えた腕で思いっ切り顎にアッパーが飛んでくる。
ぐえっ!
殴られた衝撃で顔の向いてる方向が変わった瞬間、再び新しく生えた腕が俺の頭をガッチリ掴んで向きを固定する。
何しやがんだ!
ムコウ
あ? ……あれは!?
真っ暗闇の奥の奥。遥か闇の先で黒い何かが噴き上がるのが見える。暗闇なのに黒い何かが見えるのは、かなり奇妙な感覚だが、まあこの際気にしない事にしよう。
でかした! 流石相棒だな。
……
どうかしたか?
いつもなら何かしらの反応を返すはずだが、特に反応が無い。そのことを少し怪訝に思っていると。相棒がようやく反応する。
イソゴ
あ、ああ。
どうしたのか描きたい気もするが、こういう場合は何だかんだ、はぐらかされるのが分かっているため敢えて俺も言及はしない。
だが、俺にとって何か良くないことが起きてる事に違いないので俺は相棒の言葉通りに少しだけ急ぐことにする。
遠近感が無いので多少ズレるかもしれないが、俺は一度足を止め、一瞬マナが噴き出たあたりに狙いを定め一気に跳躍する。
ちゃんと目的地にちゃんと迫っているか俺は分からないが、そこら辺は相棒が上手くやってくれてると信じてる。
これなら行けそうか!
イケルイケル
そうか! よーしこのままあそこまでっ!?
「キャー!!!」
「うあああああ!?」
結構高く飛んだはずだったけど何かにぶち当たったようだ。
硬い壁だけじゃなく、多分ガラスかな、何枚もバリバリと突き破って何処かのビルに突っ込んでしまった。
アーア、ベンショウダ
うるせぇって。




