第百七十四話
一体、オレは何をしているんだ? なんでこんなことを……
体の奥底からマナが絶えず溢れ続ける。オレは足を止めてその場に倒れ込む。
体がはち切れそうだ。苦しい。
強烈な雄叫びを上げのたうち回る。溢れ出るマナにより今にも爆発してしまいそうな苦しみを和らげる為、体を打ちつけ、体から靄でできた触手をいくつも伸ばし振り回す。
辺り一面が成す術なく吹き飛び崩れ更地に変わり、その場には自分一人が取り残されていた。
幾分かはマシになったが、それでも多少器の水を少し無くしただけ、またすぐに器は満たされまた苦しむことになる。
再び頭の中に疑問が浮かぶ。
なぜオレはこんなことをしてるのか、なぜこんな目に遭っているのか。
しかしその思考を邪魔する存在が現れる。
「居たぞ! すぐに応援を呼べ! お前らはこの近くに門が開いてないか調べろ!」
「了解です!!」
「決して近づくな! 包囲して高レベルの戦闘員が来るまで警戒だ!」
何故かそいつらの言葉が分かる。
そいつらを見てるだけで不快感が滲み出る。苦しむほど溢れるマナによって、感情の無いただの現象から意識を持ち、覚醒させた存在はさらにその上……
自我を得た個人になっていた。
突発的な感情に振り回される事なく、どうしてやなぜ、などの思考を意識的に行い、自分の行動に意味を持たせていた。
しかし、苦しみはそういったものを押し潰す。魔物だった存在は自我を手に入れるも苦しみにより深い思考を行えず、むしろ苦しみから解放されるために安易に答えを出した。
コイツらの所為で。
どちらにしろ苦しみから解放されるにはマナを消費し続けなければいけない。それに加え一段階前の自分が既に抱いていた人間という種に対する怒りが魔物だった者を突き動かした。
苦しみを紛らわすために奇声を上げ、その場から走り出す。体を建物や道路にぶつけ、引き摺りながら不快な声を上げる連中に近づく。
「なっ!?」
最後まで喋らせることなく上半身を消滅させる。しかし弱者を痛ぶった時、いつも感じる快感は無い。
寧ろこの程度の攻撃で死んだことで、マナを発散することが出来ず、逆にイラつく。
靄の触手でその場から逃げようとする奴らを掴み投げ飛ばそうとするが、軽い力で胴体を真っ二つにしてしまい臓物がぶちまけられる。
何をしようとも上手くいかない、自分の思い通りにならない。苦しみは絶えない。耐え難い。
オレは、オレハ……誰かオレを……コ。
再びマナは自分という器から溢れ、その分苦しみが増し、思考は遮られる。
そして無意識に走り始める。ソレから逃れるために。




