第百七十三話
何も見えないので取りあえず正面に向かって何かに当たることを期待しながらひたすら歩き、その願い通りに何かにぶち当たった。
イテッ……これは、壁?
触ると、表面は滑らかよりのザラザラで結構冷たい。硬いけど石では無い感じ、所謂コンクリートって感じの感触だ。
一応ここが元の世界で間違いないのは確定したので取りあえず良かったと胸をなでおろす。
と言ってもまだここが日本かどうか分からないんだよなぁ。
門の前に集まっていた人たちは概ね日本人って感じだったけど一部外国人が数名居たのを思い出した。この完全暗闇の状態で日本じゃなくて海外のどっかに出たら完全に終わりだ。下手をすれば唯一見える門を見失って異世界に戻れなくなるかもしれない。
てか、異世界に帰るってなんだよ。まあ、そう決めてるからいいんだけど。てかどうするか……さっきの場所に戻って、目の代わりとして誰か連れて来るか? だけどなー
壁に頭を打ち付けどうするか思案する。しかし一向にいい案は浮かばない。自分の姿を自覚してるからどっちにしろ騒がれると思うが、適当に歩いて誰かに見つかって騒ぎになるのもちょっと避けたい。
うーん。
オイ、ナニカミエル
え? どこ?
そう言われ辺りを見回すと、微かにだが地面に光が見える。宿したマナが発する光では無く、何というか漏れ出たマナが微かに光ってる、そんな感じだ。
それが一方向にスーッと伸びて行っている。俺はそれを辿ってみることにした。適当に移動するよりは唯一見つけた手掛かりを参考にした方が良さそうだと思ったからだ。
暫く歩くと、足元から変な感触が伝わってくる。ベチャッとした液体のような感じだ。最初は水かと思ったが、どうやら違うみたいだ。
おいおい、死体じゃん。これ。
マジカ
足元の液体付近を探っていると何か柔らかい物に当たる。それを隈なく触ってみると手から伝わる体の造形から人だと分かる。
足があって手があって、そこから触って行くと予想通り頭があって。だけどそれが地面に人が転がっている理由にならない。もう少し詳しく触って行くと腹のあたりからベチョベチョした物が飛び出ているのが分かった。
流石に俺でも何が起きたか分かる。件のイレギュラーと呼ばれるあの魔物に殺されたことを。
目立ちたくは無かったけど仕方ない。
イマサラ
……まあそうだな。
俺は地面に残るマナの残滓を頼りにそこから駆け出した。完全に暗闇の世界だが、唯一良かったのは普段だったら絶対に見逃していた微かなマナの残滓が見えることだ。
さっさと奴を始末しないととんでもねぇ事になる。俺はそれを確信して更に足を速めた。




