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第百七十一話

「綾瀬を助けてくれ!!」


 さっきまで俺に話しかけていた岡田という人とは違う若い子が決起迫る勢いでまくし立てるように俺に話しかける。


 爆弾でも扱うように慎重に俺に話しかけてきた岡田とは違いこの子はそんな事お構いなしの様子だ。それを見て岡田もかなり焦った様子で止めに入る。



「落ち着きなさい、姉崎さん! 今がどういう状況下分かってるの!?」


「そんな事わかってる!! 綾瀬がわけわかんねぇ奴に攫われてヤバいって事くらい!!」


 敢えて目の前の事は口に出さず、それよりも他の事に集中しろと言わんばかりに口論する。



「それは必ず何とかする。だから今は落ち着い……」


「そんな悠長なことしてられない!」


 姉崎と呼ばれた子は再び俺に向き直り、泣きそうな顔で懇願する。



「頼む、友達を……あたしの友達を助けて!!」


 悲痛な叫びが木霊する中、俺はジッとその子を見つめた。混じり気の無い純粋な願い。そして……



 どこかで見た気がする……


 気のせいかもしれないが、いや完全に気のせいだ。俺とこの子は初めて会った。だからどこかで会ったはずも無いし異世界に居たから会うはずがない。だけど。



 オイ、ドウスルンダ?


 ん? 何が?


 タスケルノカ、タスケナイノカ


 あーそうだった。でも助けるって言っても、この体器用なこと出来ないからなあ。殴る蹴るで解決できるなら、やってもいいけど……


 そう考え俺はスキルで姉崎と呼ばれるどこか見覚えがあるような気がする女性に話しかける。具体的には何が起きて、何をしてほしいのか。そんなところを聞いてみた。


 姉崎は最初は吃驚した様子だったが、すぐに力強い眼差しを向け話始める。



 ・・・



 なるほどなあ。綾瀬という友人がイレギュラーとか何とか呼ばれる魔物に連れ去られた。そいつは自分達じゃ手に負えない程強い。だからソイツから綾瀬を助けてくれ。そんな感じか……


 それを聞いて何というか申し訳ない気持ちになる。



 さっき俺が蹴散らした奴らはイレギュラーの分身体らしい。正直言うとアイツらは見覚えがあった。かなり前に俺から槍を盗んだ不届き者だ。あの時完全に仕留めたと思ったし、まさか生きてるなんて。


 しかもソイツがまさか人間に害を与えるような存在になるなんて。しかも被害はどんどん広がってたらしい。


 天使とは違うが、それと似たような気配があって、さっきみたいに大量に分身出来て、被害が出まくった……やべえ。これ俺の所為か?


 百パーとは言わないが、それに近いっていう直感が胸の奥からひしひしと感じる。改めて申し訳ない気持ちになった。



 ・・・



 姉崎の言葉に化け物が再び固まり考え込む。もしかしたら願いを聞いてくれるかも、という楽観的な気持ちが大半を占めているが、心のどこかで対価などを要求されて、しかもそれが受け入れがたい物や、どうしようもない物だったらという不安な気持ちも覗いている。


 すると化け物が向き直り一言。


『ワカッタ』


 そう言って化け物は門に向かって進んで行った。



 が、しばらく進むと歩みを止めて、こちらに戻って来て姉崎を見る。



『コノコ、アズカッテテ』


 そう言って可愛らしい灰色の幼い少女をその場に残して再び門に向かって行った。

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