第百六十話 苦戦
「おい嬢ちゃん! 向こうでデケェ音がしたが大丈夫なのか?」
「この状況でそんな悠長なこと言う暇があるならとっととスキルの一発や二発、奴にぶち込んだらどうだ!」
サラたちの戦闘は未だ終わりを見せなかった。
世界中で被害が拡大する謎の魔物の正体を調査するため、わざわざ日本までやって来て運がいいのか悪いのかソイツは現れた。
見た目はあの時見た化け物と瓜二つ。だが漂わせる雰囲気はあの時ほどでは無い。どういうわけか急に増殖でもしたかのようにあちこちで発見が報告されていて、最初は奴とは別の存在の仕業かと一応疑ってもいたが現れたソイツを見た瞬間に理解した。
奴は何かしらの方法で増えたのだと。
それがスキルによるものなのか、はたまた元々備わっていた生態なのかは分からない。しかし確実に言えることは目の前に居るコイツは本物では無い。という事だった。
あの時は戦いにすらならなかったので奴の正確な戦闘力は分かるわけでは無いが『こんなもんじゃない』と直感で感じていた。
目の前のコイツは偽物。にも拘らずサラたち4人を相手にしても隙一つ見せずに戦い続けている。
レックスは最初の先制攻撃で負傷しているのと、イブはレベル的に心許ないのでサラとケビンが主になって奴の動きを止めに行く。
そして足を止めた瞬間に他のメンバーがスキルを叩き込むという作戦なのだが、そもそもケビンの刀やイブの蹴りレックスの雷撃に対しダメージを負っている素振りが一切ない。
「うぉら!!! クソッ! ちょこまかと……動くんじゃねえ!!」
唯一サラの槍の攻撃だけを躱し続け、サラたちもそこに勝機を見出してるのだが、如何せんサラのスペックが足りない。
サラはおそらく世界で唯一人のレベル6。最早人知は超えたと言っても過言じゃない身体スペックを誇るが、所詮は人間の中での話。
槍の内包するマナは申し分ない、と言うよりそれを超えて圧倒的なのだが、それと比べるとサラは豆粒のような物だ。
(どうなってるんだ? どっかの国でレベル4や3が集まって撃破したって報告があるのに、目の前のコイツはそんな次元じゃねえぞ)
対峙する、おそらくイレギュラーの分身体はそこらの奴らが集まって倒せるような次元の強さじゃ無かった。目の前のコイツがその辺の奴らの寄せ集めで倒せるほど、やわな存在とは思えなかった。
(だとするなら、個体差でもあるのか? いや仮にそうだとして今まで深く考えてなかったけど……コイツら、何体いるんだ?)
サラの頭の中をとある予感が埋め尽くすと、それを振り払うようにこれ以上の考察を無理やり打ち切り戦闘に集中した。




