第百五十三話 除け者
綾瀬の通う学校の最寄り駅からほど近い場所に位置する喫茶店。かつて綾瀬と姉崎がたまたま話し合いの場として選んだだけの店だったが、落ち着いた雰囲気や居心地の良さもあり今では綾瀬、姉崎、霜月ら3人の行き付けとなっている。
店主も3人のことを常連客と認めていて、何を注文するか大体わかるほどだ。今日もいつものように注文される飲み物をその席まで運ぶのだが……
そんな3人がいつも決まって座る奥のソファ席、そこもたまたま最初に座っただけの席なのだが、そこには綾瀬を除いた2人が座っていた。
一言も喋ることなくただジッとしている。それだけならまだ見た目も相まって絵になるような綺麗さを醸し出す2人なのだが、その内の1人の雰囲気が誰がどう見ても不機嫌なのが見て取れる。
「お飲み物をお持ちしました」
「ありがとうございます」
「……」
氷の王に透き通った気配を纏う霜月は感謝を言葉にするが、姉崎は軽く頭を下げるだけ。店主の見立てはどうやら正しく、普段だったら注文を持って行くだけで爽やかな笑顔を向けてくれるのだが、今はかなり機嫌が悪いらしい。
万が一にもその矛先が自分に向かないように店主はそそくさとその場から離れる。
・・・
「チッ……」
「茜ちゃん、行儀悪いよ」
「うっせ」
「ハァ、そんなにイラつかなくてもいいじゃない。確かに綾瀬くんはなんか私たちに隠れてコソコソと何かやってるみたいだけど、そんなに仲間外れにされるのが嫌なの?」
改めて自分がイラつくことを口に出して言われ姉崎はさらに機嫌が悪くなる。
「あいつ……あたしらは仲間でしょ? なのに何も言わずに……ああ! もう!」
「落ち着きなさいって」
霜月は店内を見回して他のお客さんに迷惑を掛けていないか確かめた。幸い店内は自分達しか客は居ないみたいで良かった……のかちょっと微妙だが取り合えず変な注目を浴びてないみたいでホッと胸をなでおろす。
それと同時に数か月前、つまり虚無発生事故以前の彼女を思い出し今の彼女と見比べた。
以前はこれほど怒りっぽくも無かったし、明るくてクラスの中心って感じの印象だったが、今はだいぶ変わったなと霜月は思った。
これが本来の彼女で今まではそれが上手く隠れていただけかもしれないのだが。
「あいつ今度会ったら容赦しない」
メロンソーダを呑みながら心の中で綾瀬にご冥福をお祈りしつつ、姉崎ほどでは無いにしろ綾瀬が自分たちに隠れて何をしているのか想像していると、不意に窓の外に見慣れた人物が映る。
「あ、立花先生だ」
「?」
霜月の言葉に姉崎も振り返りそれを見る。
どこか忙しそうな、そんな雰囲気を漂わせながら足早に歩いている。
「行くよ」
「え! ちょっと!?」
姉崎がすぐに席を立ち先生の後を追い始め、霜月も慌てて店を出た。




