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第百五十四話 襲撃

 目の前で繰り広げられる光景に綾瀬はただ茫然とするしかなかった。マナをその身に宿し常人とはかけ離れた身体能力を得た綾瀬が可愛く感じてしまうほどの想像を絶する戦闘が巻き起こっていた。


 ケビンが刀でイレギュラーと斬り合うと、その一太刀一太刀から身が震える程の衝撃が伝わってくる。


 遠目に見てるだけでこれでは、あと数メートル近づくだけで気を失ってしまうかもしれないという予感からその場から一歩も動けないでいた。


 他の3人も周りに散って隙をついて攻撃を素早く仕掛ける。


 自分だけがこの場に取り残されている事が徐々に心に圧し掛かり、何かしなければと半ば自分で自分を脅迫し始めてしまう。



(僕も……何か)


 するとそのタイミングで先ほどサラから投げ渡された通信機から声が聞こえる。



『あ……せくん……綾瀬くん! 聞こえますか!?』


「は、はい! 聞こえます!」


 焦りを帯びた声に慌てて返事をして通信に応じる。



『良かった、繋がった……すぐにこちらに戻ってこれますか!?』


「何かあったんですか?」


『例の魔物の出現に合わせて、こっちに大量の魔獣が押し寄せて来ていて手が足りそうに……ヤバい!避けろ!!』


 その直後、破裂した機械音が鳴り通信機から何も聞こえなくなり、少し離れた門の方向から重苦しい音と地響きが伝わってきた。


 綾瀬は通信機を仕舞い、急いで門に向かって走り出す。少しきつい坂を駆け上がり門を見ると遠目から何やらデカいのが数匹いるのが確認でき、それ以外にも群れっぽいのも確認できる。


 調査チームの人間もマナをある程度吸収しているが、研究がメインで彼らは戦闘などの殆ど経験が無く、寧ろ綾瀬の方がそっち方面の経験は豊富と言える。


 レベルも大して高くない、スキルを知覚してる訳でも無い。そんな彼らがあれだけの魔獣に襲われればひとたまりも無いのは誰が見ても明白だ。


 綾瀬はマナを高め坂を駆け降りる。常人ならバランスを崩して転んで大変な目に遭っているところだが、レベル3に近いマナを宿した綾瀬にとってそれは無いに等しい。走っていると前方から少しズレた場所で今まさに魔獣に襲われている人を発見する。


 大型犬をさらに一回り大きくしたサイズの犬型魔獣のこれまた大きく鋭い牙が涎や太陽で照らされて身の毛が引くほどギラついて、襲われている人は失神寸前だ。


 綾瀬は走るスピードそのままに勢いよく飛び、魔獣の腹目掛けてライダーキックをお見舞いする。


 犬特有のキャン! という痛々しい悲鳴を上げつつ地面を転げ回ってから、しばらくして立ち上がるとその場をそそくさと逃げ出す。



「大丈夫ですか!?」


 襲われてた人に声を掛け怪我が無いかザッと見て確認して、見た感じ怪我はして無さそうで内心ホッとする。



「ああ、何とか……助かったよ。!? や、ヤバい! 後ろ!!」


 振り返ると先程の魔獣が群れを成して綾瀬の周りを囲んでいた。

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