第百五十話 襲来
綾瀬の発言に一瞬ムッとした表情して、レックスは綾瀬を睨むがすぐに少し馬鹿にするような表情に戻して笑う。
「なんだよ、お前さんもアイツらと同じでビビりなのかよ。ま、見た目通りな感じで不思議じゃねぇけどな」
言われ放題で流石に何か言い返そうとするが、先の戦闘……と言えるか怪しいが、魔獣を一瞬で沈めた実力を考え言い返すのをやめるが、少しだけ表情に出てしまう。
「お、なんか言いたげな顔だな! どうした? 何か言いたい事があるなら言ったみたらどうだ?」
「おい、いい加減にしろ」
「良いじゃねぇかよ、第一実際に見た俺の実力より想像の中の化け物の方が上って、気に入らねぇだろ? ちょっと揶揄っただけだよ」
「いや! それだけじゃ……」
言われるがままなのが何だか悔しくて思わず口を開いてしまったが、よくよく考えてみれば自分自身はアレと遭遇こそしたものの、気を失っていて実物を見ていない。
だけどアレを間近で見た姉崎さんや霜月さんの反応は尋常では無い。確かに実力差もあるかも知らない。けれどそれだけヤバい存在を大したこと無い、と言われるのは一見頼もしいように思えるが、なんて言うか複雑な気分だ。
「ハァ、ハイハイ俺が悪かったよ。うるせぇのが戻る前に仕事に戻るか」
レックスはケビンに静かに睨まれ、バツが悪そうに軽くこの場を流した。
2人が巡回し始めたので僕もその後に続いて歩き始めた。
少し進んだ時僕はふと疑問が浮かんだ。
この2人、ケビンさんは特に何も言わないけどレックスさんはアレと戦ってもどうやら勝てる自信があるみたいだ。
だけどレベルで言ったらサラさんもかなり高いはずだ、なのにレックスさんと違ってアレに対して、非常に警戒している。
この違いが気になって僕は意を決して前を歩く2人に話しかけてみた。
「あ、あの……」
「……」
「あの!」
「あ? どうした?」
「え、えっと、その……」
「なんだよ! ウダウダしてんじゃねぇ! シャキッとしろ!」
「あ、す、すみません! えっと、レックスさんだけじゃ無くてサラさんも強いんですよね?」
「あ? ああそうだな。レベルも俺より高ぇぞ」
「じゃあ、なんでレックスさんとサラさんは意見が合わないんですか?」
「俺が知りてぇくらいだけどよ、何でも前にソレと対峙したことがあるとか無いとか言ってたな。ま、詳しい話は本人から聞け、ちょうど戻ってきたみたいだしよ」
レックスさんの視線の先を見ると背の高い女性と低い女性が並んで歩いてくる。僕たちは拠点の周囲を警戒して、サラさんとイブさんは少し離れた場所を偵察していてそれから戻って来たみたいだ。
2人の反応……というかイブさんは相変わらずサラさんにベッタリくっ付いてサラさんを呆れさせているのだが、見た感じ周辺に異常は無いみたいだ。
「レックス避けろ!!!」
いつの間にか僕とレックスさんの間に黒い何かが立っていた。
マナを充分に蓄えた僕やそれ以上のレックスさんですら反応する暇もなく、ソイツはレックスさんの脇腹に拳をめり込ませた。
断末魔すら聞こえない鈍い爆発音とともにレックスさんは数十メートル吹き飛び倒れ込む。
僕は隣に佇む化け物と目が合い、あまりの迫力に動けなかった。
化け物は動けない僕をじっと見つめていると、サラさんの方から物凄い勢いで何かが飛んできて、化け物は思わず飛び退き、飛来した槍を一瞥して煙のように消え去った。
心臓が未だドクドクと鳴り止まない。
僕があまりの出来事に腰を下ろしていると、ケビンさんが険しい顔で僕を無理やり立たす。
「まだ終わってないぞ」
心臓がキューっと締め付けられのを僕は確かに感じた。




