第百三十九話 奔走
「ああもう、忙しい!!」
岡田は育成校で学業並びに異世界の知識、戦闘技術向上のための訓練を生徒に施し、その傍ら綾瀬たち3人に向けた特別な訓練、異世界への同行など多忙を極めていたが、ここ最近起こる異世界での事件をキッカケにその調査に駆り出されしまった。
元々名の知れた優秀な研究員であると同時に好奇心旺盛で研究色の強い人柄もあり調査に協力するのはやぶさかでは無いのだが、流石に教職員としての作業を同時にこなすのは無理があるので急遽、代理にそちらは任せ自分は異世界の調査に注力したのだが……
いざ調査チームと合流するも現場の人間は尻込み状態。日本有数の戦闘に特化したチームや個人が次々と帰らない状況に、多少マナを吸っただけの研究員たちは手を拱いてる始末。
そんな中、岡田はそんな奴らのケツを叩いて回りできる限りの調査を進めつつ、機関の人事や知り合いに片っ端から連絡を取り人材集めに奔走していた。
調査チームはそれなりに…… まあ、最低限レベルだが動き始めようやく形になり始めたが、根本の問題は未だに解決の目処が立たない。
当初は機関だけで無く、問題解決に色々な企業や個人が動いていたが、犠牲が増える度にその動きは沈静化してしまった。
こういう時こそ協力して動きたいし他もそれを理解しているが、一致団結してチームになったとしてもそこで最初の犠牲者には誰もなりたくは無い。
これ以上の損失を防ぐ為に今を眺め現状を維持しようとする、精神性がこの局面で露見してしまった。
「これじゃあ調査も何もありゃしない。何なら綾瀬くんたちを使った方が…… いやそんな。でも」
守るものが増え思うように動けない大人を使うより、言い方は悪いが守るものが自分の命と人生くらいしか無くて、何なら放り出すような行き過ぎた使命感を持つ子供を使う方がいいのでは、と一瞬思うくらい岡田は切羽詰まっていた。
「人は寄越さないくせに成果だけは求めてくるだから、本っ当にもう! こんな事なら話を受けるんじゃ無かった」
世間は事態解決を急かせ、それに対し機関は解決に向かって動いているとアピールするも限界が来始め、その皺寄せが岡田にのしかかっている。
前の責任者とその前の前の責任者と同じようにほっぽり出してしまいたいが、金を貰ってしまった以上やるだけの事はやらなくてはならない。
岡田は人気の無い部屋に入り、念入りに人の気配が無いことを確認した後、スマホでメッセージを送る。
「これで貸し借りは無しよ」




