第百三十五話
目的を失い、帰る場所を失った天使たちは一体何処に向かうのか。その答えは単純で、またどこかの空で新たな苗床を作り増殖する、ということだ。
天使は魔獣や魔物のように進化や自然発生した存在では無く、この世界のある種の免疫機能のような存在だ。
適度に生物を間引きその過程で情報を集め、過剰に進化、繁栄した種族を駆逐しこの世界のバランスを保つ役割がある。
と言っても時代を繰り返す内に目に余る行き過ぎた行動や、そもそも度々現れるその時代を代表する上位種族などに遅れを取るなどして、本来の役割をこなすことができず、結局のところ最終的に見限られてしまった存在だ。
長い時を経て世界のシステム側からパーツに成り下がってしまったが、元々の由来も相待って今までしぶとく生き残って来たわけだ。
生き残った天使は手頃な養分を確保したら空へと向かい、雲の中で苗床に変わる。その時連れてきた養分と一緒に苗床になることで、直後に天使を作り出しそいつに新たな養分を運ばせる。これを何百、何千年以上繰り返して行くわけだ。
おそらく今が一番天使が頭を使ってる場面かもしれない。
強過ぎず弱過ぎず、大き過ぎず小さ過ぎず。そんな手頃な獲物を探し求め空を漂う。
だが、不運にも遥か上空を漂う天使を狙う酔狂な存在と出くわす。
途方も無い年月、この世界に存在しある意味自然現象に近いためかこの世界の生物は標的にされない限り天使を襲おうとはしない。
その無駄にしぶとい耐久力もそうだしマナの教会を容易に通過する事もが、そもそもコイツを仕留めたとしてもマナとなって空気中に霧散する為、戦うだけ無駄なのだ。
糧にならないモノを襲う奴はいない。だが、糧になるとしたら。
次に天使が見た光景は真っ暗闇だった。
広く、大地を見下ろす雄大な空の景色が一瞬にして闇に変わり、何が起きたのかを理解する間もなく徐々に溶けていく。
世界の均衡を保つ為にかつて生まれたのが天使だとするならば、コイツらはその逆。
世界にストレスを与え均衡を崩す為の存在。
魔物は生物の闘争本能を刺激する為のシステム。ストレスを与え進化を促すための存在だ。
本来干渉しない筈のシステム。もし干渉してもどちらかが消え、どちらかが残る。それだけの話…… の、筈だった。
偶然に偶然が重なり生じたバグ。その数ミリのズレは連鎖的に重なり、もはや目に見えて大きくなっている。こんなことは本来起きない筈だった。だが、現実に起きてしまった。
偶然と偶然が重なり、更にその偶然とまた他の偶然が重なる。ドミノ倒しのように引き起こされるその先は誰も、何も、わからない。
神でさえも。




