第百三十四話
夜明け前に目が覚める。辺りは静まり返って未だ草木や獣人たちも眠りについている。スヤスヤ眠る灰色少女をそっと抱きかかえて俺は静かに集落を後にする準備を始める。
次にウルの寂しそうな顔を見たら、多分俺は絆されてしまうかもしれないと思ったからだ。
と言ってもやる事はそんなに無いんだが。
流石に眠気がまだ残っているのか少しだけ体が重い、気怠い感じがするがグッと堪えて立ち上がる。
俺が鎮座した場所の前にはいつの間にか大量の果物と俺が作った剣が置かれていた。探す手間が省けたのは丁度いい。
俺は剣を手に取り、再び獣人たちに危機が訪れた時、俺に知らせるよう暗示をかける。
この剣だけじゃ、もしまた万が一あの女神さまみたいな奴がまた現れた時心許ないからな。
剣を俺が寝ていた台座に突き刺し、勿体無いのでいくつか果物を拝借しつつ静かに移動する。その場に寝転がる獣人たちを避けてやっとジャングルに差し掛かった時いきなり声をかけられる。
あまりにも流暢な日本語に驚き、一瞬相棒が話しかけてきたのかと思ったが、振り返ると獣人の長老が立っていた。
どうして俺の出発が、それよりなんで言葉がわかるんだ!?
急な出来事に頭が追いつかず、どうしていいか立ち尽くしていると、長老が再び喋り始める。
「わざわざ呼び止めてしまって申し訳御座いません。ですが一つだけお聞きしたいことが」
やはり俺の聞き違いではなかった。頭を下げながら、ゆったりとした永く生きた者特有の威厳のある喋りだ。
「あの子は役に立ちましたかな?」
どうして今そんな事を聞くのか気になったが、やはり俺がウルの願いを聞き入れなかったか事が相当あの子に心のダメージを与えてしまったらしい。
その様子を見かねた長老は最後に、俺に直談判しに来た、そんなところだろうか。
まあ、それにしても回りくどい言い方だが。
俺は長老の問いに対し「役に立った」と答え、その後の問いに備える、が。
意外にも長老は「そうですか」と、あっさりと答え闇に消えていく俺たちを見送ってくれた。
物悲しげな表情を浮かべて。
・・・
朝日を体いっぱいに受け俺は草原を駆けていた。少し早く走るとビクッと体を震わせその後は固まって動かなかった灰色少女は今では俺の背中でテンション高めに楽しんでいる。
子供の順応性には驚かされるばかりだ。
だけど今はちゃんと俺を案内して欲しい。少し前、ジャングルを抜けた時に気づいた事なのだが、なんと俺と女神の戦いの時に何体か天使が各地へ散らばって行ってしまったらしい。
相棒がどういうわけか、その事に気づいたらしい。宿主を失った天使がどういう動きをするか予想できない。
無視してもいいが、もしそれで向こうの世界に迷惑がかかると思うと、後味が悪い。
だが問題なのが何処に行ったのかなんだが、そこでこの子の出番という訳だ。
元々天使の集まりだったからか、散らばった天使の存在を感じるらしく。俺と相棒がどうするか困っていると指で方向を教えてくれた。
まあ、本当に合っているかはまだ分からないが。




