第百三十二話
あれから、なんとか怖がる少女を宥めることに成功し、今は左手で抱えてゆっくり移動している。と言うのもちょっと前に抱えて走ると、あまりの速さに驚いて泣いてしまい。それを宥めるのに数十分掛かっている。
物凄く人間味が出てきたと言うか、見た目以上に幼児退行してると言うか。仮面みたいな張り付いた表情しか浮かべられなかった事を考えると、だいぶ成長? したのかもしれない。
周りの景色を興味深そうに見回して近くにある草木を触ろうと手を伸ばしてすぐに引っ込める。相棒はこの子を危険と言っていたが、未だその片鱗は感じられ無い。見た感じ好奇心旺盛だけど怖がりな少女って印象だ。
まあ、色々と鋭い相棒のことだ、何かを感じたからあんな行動に出たのは間違いない。油断は…… 出来るだけしないようにしよう。
そんなこんなでゆっくりと歩いていると、ようやく獣人たちの集落が見えてくる。
俺が作った剣で覆われてた場所以外は無惨な光景だが、中心付近は無傷のままだ。そして天に俺の剣を掲げて何やら祈りを捧げている。
俺はそんなとこにいねぇよ、ここだよ。とツッコミそうになるがグッと堪えて獣人たちの前に姿を表す。すると皆が息を呑んでコチラを見て、代表してウルが俺の前に歩出る。
ん? なんだ? どうした!?
カッタノカ、マケタノカ
勝ったのか負けたのか…… あーそういうことね。
訳がわからずどうしていいか固まっていると、すかさず相棒が助けてくれる。
あー、ん、んっ。えーと、その……
シマラネェナ
うるせぇって、だからこういうのに慣れて無いの!
気を取りに取り直し、言いたいことをある程度自分の中でまとめて、改めて前に出たウルにスキルで語りかける。
あーえっとー、お、お前たちの言う神さまは、俺…… 私が倒し……
ホウムリサッタ
葬り去った! これからは安心して暮らすが…… い、いぞよ?
グダグダ
穴があったら入りたい。
幸いな事はこのグダグダスピーチをウルしか聞いてないこと。いや、ウルは獣人たちの中で一番交流がある子だ。寧ろ一番聞いてほしくなかった。
恥ずかしさが表情に出ないので、態度に出さなければウル以外に伝わる事はないので、ウルさえ黙ってくれれば俺の威厳は保たれる。
後でなんとかして説得しよう。
ウルはそれを聞いてから目に涙を浮かべながら皆の方に向き直り高らかに叫ぶと獣人たちが歓喜の渦に呑まれ、獣特有の雄叫びを上げる。
そんな泣くようなこと言ったか?
俺に討伐されたと皆に思われてる少女は訳を理解していないが、取り敢えず場の雰囲気に合わせ「うおおおお」っと俺の腕の中で叫んでいる。




