第百二十九話
忌まわしく高速で回転しながら纏わり付いてくる刃を弾き返すが、意思を持っているかのように舞い戻り再び襲い掛かってくる
距離を少しでも取ろうとすると、すかさず背後に回り込まれその場を離れることが出来ない。
特に意識や感情という程の高尚なモノはべつに持ち合わせてる訳では無いが、流石にここまで行動を咎められると無意識に、本能的に思うところがある。
仮面のような顔が若干引きつり、僅かだが動きが大雑把になっていく。力が無駄に入りマナも比例して剣に流れる。
そして……
見下ろし見下していた地上から、迫り来る異物に気づくのが遅れた。
マナの高まりを感じ、阻止しようと剣を振ろうとするも当然のように邪魔をされるが、鍔迫り合いをしている間に多少溜めていたマナを使い衝撃波を放ち両刃剣を大きく遠ざけた。
その隙にマナを再び溜めて斬撃を放とうと地上を見ると、目の前には既に異物が迫っていた。
迎撃しようと剣を構えるも死角から両刃剣が襲い掛かり得物を失う。そして為す術なく蹂躙される。
組み付かれ身動きが出来なくなり、なんの抵抗も出来ないまま背中の純白の翼を一枚ずつ捥がれ、その度に高度を落とし、遂には完全に浮いていられなくなり地上まで真っ逆さま。
落ちている間も蹂躙は続き、腕を千切られ足は砕かれ顔も抉られ、満身創痍という言葉では片付けられないレベルだ。
そしてトドメと言わんばかりに拳にマナを溜め腹部に叩きつける。
体が折れ曲がり、そのまま地面に激突する。上と下で体が千切れなかったことを褒めたいところだが、よくよく触って確かめると本来伝わって来るはずの感触が無い。
目線を落とすと腹部に巨大な風穴が空いて反対側が見えていた。
表情は動かない。痛みも無い、感情も無い。ただどうする事も出来ない。何とか立ち上がるも片足が無くなっていて、更に体のあちこちが崩れていてバランスが取れず、すぐに地面に倒れ込んでしまう。
地面に激突した時に生じた砂煙が徐々に晴れると目の前にソイツがいた。
ただただ恐ろしい存在。
自分は感情や知性と言ったものは持ち合わせずこの世に産まれ落ちた、いや造られた存在…… の、筈だった。
カタカタと体が徐々に震え始め、それと目を合わせていればいるほどガタガタと体の震えは次第に大きくなっていく。
わからない。
この震えは何なのか、内から溢れ出すコレは何なのか、目の前の化け物は一体何なのか……
視界が滲んでボヤける。
目から何かが頬を伝って行く。
そして……
しばらく見つめ合っていると化け物がこちらに手を伸ばしてくる。




