第百二十七話
思わず見惚れてしまいそうな美しさだ。開花したと同時に不気味だった球体は光となって霧散し、その中から後光を背負いながら一人の女性が現れた。
二対の翼と対の無い一枚の翼、合計五枚の翼を生やし、それで防御出来るのか疑問になる、やたら体が見える鎧を着込み、右手に剣を携えていた。
大きさは人並みで地上からだと豆粒にしか感じない。顔は最初に天使たちが作っていた女神の顔に似ているが、冷たい表情で地上を見下ろす。というか見下している。
それを見上げる獣人たちは新たな強力な存在の出現に唖然としている。次から次へと超常の存在が顕現し彼らにとって今年は厄年で、今日はその中でも一番の厄日に違いない。
顕現した女性は翼が生えてるくせに羽ばたく動作が一切無いにも拘らず空中に浮遊して、降りてくる様子がない。
今までは向かってくる天使を足場に跳躍したり、女神さま自身に掴まったりと辛うじて空中に留まれたが、頼みの天使は全部アレになってしまったようで、空中で戦うとなると少しばかり厄介だ。
まあ、どうにかなる相手だとは思う。多分。
あの姿から感じるマナは相当な量で遺跡の連中とほぼ同等と言ったところか。おそらく全ての天使と溶かしてストックしてた獲物全てを混ぜ合わせて出来た形態なのだろう。
バカ、バカ
だな。
だけど言っちゃあ悪いが、そんな手段があるなら最初からやれと言わざるを得ない。天使一体一体がそこまで賢くない、本能で動く虫と同程度の知能、と言えるものか怪しい物しかないのと、早々に司令塔の女神さまを潰したから出来なかったんだろうけど。
とにかく、厄介なのは空中に浮いてることだけだ。またあそこまで飛び上がらなきゃいけないのは大変だが、どうにかなるだろう。
よし、じゃ早速行くか。そう思った時だった。
ん?
地上からは豆粒だか俺の目ははっきりと奴を映し出す。右手を振り上げ、握る長剣を天に掲げる。そしてこれだけ離れているにも拘らず確かに俺を見据え、長剣を振り下ろした。
斬撃でも飛ばしたのかと思い、すぐにマナで防御するが、何も起きない。少し離れた獣人の集落も今のところ問題は無い。
ただの脅しだろうか? いやそんな筈は無い。防御を崩さず様子を伺っていると何やら地響きのようなものが聞こえる。
音は徐々に大きくなり、それと同時に揺れも大きくなる。というかこれは……
すぐさま近くの木を駆け上り音のする方を見る。
すると、何百メートルも土煙を立てながら衝撃が…… 否、斬撃がこちらに物凄い勢いで迫る。
まずい!
迫る斬撃にそのまま巻き込まれる揉みくちゃにされる。あまりの攻撃範囲に躱すことが出来ずまともに喰らってしまう。
マナで防御したから特に問題は無いが、おいおいマジかよ!?
すでに奴は長剣を構えていて横薙ぎに斬り払う。
すると地平線のからまたしてもズズズと重苦しい地響きと土煙を立て大地を裂きながらこちらに再び迫る。しかも今度は……
獣人たちの集落も巻き添えになる!
急いで集落に向かい獣人たちの前に飛び出して斬撃に立ち塞がる。
だけどこれどうすんの! 止められるのか!?
するとウルの持つ俺が作った剣がひとりでに飛び上がり剣の形が崩れ黒いドーム状に広がり始め獣人たちを完全に覆い隠した。
光を通さない完全な闇に覆われた次の瞬間、物凄い衝撃と音が伝わる。ウル以外の獣人(俺も)慌てたが、ウルが皆を落ち着かせる。
揺れが収まるとドームが晴れまた剣に戻りウルの手に戻る。
凄いな、そんな機能あったのか……
バカ
うるせぇぞっ…… たく。
ビビッテタ
だから、うるさいって! もう!




