百二十二話
相手さんかなり驚いてるみたいだな。
ダナ
俺のことを確実に仕留めたと確信したのだろうが、俺はそう簡単にはくたばらない。なんなら最近は死ぬのかどうかすら怪しく感じてきたほどだ。
天使どもに邪魔される事なく、俺は女神まで一気に肉薄し勢いそのままに渾身のストレートをお見舞いする。
天使たちの自爆を遥かに超える衝撃が空に響く。
これで決まるとは思っていないが、少し予想外と言うか。女神の顔半分は消し飛んで空っぽの中身が見え半分は恨めしそうにこちらを睨む。
殴ってみてわかったが、どうやらこの女神様に見えるこいつは無数の天使たちの集まりみたいだ。
女神の空っぽの内から天使が蛆のように沸き出て消し飛んだ部分に来ると姿を変え女神の顔の一部になる。
さらに俺をここから退かしたいらしく張り付いてる場所が天使に変わりそのまま俺を掴んで突き落とそうとする。
タネさえ分かればなんて事は無い。一撃二撃三撃と容赦無く攻め立て徐々にその正体を顕にしていく。
ウワッ…… なんじゃこりゃ。
キモい
女神の顔部分を完全に消し飛ばし首からその内側を覗くとまるで地獄の光景に思わず心の声が裏返る。
地獄の釜で煮られるが如くドロドロに溶けつつも辛うじて目口鼻を認識できるギリギリの顔で、これまたドロドロに溶かされ隣の似たような奴らと混ざってしまいそうなグチョグチョの腕を懸命に伸ばしている。
それも一人二人の人数では無く、数えるのも億劫になるくらい果てしない人数だ。
よくよく見ると人とは程遠い見た目の奴らも、というか殆どその種族が占めている。
多分天使に捕まってここに運び込まれたのだろう。まさか天に召されるとかでは無く地獄の釜、というか女神さまの胃袋で煮られるとは誰も思って無かったろう。
しばらく放心しながら見下ろしていると、ふと目につく者がいた。
スキルで体から長い鎖状の触手を伸ばしそいつを引っ張り上げる。それを見た溶けた他の連中も俺の伸ばした触手に捕まろうとする光景はさながら有名文学の一場面だ。
申し訳ないと若干思いつつ、他を無視して目標の人物だけ釣り上げる。
下半身と左手、それから顔半分も溶けて無くなっているが目でこちらを追っている事から、まだ生きてるみたいだ。
どうしてこの状態で生きているのか疑問になるほど状態だがそれよりも気になるのがその見た目だ。
馴染みがあると言うか、溶けつつも確かに感じる現代的な服装。
どう見たってこれは…… 元の世界の人間だ。
完全に予想外な出会に頭が追いつかない。




