第百十三話
ハハハ、いやー俺もついにここまで来たか。やっぱこの見た目だからかな、生贄なんて捧げられちゃったよまったく。
いや馬鹿! どうすんだよコレ!
ミタメ、ジャシン
誰が見た目邪神だコラ…… いやまぁ、そうかも知れないけどさあ、とにかく話し合おう。村長、村長はどこだ!
必死に辺りを見回すと、ただの夜なら見通せる俺の視界はこの集落で一番豪華な家の中に一人寂しく泣きながらブツブツと何か申し訳なさそうに俯いて呟く老いた獣人の姿を捉えた。
スマナイ、ムスメタチヨ。ダッテ
いや俺頼んでないし、すまないって誰に謝ってんだよ、俺に謝れよ! なんかだんだんムカついてきたわコイツら、というかあのジジイ。
ハァ、言ってても仕方ない。取り敢えず外してあげるか。
この体格にしては器用に女性達に付けられた拘束を外していく。外されて最初はキョトンとしていたが、すぐに覚悟を決めたかのように目をつぶって頭を差し出してくる。
だから、俺はそんな事されても困るから。
スキルでこちらの気持ちを伝えるも、頑なにこの場を離れない。逆にここまでくると不敬なのでは? と思ってしまうくらいだ。
ああもう! どうすればいいんだよコレ!
カミサマッポク
え? どういう事だ? 相棒。
オマエ、シタテニ、デスギ。モット、エラソウナカンジデ
なるほど? なのか? いやコイツは意外と鋭かったりするから意外と上手くいくのか? 試しにやってみるか…… いや出来るか! そんな急に言われて。
ウマクヤレ
上手くってどうすんだよ! その上手くする所がわからねぇんだろうが!
グルルルル、テキトウデ、イイダロ!
言い出しっぺは相棒だろ!? 最後まで責任持てよ!
ネガイヲ、カナエテヤル、トカ、イットケバ、イダロ!!
いや叶えられない事言われたらどうすんだよ! どう責任取るんだよ!
グルルルル…… ¥%÷×°<>〒々+$€×¥>×!!!
ご、ごめんて…… そんな怒鳴る事ないだろ。仕方ない、偉そうに、偉そうに。
『そ、そなたらの献身は十分伝わった。だが、おれ…… 私は行かなくてはならぬ場所がー、あ、あるためここを離れなければなら…… ぬ。なので代わりにそなたらの願いを一つ叶えてあげ…… しんぜよう』
互い顔を合わせ何かを相談し合って少しすると代表としてあの助けた子が喋りかけてくる。
なんて?
イケニエ、ドウスルカ
あーなるほどね。ん、んん…… 『必要無い、もう家に帰りなさい』
暗示スキルなのも相まって、女性達はシブシブ帰っていく。が、あの子だけはまだ俺のそばにポツンと控えている。
『どうした?』
「……」
『あ、あーそういえば名前は?』
聞いても返答が無く困った俺は咄嗟に名前を聞いてみた。
するとポツリと彼女は一言喋ってくれた。
獣人だからか人の言葉に獣の鳴き声みたいなのが混ざっていて俺は聞き取れなかったが、相棒によると彼女の名は『ウル』と言うらしい。
改めて俺はウルにどうしたのかと問いかけてみた。すると彼女も意を決したのか口を開いてくれた。
・・・
「私は元々この地に古くから存在する神さまの生贄となる筈でした。ですが、神さまは容赦無く慈悲など持ち合わせない残酷な存在で、我々が幾らその身を捧げても決して満足せず、悪戯に我々を弄んで踏み躙られて来たのです」
先に生贄となり神に蹂躙された両親を思い出しウルの目に涙が溢れる。
「だけど…… 貴方は、貴方様は圧倒的な力とそれに並ぶ慈悲深さを待ち、あまつさえ矮小なこの私の傷を癒してくれた優しき存在! 我々はこの身を贄とすることに恐怖はありません! 寧ろ貴方様のようなお方の一部と成れるなら喜んで差し出します! どうか、お願いです。私たちの新たな神になっては下さいませんか……」
ウルの願いは闇夜に静かに溶けていった。
・・・
それで、ウルはなんて言ってるんだ相棒?
…… ア、アー、エート。ヤサシイカラ、スキ、ダッテ
え!? マジ?
マジ、マジ




