第百十二話
ここまで好待遇なのはすごく嬉しいけど、いつまでもここに居る訳にはいかないな。
エー
しょうがないだろ。
俺がゆっくりと立ち上がると周りの獣人達が心配そうな顔でこちらを見つめ、あの助けてあげた獣人の女性が何やら話しかけてくる。
リルとは明らかに違う言語で話しかけられ、勿論だが何を言っているのかわからない。
だがかなり焦っているように見える。
相変わらずなんでか知らないが、軽くだが獣人の言葉がわかるらしく相棒が教えてくれる。
どうやら、俺が急に動き出して心配してるらしい。
それもそうか、自分たちが敵わない敵を一瞬で屠る力を持った存在が急に動き出したら、次は自分たちかと心配しても仕方ない。
俺はスキルで獣人の女性に「そろそろ行かないと」と伝えた。
別に危害を加えるつもりは無いからこれで安心。と思っていたが、それを聞いた彼女はみるみる顔が真っ青になり。
懇願するように何かを訴えてくる。
まさか、ここまで接待したのに何もしないでどっか行くのか? と文句でも言われてるのかと思ったが違った。
簡単に言うと「行かないでくれ」らしい。
どうしてそんなに俺をそんなに引き留めたいんだ? 用心棒や傷も治せるから医者みたいな感じで居て欲しいのか?
そんなことを考えてる時、彼女が走って行ってしまった。向かった場所はこの集落内で一番豪華な建物だ。
しばらく時間が経つと白髪と長い髭を携えたいかにも長老な雰囲気の獣人とそれに伴って彼女が一緒に向かってきた。
長老が俺に何やら話しかける。非常にゆったりとした落ち着いた話し方だ。例によって俺は何を言ってるのかサッパリだが相棒が翻訳してくれる。
何やら今日だけでもここに居て欲しいとの事だった。
意外にあっさりしてるんだな。まあ、こっちとしても後腐れ無く行きたいしな。
という事で明日の朝までここに留まることになった。
集落の人達も名残惜しそうに自分達の生活に戻って行ったが、俺が助けた子は未だ俺そばに控えて俺が果物を取ろうとすると、すかさず俺の口元まで運んでくれている。
ただこうして見てると不思議だな。
ナニガ?
いや普通、こんだけレベルの高い地域に住むにはそれだけのマナを吸収しないと生きていけない筈なんだよ。だからそれに伴ってレベルも上がって強くなるはずなんだよなー。
ソレガ?
いやまぁ、言葉は悪いけどさー、ぶっちゃけ弱すぎないか? この子も集落の人達も。
見た感じ一部はあの魔物とも渡り合えそうなのがチラホラいるけど、さっきの話で行くと全員そのくらい強くても、少なくともそれくらい強い人がもう少しいてもおかしくないと思うだけど。
フムフム
今思えばリル達も不思議だよなぁ。異空間の首無しは強かったけど屋敷の使用人達はそんな事なかったもんなぁ。どうしてだろ?
シラン
お前って奴はさー、ハァ、まぁいいけど。やる事もないし少し寝るか。
ハイオヤスミ
おやすみー
そう言って寝始め、夢を見るか見ないかそんな意識が曖昧な時だった。
オキロオキロ
寝始めて割と直ぐに起こされたと思ったが、辺りはもう暗くなり篝火で周囲の明るさを保っていた。
意外に寝てたんだな、と呑気に思っていると。薄暗い所からこちらに何かが歩いてくる。
飯でも運ばれてくるのか、とこれまた呑気に思っていると歩いてきたのは獣人の女性達。その中にはもちろんあの子も居た。
しかも明るい時の艶めかしい衣装を更に際どくして手を後ろで縛り目隠しと猿轡をして、更に首輪かけられ、それ同士が鎖で繋がれていた。
これは、まさか。
変な汗が止まらなくなる。
ジャラジャラと鎖が擦れる音を鳴らしながら女性達は歩いてきて全員が俺の前で跪く。
長老が一歩前に出て俺に喋りかけ離れていく。
あー、これマズイわ。
エト、コレハ
待て。言わなくてもわかる。
俺、生贄捧げられちゃった。ヤベェどうしよ? この状況。
クウカ!
呆れて何も言えないわ。




