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第百一話 気付けば

 暗くて何も見えない。


 視点を下げ自分の手足を確認するが輪郭が薄っすら映るだけで体の全容は確認できない。


 何故だか無意識に歩き始める。だが、まるで自分の意思でそうしてるかのように感じる。


 何も見えないが確かに前に進んでいる。


 どんどん闇が濃くなっている気がする、先程まで辛うじて見えていた体の輪郭も前に進むに連れハッキリしなくなってきた。


 後ろに戻りたいが、足が止まらない。



 嫌だ


 これ以上先に進みたく無い。



 自分の意思に反して体は言うことを聞かない。前へ前へ。暗闇より一層暗くなり、自分が進んでいるのか止まっているのかもう分からない。


 さっきまでドキドキ言っていた鼓動も小さくなり、意識が薄れて、次第に何も……


 すると突然、後ろからガッ!と腕を掴まれ、薄れる意識がハッキリとし始める。


 振り向くと暗くてよく見えないがとても大きく()()()のあるシルエットの何かが立っていた。


 その何かに腕を強く引かれ、そのまま来た方向に投げ飛ばされる。暗く何も見えない空間が背後から徐々に光に照らされ始め、完全に闇は消え去り白い空間となっていた。



 ・・・



 気づけば見慣れない部屋にいた。天井から壁、自分が横たわるベッドに腕から伸びる管。見慣れない物ばかりだ。


 管を辿るとすぐに現れたのは点滴だ。自分に目を向けると服装も脱ぎやすさ重視のゆったりとした服を着ており、ここまで見て僕はようやく理解した。


 ここは病院だ。でもなぜ病院に居るんだ?


 自分の思い出せる限りの記憶を辿っていると病室の扉が開けられ入ってきたのは少しドキッとしてしまうくらい綺麗な看護師さんだった。


「あ! 綾瀬さん気が付かれたんですね」


「あ・・・ハイ」


 それから看護師さんに色々説明されて、しばらくすると医者の先生が来て僕を診察して戻って行った。


 一応体に異常は無いらしくすぐに退院出来るらしい。これもマナを吸収してる恩恵らしいが、その割には体に力が入らないし、無理やり動かそうとすると笑ってしまうくらい痛い。


 どうやら僕は丸2日寝込んでいたらしい。この病院とバカ広い個室の病室はなんと岡田先生が手配してくれたらしい。


 この後なんて言われるか想像するだけで胸がキュッと締まる。


 そんなこんなで暇な時間を過ごしていると、僕の親がお見舞いに来てくれた。こんな目に合っても異世界にどうちゃらこうちゃら言われたが、僕の意思の固さを感じたのか、意外にもすぐに引き下がった。


 それから久しぶりに親と長いこと世間話をしていると、扉がノックされる。父が扉を開けると立っていたのは岡田先生だ。


 互いに会釈した後、先生が何か申し訳なさそうに言おうとしていたが両親は笑ってそれを断る。


 どうやら既に先生は両親に謝罪を済ませていたらしく、2度もしなくていいと断ったらしい。そろそろ時間らしく両親は僕に一声かけて病室を出て行き、入れ替わるように先生、そして姉崎さんと霜月さんが入ってくる。姉崎さんはどこか不機嫌そうで、霜月さんは元気が無さそうだ。


「具合はどうかな? 綾瀬くん」


「あ、えと、大丈夫そうです」


「そうか」


 先生と軽く声を交わすと、姉崎さんが割って入る。


「大丈夫じゃねぇだろ、あんた向こうでグチャグチャになってたのよ!?」


 グチャグチャ!?


「姉崎さん。ここは病院なんだから落ち着き・・・」


「落ち着いてられねぇよ! あんたもう2度と危ねぇ事すんなよ! それと・・・テメェも!」


 バツの悪そうな霜月さんの顔がどんどん暗くやっていく。


「あ、綾瀬くん、その、ごめんなさい。私のせいでこんな・・・事に」


「チッ、謝って済むのかよ」


 小声だが確実に聞こえる声で姉崎さんが声を漏らす。それを聞いて霜月さんは今にも泣きそうだ。


「あー、いや、その、グチャグチャ?はもうほら! この通り体はなんとも無いから姉崎・・・さんもその辺で」


「チッ」


 なんとかしてこの空気を変えねば


「そ、そういえば! 姉崎さんが僕らを助けてくれたんでしょ? 助かったよ、ありがとう」


 何となしに出した話題だったが、それを聞いた3人は顔色が少し曇る。


 あれ?


「綾瀬くん、その事で話があるの」


 不穏な空気が病室を漂い始める。

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