第67話 ~深雪side~ 出逢い②
高校二年生の終業式の日、私は少しだけ春の匂いのする風を感じながら校舎へ向かっていました。
通信制高校の校舎は、古い雑居ビルを改装した建物でした。
毎日通う生徒ばかりではなく、週に数回だけ顔を出す人もいる。
教室には、いつも「途中」の空気が流れていました。
夢の途中。
挫折の途中。
回復の途中。
みんな、何かを抱えたまま椅子に座っている。
私も、そのひとりでした。
教室へ入ると、一番右前の私の席に、知らない男の子が突っ伏していました。
窓から差し込む春の光が、黒い髪へ静かに落ちている。
私は少し迷ってから、小さく声をかけました。
「……そこ、私の席です」
男の子はゆっくり顔を上げました。
驚いた瞳。
けれど、その瞳は次の瞬間、はっきりと驚いたように揺れました。
私は、その視線を知っていました。
小さい頃から何度も向けられてきた視線だったからです。
白い髪。
白い肌。
光を多く含みすぎた瞳。
私は自然を装って鞄を机へ置きました。
すると彼は、少し慌てたように一つ後ろの席へ移りました。
その気配のぎこちなさが、なんだか少し可笑しかった。
でも同時に、胸の奥がほんの少しだけ痛みました。
「また、驚かせてしまった」
そんなふうに思ったからです。
背中に視線を感じました。
私はゆっくり振り返ります。
彼はまだ、どこか不思議そうに私を見ていました。
春の光の中で、その目だけが妙に真っ直ぐだった。
だから私は、小さく笑って言いました。
「私、『アルビノ』なんです」
教室の窓が、風で小さく鳴りました。




