表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
65/74

第65話 ~深雪side~ きっかけ

 まりちゃんの死は、私の中にひとつの小さな灯りを残していきました。

 それは、ただ「失明」という現実へ向かうしかなかった私の時間を、そっと別の方向へ手で導くような、かすかなきっかけでした。


 見えなくなるそのぎりぎりの瞬間まで、私は「見えるものを見ておきたい」と思うようになりました。

 あれほど元気で、陽の色をそのまま写したように真っ黒に笑っていたまりちゃんが、静かで真っ白な骨へ変わってしまい、二人で積み重ねていた時間が、彼女がいなくなった途端、ぱたりと止まってしまったからです。


 私は視覚障害者でも通える大学の存在を知り、普通の勉強に加えて点字の練習を始めました。

 そして週に一度はミュージカルや動物園、美術館へ足を運ぶことにしました。

 「見えるうちに」という焦りではなく、「いまの私が触れられる世界を確かめたい」という、静かな願いに背中を押されて。


 その時間を支えるために、そして人の息遣いや気配を知るために、私はコンビニでアルバイトを始めました。

 レジ越しに交わされるささやかな会話や、一瞬で通り過ぎる表情の陰影が、どれも残り少ない私の視界に深く刻まれていきました。


 まりちゃんの「死」は、確かに私にきっかけを与えてくれました。

 いいえ、きっと私は、それをきっかけに前へ進まないといけない、と心のどこかでそっと気づいたのだと思います。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ