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4人の魔法使いの冒険  作者: 藤見倫
第3章:巻き起こせ、労働革命
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第128話:巻き起こせ、労働革命

 解放した雪山労働者たちと別れ、ウォーターランドには寄らずに直接ホワイライトを目指した。中野も加わり、この辺りのモンスターにも苦戦しなくなった。


 川を越え、森を進み、ホワイライトの近くまで来た。街に入る前に、


「新しい魔法増えたんだけど、試していい?」


「あ、俺も俺も。闇属性増えた。トラウマリマインダーだってよ」


「私も。ギビング、ソウル・・・?」


「あたしは何も増えなかったわ。風と光、65には無いみたいね」


 まずは中野。闇属性・トラウマリマインダーは敵に使ってもダメージが無さそうでよく分からなかった。エフェクト的には悪い効果がありそうだったが俺で試してみたら、MPにダメージを受けた。


「う゛・・・」


 しかも、中学時代にあれこれと押し付けられた時の記憶が鮮明に思い起こされ、頭が痛くなった。


「ちょっと、大丈夫?」


「だい、じょうぶ・・・。魔法を使ってくる敵、それも対人だと効果がありそうだね・・・」


「へぇ~~っ。どんな気分なんだ? 自分じゃ分かんねぇや」


 お勧めはしない。


 続いて俺。火属性・グリムプロミネンスは、敵の足元に大きな魔法陣が出た後、そこから真っ赤に燃える太陽の炎が現れる。雷属性・サンダーユニコーンは、その名の通り全身電気のユニコーン。恐ろしい勢いで突進していく。


 そして、愛属性・ギビングソウルは、敵・味方のどちらに使っても効果なし。名前的には、魂を与えるものだ。もしかすると・・・。


「花巻さん、これに使ってもらえる?」


 その辺の石を拾い上げ、手の上に乗せて見せた。


「え・・・? う、うん。やってみる」


 俺の手の上にピンク色の魔法陣が現れ、


「ギビングソウル」


 石がピンク色の光に包まれる。光はゆっくりと消えていったが、石は何の変化もなく残っている。


「どう?」


「どう、って・・・?」


「動かせたりしない?」


「え? ・・・わっ」


 石が、ひとりでに浮かび上がった。


「うそ・・・」


 当の本人が驚いている。石は既に俺の手を離れており、ぷかぷかと宙に浮いている。


「まだ動かせるの?」


「えっと・・・、・・・・・・そう、みたい」


 石は、上に、右に、左に、下に、縦横無尽とは言わず、ゆらりゆらりと動いた。このゆったりとした動きが、花巻さんが動かしていることを物語っている。


 石が俺の手に戻った。


「・・・終わり? 時間切れかな」


「どうだろ・・・わっ」


 また動いた。俺の手の上で、浮かんでいる。


「やっぱり、まだ、動かせるみたい」


「MPは?」


「えっと・・・あ、減ってるかも」


「もう1回試してみようか」


「うん・・・。 また上がって」


 石が上に上がって行き、3mぐらいの高さで止まった。おそらく花巻さんが、言葉にはせずとも無意識のうちにこの辺りで止まるように念じたのだろう。


「下りて来ていいよ」


 石が下りて来て、俺の手の上に着地。


「上げる時も、下げる時もMP減ったみたいだね」


「うん・・・」


 花巻さんの表情が冴えないな。相手が石とは言え、物を操ることに抵抗があるのかも知れない。そんな心情のところ申し訳ないが、


「じゃあ今度は、上に上がって、観覧者みたいにグルグル回った後でまた戻るように念じてみて」


「え? うん・・・」


 花巻さんは両手を顎の前辺りで組んで目を閉じ、


「お願い」


「うおっ」

「おお・・・!」


 石は急上昇して、10mぐらいの高さまで上がった後、グルグルと縦に大きな円を描きながら7~8周ほど回って、また俺の手に戻って来た。花巻さんのMPは、最初「お願い」と言った時に10減って、そのあと石が動いている間は減ることがなかった。


「どうやら、指令を出すときだけMPを消費するみたいだね」


 つまり、ファシス大統領の頭に激突するように頼めば、一度のMP消費でファシス大統領の下まで移動してくれる訳だ。ただの石では、途中で兵士に壊されるだろうけど。


 石はしばらく止まったままだったが、俺の手の上で、ピョンピョン跳ね始めた。


「え?」


 花巻さんの声だ。当然ほか3人の視線を集めることになったが、


「私、何も念じてないのに・・・」


 だが石は、相変わらず俺の手の上でピョンピョンと跳ねている。“次の指令は何ですか?”と言っているように見えてきた。


「あははっ。花巻さん、主様として見られてるみたいだね」


「えと・・・どうすれば、元に戻してあげられるかな・・・?」


 石の方はまんざらでもなさそうだが、やはり当の花巻さんが、物を操ることに抵抗を感じているようだ。


「さあ? 戻るように念じてみれば? 花巻さんの命令を待ってるみたいだし」


「・・・うん。いつまでもこのままじゃ可哀想。 操っちゃってごめんね。もう自由にしていいからね」


 花巻さんがそう言うと、石がまた浮かび上がった。


「「「え?」」」

「いぃっ!?」


 そしてその石は、


「きゃっ」


 花巻さんの体の周りを3周回ったあと、花巻さんの顔の前で数秒のホバリングをして、そのままピューーーンと、まるで自由を手にした鳥のように、遥か彼方へと飛んで行った。


「えっと・・・」


 言葉が出ないんだが、


「“自由に”って言ったから、自由になったみたいだね」


 とりあえず思い付いたコメントを出した。一度この技を掛けたら最後、主の言うこと全てに従うらしい。しかも、指令を出さなくても多少は自分で動く。


「“元に戻っていい”って、言えば良かったのかな・・・」


 花巻さんの表情は冴えない。確かにそう言ってれば、普通の石に戻っていたかもな。


「どうだろ。あれはあれで、良かったんじゃない? 楽しそうに飛んで行ったよ」


「うん・・・」


 花巻さんは右手を肩の辺りまで上げ、ゆっくりと手を開き、


「ばいばい」


 穏やかな笑顔を彼方に向けた。



 魔法とは言えど、こんなことがあるとはな。


「すっげぇな、物を自由に動かせるようになるなんてよ」


「だね」


 おそらくは、攻撃手段がない愛属性魔法への救済措置だろう。岩とかでゴーレムのような人形を作ってこの技を掛ければ戦闘員が手に入る訳だが、


「この技は、あんまり好きじゃないかも・・・」


 だろうな。


「どうしてもピンチになった時は頼ってもいいんじゃない? “助けて”って想いを込めたら、きっと葵の気持ちに応えてくれるわ」


「うん・・・。そうする」



 新技の確認の終えたところで、ホワイライトの街に入った。宿屋の女将さんに挨拶して回復させてもらい、昼食は街のどこかで適当に食べようと思っていたのだが当然のごとく用意してくれた。(実はちょっと期待していたが)

 その後も「ゆっくりして行って」と言われたのだが、急いでいるので断った。街を出る前に中野と花巻さんの買いに行った。品揃えは微妙だが、手持ち装備のAランクバージョンぐらいは置いてある。俺と高松さんもBのままだったクールローブのAを買い、最低限の買い物だけ済ませて出発した。



 準備が整ったところでホワイライトから西に向かい、関所へ。


「4人の魔法使い、か」


「こんにちは」


「では名前を書くように」


「はい」


 ペンを取り、名前を書いた。俺の後ろに並んでいた高松さんにペンを渡そうとした瞬間、


 ピッ!


 と笛が鳴り、ドタドタと兵士が入って来た。自然と、状況は一瞬で悟った。


「まずい! 逃げよう!」


「おわっ! 何だ!?」


 せめてもう1人だけでもと、高松さんの手をつかんで風を起こし、壁も壊して外へ。幸いにも高松さんが花巻さんの手をつかんでいたので、3人が外に出られた。


「逃がすな! 捕えろ!」


 後ろを見ると、中野が既に捕まっていた。「放せ! 放せ!」ともがいている。


<ごめん、助ける余裕ない>


<気にすんな! お前らだけでも行け!>


「花巻さん、乗って!」


「うん!」


 強引に手を引いて、杖に乗せもせずに飛び立った。


<ちょっと撒いてから山の労働者たちと合流しよう>


<分かった>


 後ろから高松さんが来たのも確認。高い位置で落ち着いところで、花巻さんを杖に乗せた。


<一旦メディカに寄ろう。適当に遠回りしながら>


<そうね>


 さすがに真っ直ぐ飛んで行くとバレるので、北西方向に飛んで森に降りることにした。


「うまく撒けたかしら」


「追う必要がないって判断されたかもね。街の警備を強化すればいいだけだし」


「そっか。・・・でも何で? さすがに早すぎない?」


「油断したね・・・こんなもんでしょ。国の情報網を甘く見ない方がいい」


「そう、ね・・・」


「これで完全に、エコノミア政府も敵に回したことが分かったね。心して掛かろう」


「「うん」」


 門から入るのは避けてメディカの北に周り、街の外周を囲う柵を越えて中へ。建物の影に隠れる場所に下りたが、街を見ても特に変わった様子は無い。さすがに住民たちはまだ何も知らなさそうだ。ゆっくりと人通りのある場所に出ても、大抵の人はチラリと見るだけだった。

 だが兵士のパトロールが増えるのも時間の問題だろうな。そうなると宿屋に不法侵入する他なくなるが、回復は一瞬念じるだけでもできるし、既に追われてる身だからいいや。


 まだ大丈夫そうなので普通に宿屋へ行き、MP回復。でも次はいつ回復できるか分からない。慎重に行こう。


「やっぱり、無理に合流するのやめとこうか」


「うん、あたしもその方が良いかもって思ってた」


「作戦変更だけ伝えてくるから、2人は先にビジナに行ってて」


「うん。気を付けてね」

<作戦変更って?>


 一応、メッセージから中野は外してくれたようだ。中野には悪いが、捕えられた以上、情報のリークは避けたい。知らなければ、拷問されても吐けないからな。


<今夜の合流はナシ。明日、日が昇ったら僕らで騒ぎを起こすからその間に刑務所に殴り込んでもらう>


<どんな騒ぎを起こすかは、後で教えてね>


<うん>


 変装用にメガネやらマスクやらカツラやらを購入し、再び北側の柵を越えて森へ。2人と別れて2時の方角を目指した。


 ある程度進んだところで高く飛び上がってみると、移動する労働者たちが見えた。30人ほどのグループか。グループ内でもそれなりに広がって進んでいるようだ。差し当たり、兵士の姿は無い。

 降りて労働者たちが見えた方に進むと、合流できた。このグループの指揮を執っている人に近づき、


「皆さん合流できたら伝言をお願いします。今夜は、僕らとの合流はナシ。明日の日の出の直後、僕らで騒ぎを起こすのでその間に刑務所の方に皆さんで乗り込んでください。一応、あと2~3グループほどにも伝えておきます」


「刑務所で捕まってる人を解放して戦力を増やすってことだな。了解だ」


「ええ。では、よろしくお願いします」


 要件だけ伝えてすぐに別れた。その後も難なく2グループ見つかり、それぞれのリーダーに伝達。もしこの3グループが兵士に捕まったりすると作戦が浸透しなくなるが、問題ない。騒ぎ自体は日の出直後に起こるが、その種は夜に仕掛ける。日が昇ると街が騒がしくなるから勝手に便乗するだろう。最悪は俺たち3人だけでも刑務所に乗り込める。


<すまねぇ、オレ刑務所に入れられるみてぇだ>


 おっ、もしかして。


<刑務所って、ビジナの?>


<ああそうだ。兵士が言ってた>


 よし、何という好都合。これで外側から俺たち、内側から中野が暴れればいい訳だな。


<分かった。あとは何とかするよ>


<すまねえ・・・頼んだぜ>


 中野には、本当に直前に合図を出そう。問題は杖だな・・・仲間同士の貸し借りはできないし、手に持ってないと交換できないからな。


<あ、杖燃やされたわ。サブ出せるかも>


 それはラッキーだ。だが、今そこで暴れられるぐらいなら、


<明日まで待って。刑務所には無実の罪で捕まった人がたくさんいるから、その人たちを助けてあげて。日が昇ったらすぐに暴れていいよ>


<マジで!? よっしゃ任せろ!>


 結局作戦を伝えてしまったが、今から暴れられるよりはマシだ。



 高松さんと連絡を取り合い、女性陣と合流。メッセージ見てたから分かってるとは思うが謝っておこう。


「ごめん、中野君に明日のことちょっと言っちゃった」


「ううん、いいわよ。その方がいいって判断でしょ」


 理解が早くて助かる。


「一旦ビジナに入って回復して、夜まで森で過ごそっか」


「でもモンスター出ない? MP減っちゃうよ」


「うわ、そうじゃん」


 こんな単純なことも忘れるとは。落ち着け。冷静にならないと、判断を間違える。


<じゃあ夜まで身を潜めるしかないね。街に入ったら装備を外そう。普通の服でメガネとかしてればそうそうバレないよ>


<そうね、それがいいかも>



 2度目となるブラウンキャニオンは、思いのほか楽だった。2度目ということもあるかも知れないが、単純に俺たちも力を付けたと考えよう。


 ビジナには北東側の柵を越えて入ったが、


「うっわ・・・」


 柵の内側に、俺たちの手配書が貼られていた。


 大村佑人、国家反逆の首謀、および企業活動妨害、懸賞金2000万。

 高松千尋、国家反逆への加担、および不法入国、懸賞金1000万。

 花巻葵、国家反逆への加担、および不法入国、懸賞金1000万。


 顔写真付きだ。微妙にマイクも映ってるからインタビューの時のだな。スターリー神殿の件でテレビや新聞で顔が出回ったことが災いした。国に楯突くことになるなんて想像してなかったからな。しかもなんか首謀者俺になってるし。関所で名前を書いたからか、律儀にも不法入国はカウントされていない。スノーウィーン工場の役員に思いっ切り危害を加えた高松さんに企業活動妨害がないのが解せないが、まあいいや。

 あとは魔法使いであることと、確認されている限りの属性が書かれている。土と風が使えることはバレている。俺は光属性使えないんだが・・・スターリー神殿の件で着色されたか。


「嘘、でしょ・・・」


「現実は受け入れるしかないよ。こんな端っこの方にまで貼るなんて、よっぽど捕まえたいみたいだね」


 装備を外し、住民たちと何ら変わらない恰好になった。ローブも帽子も念じるだけで消えてくれるから助かる。その代わりにメディカで買った変装セットを装備。人ウジャウジャいるし、その辺でお茶してる分にはバレないだろう。ルイナさんが家を出た時、この街を選んだ理由が凄く分かる。

 手配書が出るぐらいだからニュースになるだろうな。明日の朝の段階ではまだ、国家反逆の手配犯。これまで知り合って来た人たちは、どう思うだろうか。


 市街地に出ても、俺たちの手配書が目立った。貼られたばかりなのか、時折立ち止まって見る人もいる。


「有名人は辛いね」


「あれってインタビューの時のでしょ・・・こんな形で利用されるなんて」


「とりあえず喫茶店にでも入ろうか。ちょっとお腹空いた」


「そうね」


 その辺の喫茶店に入った。思いのほかヒヤヒヤしたが、すんなり入れた。まさか大絶賛手配中の国家反逆者が呑気にお茶するとは夢にも思ってないのだろう。


<ちょっと、ドキドキした>


<私も>


<ま、トレードマークの帽子も杖もないし、バレないでしょ>


 女性陣の表情からも緊張の色が消えた。だけど宿屋はやめといた方がいいな。剣と鎧があればいけるのだが、それを買うための剣と鎧が無い。さすがにこの恰好で装備屋に行くのは変だ。仕方ないので宿屋には後で不法侵入しよう。国家反逆と比べれば大した罪じゃない。



 飯を食い終わっても、無駄に居座った。


「で、どうするの?」

<で、騒ぎってやつは、どうやって起こすの?>


「とりあえず、もうちょっとここで時間潰してよっか?」

<メタリックカンパニーを、物理的に壊そうと思ってる>


「え、どういうこと?」


 高松さんがそこそこ大きな声を出した。自分の声に気付いたのか、


「ご、ごめん・・・」

<ごめん! 物理的に壊すって、どういうこと?>


 これで表向きの会話を成り立たせながら作戦会議しなければならないのか。ハードだな。


「えっと・・・まだ時間あるし、もうちょっとここに居てもいいかなって。ドリンクバーもあるし」

<火事でも竜巻でも、壁を一枚ずつ剥がすのでもいいけど、夜中の間に建物ごと壊すんだよ。メタリックカンパニーを>


「え、ちょっと待って!」


 高松さんが軽く机を叩いて立ち上がる。注目を集めてしまった。


「え、あ、ごめん! アタシの勘違いだった! まだ時間あるね!」

<ホントごめん! でも、それ、ホントにやるの?>


 やるんだよ、本当に。だけど、ここで話を続けるのはさすがに辛いな。


「あ、やっぱマンガ喫茶とかに行く? なんか、変に目立っちゃったし」

<周りから見られずに黙ったままメッセージできるから、いいかも>


「それもそうね。・・・すみませ~ん、お騒がせしました~」


 周りのお客さんたちに苦笑いで頭を下げつつ、会計を済ませて外へ。そして近くのマンガ喫茶に入った。3人で6畳ほどの部屋が使えるのがあった。これで、じっくり話ができる。



<さっきも言ったように、メタリックカンパニーを壊すよ。物理的に>


次回:メタリックカンパニーをぶっ壊せ

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