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4人の魔法使いの冒険  作者: 藤見倫
第3章:巻き起こせ、労働革命
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第126話:決めろ光の最強魔法

 雪山で働く労働者の脅威となり、トレジャーハンターたちからも敬遠されている雪山の魔人ニアトムウォンスとの戦いが続いている。奴を倒す術はただ1つ、中野が魔人滅殺剣を決めることだ。


 魔人が右手を構え、斜め下にいる俺たちに向かってストレートを繰り出してきた。


 ドオォォン!


 風魔法で飛び上がって避けたところ、


 ブオオォン!


「うわっ!」

「のわっ!」

「「きゃあっ!」」


 俺たちをなぎ払うかのように左手を横に振って来た。動き自体は遅く、何とか避けれたが風圧でバランスを崩した。だが体勢が崩れてるのは魔人も同じ。右手と右膝が地面に着いており、左手は左膝の辺りにある。


「ファイアバード」

「ジャスト・ワン・グリッター!」


 ファイアバードは顔から背中にかけて、ジャスト・ワン・グリッターは顔面に繰り出された。魔人は一旦右手を浮かせてのけ反り、そのあと両手と両膝を地面についた。よし、いいぞ。


 魔人はその体勢のまま顔だけをこちらに向けた。何がくる。


 フウゥーーーーーッ。


「なっ!」

「げっ!」

「うそっ!」

「きゃあっ!」


 口から吹雪を吐いてきた。避けようにも、魔人も首を振って広範囲に渡って攻撃してきたので無理だった。中野は俺から、花巻さんも高松さんから離れて宙を舞う形になった。まずい、花巻さんだけは助けないと。


「ごあぁっ!!」


 魔人の右ストレートを食らってしまったようだ。頭がガンガンする・・・! 仰向けで後ろに飛ばされる中、気合で首だけ動かして前を見ると、魔人の手は既に構えられていて視線は花巻さんに向いているようだった。


<任せて!>


 高松さんが風魔法で移動し、魔人の手よりも先に花巻さんのもとに着いて難を逃れた。助かった。中野は・・・?


 いた。運よく樹氷にも当たらず雪の上に落ちたようだ。HPも、まだ200以上。タフな奴だ。最悪は花巻さんに復活してもらえるが、あいつは切り札だから死なないようにしないと。


 頭が痛み、体中がきしむ中、中野の所まで歩いた。


「おいおい大丈夫かよお前。HP110しかねぇじゃん」


「問題ないよ。中野くんさえいればアイツを倒せるんだから」


「う・・・プレッシャーかけるようなこと言わないでくれよ・・・」


「またパンチがくる。飛ぶよ」


 ドオォォン!


 右ストレートが地面を直撃。


 ブオオォン!


 左手によるなぎ払いが空を切る。続いて、さっきと同じように顔を向けてきた。今だ。


 フウゥーーーーーッ。


 口から吹雪攻撃。出される前に突風を起こして素早く範囲から外れた。魔人が首を曲げて追いかけて来るも、四つん這いの状態では可動範囲が限られて届かなかった。


 俺は自分で起こした風の勢いで、四つん這いになってる魔人の頭上に行った。股に挟んでいる杖を一旦手に取り、重力に引かれて魔人の頭に近づいていく。あの時は残りMPを全部使ったが、今度は100の消費に抑えて、


「ヴァーミリオンスワール!」


 ボオオオオォォォゥゥッ!!


 魔人の顔全体と、首・肩の辺りまで巻き込んで炎の渦を出した。


「うっ・・・!」

「うおわっ!」


 案の定、炎を払おうとする魔人の手に当たった。幸いにも中野も同じ方向に飛ばされており、風魔法を使ってゆっくりと着地した。俺が攻撃を受けたことで炎は消えていた。


「ジャスト・ワン・グリッター!」


 炎から解放された魔人に追い打ちを掛けるように、高松さんが追撃。


「大村君、大丈夫?」


「ヒール」


 高松さんたちもこちらに来て、ヒールでHPが50回復した。


「花巻さん、HP回復は死んじゃってからレイズデッドでもいいよ。最悪は一撃でやられることも有り得るから」


「う、うん・・・」


 花巻さんのMPは、できればMP回復に使いたいことは本人も分かっているだろう。


「はぁ、はぁ・・・、」


 さすがに、辛いな。女性陣には既に<体力が限界を迎えた>とメッセージを出してしまっているし、顔色も良くないことはみんな気付いているだろう。だけど、正念場だから、少し無茶をさせてくれ。


 魔人が両膝を地面に着けたまま両手を頭上に組み上げ、振り下ろしてきた。


 ズドオオオォォン!!


 強烈な一撃が、大地に衝撃を与えた。さらに、


「なっ・・・!」


 その衝撃で浮かび上がった雪が、ひとりでに動き出して俺たちに襲い掛かって来た。まさか、魔人が動かしているのか。


「高松さん、花巻さんだけでも…」


「「きゃあああぁぁっ!!」」


 女性陣2人が、雪に覆われて雪玉の中に閉じ込められた。その雪玉を、魔人がつかむ。しまった、不用意に近づけない。


「千尋ちゃん! 葵ちゃん!!」


 左の手の平に乗せられた雪玉と、魔人の頭上でパーに開いて構えられた右手。その右手が、雪玉に向かって振り下ろされる。


「ファイアバード!!」


 炎の上級魔法を使って対抗した。が、火の鳥が直撃しても雪玉は溶けず、右手も止まることはなく、



 パアアァンッ!



<高松千尋さんが戦闘不能になりました>

<花巻葵さんが戦闘不能になりました>



 雪玉が潰され、女性陣はまとめて戦闘不能になった。


<2人とも、急いでメタリックの工場に戻って!>


 ここまでバスで来ていて運転手も拘束しているなら、すぐに戻れるだろう。あとは、あの2人が動ける精神状態にあればいいが。


<分かったわ。行ってくる>


 その淡々とした返事からは心情が読み取れないが、動けるようで良かった。


「僕が時間を稼ぐから、中野君も洞窟の中に隠れてて。2人が復活するまで安全圏にいよう」


「う・・・っ。やっぱもう、キツいか・・・」


「悔しいけど、生き延びて、メタリックやエコノミアの人たちを助けなきゃいけない」


 中野を逃がすべく、水平よりも少し斜め下、樹氷もなく雪に着地できる方向に、中野の背中に杖を当てて向けた。


「いぃっ!?」


 だがその方向に、ブリザードの魔法陣が出て来た。間に合わない・・・。


「ごめん先に上に飛ばす!」


 風魔法で中野の体を動かして仰向けにして、その背中の後ろに魔法陣を出した。


「ウィンドショット!」


「ぬおわっ!」


 中野が真上に向かって飛ぶと同時に、ブリザードが発動した。


「う゛っ・・・!」


 吹雪に呑まれながら、地下道へ続く洞窟に走って向かう女性陣の姿が見えた。頼む、急いでくれ。



 気付いた頃には魔人の左手に捕まっていた。魔人の顔は上を向いている。中野がまだ落ちて来ている状態だから、そんなに時間は経っていないようだ。


 中野が、杖を構えた。まさか、やるつもりか。確かにこのタイミングしかなさそうだ。


 魔人の右手が動く。このままじゃ、胴体に攻撃するのは難しそうだ。頼む、中野。手だけでもいいから斬り落としてくれ。


「ぬおおおおぉぉぉぉっ!! 食らいやがれぇ!!」


 抜刀するように構えられた中野の杖の先に、白い魔法陣が現れた。魔人の手が中野に迫る。どうなる・・・!?



「魔人滅殺がああぁっ!」



 魔法が発動するよりも先に、魔人の手が中野を捕えた。幸いにも、はたくような攻撃だったので中野はHPダメージを受けて宙を舞うだけで済んだ。


 当然、魔人の顔が俺の方を向く。


<中野くん! もう1回!>


「ウィンドショット!」


 離れて行く中野を引き戻すように風魔法を出した。本来であれば中野を逃がすことに使わなければならないのに、魔が指した。中野がこちらに向かって飛んでくる。


「サンキュー大村! もういっちょだぁ!!」


 中野が、再び杖を構えてこちらに向かって来る。再び、魔人滅殺剣の魔法陣が登場。


「なにっ!?」


 だが、今度は魔人が俺を盾にするように左手を前に突き出した。中野が杖を握る手から力を抜いたのが見えた。魔法陣も消滅。


「う゛っ・・・!」

「おわあぁっ!!」


 そのまま、俺を使って中野を殴りつけた。俺は魔人の手から離され、中野と共に宙を舞う。HPは、2人とも60台だ。MPは、中野が358、俺が17。あと、ウィンドショット1回分か。


「中野君、もう1回、行ける・・・?」


 またしても、中野を逃がすよりも攻撃の方に意識が行ってしまった。だが今更方針転換するのは危険。中野に攻撃を決めてもらって、敵の動きが止まっている隙に逃げるしかない。


 ズドオオオォォン!!


 再び、魔人が地面を両手で叩き、雪が舞い上がる。先ほど女性陣がやられたのと同じように、雪が俺たちに向かって襲い掛かる。


 ブオオォン!


「くぅっ・・・!」


 考えてみれば、中野が至近距離にいる時にまでウィンドショットを使う必要はない。MP消費を7に抑え、10残して中野を魔人の首に向かって飛ばした。


 地面から襲い掛かる雪は、俺と中野の両方を捕えようとして中途半端に広がったのち、やがて中野を諦めて俺の方に向かって来た。足から順番に、体が雪で覆われていく。


 中野を雪で捕えることを諦めた魔人は、自分に迫り来る中野に、右ストレートを繰り出した。左手は、俺を雪玉に閉じ込めたあと捕まえるつもりなのか、既に俺に向かって伸びてきている。



「ウィンドショット!」


「うおっ!」



 最後のMPを使って、中野の軌道を変えた。中野は魔人の胴体に向かって行き、魔人の右手は空を切った。魔人は俺の方に伸ばしていた左手を止めて中野を追いかけたが、追い付きそうにはない。



 よし、いける。



「3度目の正直だぁ!!」



 中野が抜刀の構えを取り、杖から白い魔法陣が出現。



「いくぞ!! 奥義!!」



 中野が魔人の胴体に迫り、その腰に構える杖を振り抜き始めた。



「魔人滅殺剣!!!」



 スパァァン!!



 放たれた一閃は、真っ白に輝く刃となり魔人の胴体を貫通し、その奥に向かって飛んで行った。



 魔人の胴体が2つに割れ、上半分が浮かび上がってその間を中野が飛んで行く。俺の位置から見えた下半分の断面は、ただの真っ白な雪だった。



 魔人の足が、傾き始めた。魔人の胴体が、落ち始めた。倒せたかどうかは分からないが、少なくとも、この場から逃げることはできそうだ。



「うぅぉぉおおおおお!!」



 飛びゆく中野が雄叫びを上げる。奴の残りMPは、ゼロ。全てをあの一撃に込めたようだ。同じくMPを使い切った俺は、まとわりついていた雪が離れだし、その雪と一緒に俺も落ち始めた。



 ボフッ。



 雪に着地。


「ごほっ、がはっ!」


 全身が痛んでいる体には堪える。

 残りHPは、33。何とか、生き長らえた。中野のパラメータを眺めていると、中野のHPも10ほど減っていた。雪に落ちたようだ。女性陣は、さすがにまだ復活していない。マップ画面を見ると、地下道に通じる洞窟に向かう線が2本、現在進行形で伸びていた。まだ外にいるようだ。


<中野くん、僕らも洞窟に行こう>


<おう。てか魔人真っ二つだけどまだ生きてるのか!?>


<分からない。どの道もう戦えないから逃げよう>


<だな>


 仰向けになって落ちていたので、立ち上がろうと体を回し始めた瞬間、



<レベルが65になりました>

<火属性魔法(上級):グリムプロミネンスが使用可能になりました>

<雷属性魔法(上級):サンダーユニコーンが使用可能になりました>



「え?」


 思わず声を出してしまった。力が抜けて仰向けに戻り、魔人の方に目を向けると、既に半分ずつに割れた状態で横たわっていた。



 そして、サラサラサラサラ、と、風で立ち消える灰のように消えていった。



「あ・・・まじ?」



 どうやら、倒せたらしい。


次回:労働者解放

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