第125話:最強の中ボス、4人の魔法使い 対 雪山の魔人
「お前ら、何で・・・?」
魔人に殺されたと思ったら、葵ちゃんの回復魔法で復活した。そして、あの3人がみんないた。洞窟の中から出て来たみたいだ。
「色々あったんだよ。やんなきゃいけないことがあるから、さっさとそこの魔人を片付けちゃうよ。動けるよね?」
大村はいつもの調子で、人を小馬鹿にしたような言い方だ。千尋ちゃんたちも、ちょっと微笑んで俺を見ている。
「大村、お前・・・」
また、泣いちまった。なんで、こいつらはこんな顔ができるんだ? あんな別れ方したのに、何とも思ってねぇのか?
「どうするの、やるの、やらないの。やんないなら花巻さんにMP返して」
「フッ」
鼻で笑っちまったじゃねーか。MPなんて返せる訳ねぇだろ。返せたとしても、
「やるに決まってんだろ!!」
「そ。じゃあやるよ」
大村たちが俺のとこまで来た。魔人にビビってる様子もねぇ。俺から離れて行ってた魔人は立ち止まって、こっちを振り返った。
「こ、この間はすまねぇ・・・」
「ん? 別に。自由に動いてもらって構わないって言ってたよね」
「あ、いやぁ、でも・・・」
「よく分かんないけど、悪いと思ってるなら手伝って。もうメタリックとエコノミアにケンカ売っちゃったから、1人でも多い方がいいんだ」
「は・・・? いや、でも、いいのか・・・? 勝手にキレて出て行ったの俺だぞ・・・?」
「だから、自由に動いてもらって構わないって言ったよね。それに、そんなつまんない理由で戦力を捨てるような真似はしないよ。これから厳しい戦いが始まるんだから、1人でも多い方がいいに決まってる」
「はあ・・・?」
いやいや、そんなんでいいのかよ・・・。1人でも多い方がいいからって、ワケわかんねぇ・・・。
「確かに、勝手にキレて出て行って今さら戻してくれって言われても、許さない人は居るだろうね。だけどそれで戦力を捨てるような真似はしないって言ったんだ。戻って来るなら歓迎する。だって、その方が勝率が上がるから」
「大村・・・」
何なんだよ、コイツ・・・。
ここでも戦力とか勝率かよ。マジでワケわかんねぇ・・・。
「そんなに悪いと思ってるなら、協力してくれる? 3人とももう色々と限界なんだ」
なんか顔色よくねぇなコイツ。この寒さで風邪でも引いたのか?
「当ったりめぇだろ!」
認めてくれるか分かんねぇけど、俺たちゃ仲間なんだからな!
「これで、一件落着かしら?」
千尋ちゃんだ。こないだのことがまるで無かったかのように笑ってる。
「千尋ちゃん、この間はすま…」
「いいからいいから、謝るぐらいなら手伝って。精いっぱい頑張ってくれるんなら、お詫びもお礼もいらないから」
「フッ、そうか・・・」
大村みてぇなこと言いやがって。でもなんか安心した。なんでだろ。葵ちゃんも優しく笑ってる。何なんだよ、土下座でもしようと思ってたのによぉ・・・調子狂うぜ。ったく。
ドスン!
やべっ、魔人が近づいて来た。
「中ボスにしては、申し分ない強さのようだね」
「は? いや中ボスじゃねぇだろ、普通にボスだろ」
「いや、これ中ボスだから。エコノミアにケンカ売ったって言ったよね? 魔人を片付けたあと中野くんにはトンデモないことに巻き込まれてもらうよ? 魔人なんて中ボスに過ぎなかったって思えるような展開が待ってるから期待してて」
「マジかよ・・・」
それ、期待じゃなくて覚悟の間違いだろ。
「でもエコノミアにケンカ売るなら魔人ほっといてもよくねぇか? 俺が囮になりゃみんな逃げれるだろ」
なんでか分からないけど、こいつらのためなら囮になってもいいと思えた。
「そうだね。だけど、策があるし、あの魔人がいなくなるとメタリックも困るみたいだから倒すことにする」
「はあ? 策?」
「これを、君にあげるよ」
大村が水晶玉を渡してきた。なんか、中に白い魔法陣がある。
「なんだこれ?」
受け取ったら、水晶玉はスゥッと消えた。
<光属性魔法(最上級):魔人滅殺剣が使用可能になりました>
「は・・・!?」
どういうことだ!?
「どうやら、本当だったみたいだね」
「いや、なんで、これ、大村が・・・」
「メタリックの長い長い倉庫の奥に、厳重にしまわれてたよ。多分、トレジャーハンターが鉱石を採りまくれないようにするために魔人を野放しにしてるんだろうね」
「はあ? ああ、メタリックも石集めてるんだっけか。でも社員も危なくねぇのか?」
「メタリックは社員を駒としてしか見てないから。昨日50人のグループが襲われて全滅したけど、すぐに代わりの駒が準備されたよ」
(メタリックも鉱石採ってるのは仲間から聞いたのだろう。やはりメタリックの行動範囲を避けて東側ばっか行ってたんだな)
「マジかよ。そりゃ許せねぇな」
「でしょ。だからケンカ売ったんだ。魔人も、メタリックも、エコノミアも、僕らで叩きのめそう」
「おう!!」
「ついでに言うと僕も、中野くんを1つの駒としてしか見てないけどね」
「フッ・・・ったく、一言多いんだよ」
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中野に魔人滅殺剣を渡した。
なぜだか知らないが、中野の方から俺たちに謝ってきた。最悪は3人で土下座する構えだったのだが、拍子抜けだな。まあいいや、戻って来たのであれば頑張ってもらおう。
ドスン! ドスン!
魔人が迫って来る。
「僕と高松さんで頑張って隙を作るから、中野くんはそれ決めて」
「お、おう・・・!」
中野が緊張した面持ちで杖を見る。本人はお詫びをしたがってるみたいだし、罪滅ぼしとしては申し分ないはずだ。
快晴、魔人が踏み倒してるからか麓よりも樹氷が少なくて視界が良い。体調は全然優れないが、ピーク時と比べると幾分かマシになっている。それでもウォームローブを着ていてもこの寒さ、優れない体調には堪える。
ドスン! ドスン!
魔人が右手を上げて顔の横で拳を作り、こっちに右ストレートを繰り出してきた。コンディションが悪くても、やるしかない。
「避けるよ!」
高松さんが花巻さんを、俺が中野を抱えて飛び上がった。
ドオォォン!
魔人の右ストレートが地面に直撃。中々の威力のようだ。左足を大きく前に出して斜め下に向かって右手を伸ばしている魔人は、そのまま顔だけをこちらに向けた。ちょうど、俺たちの目の前だ。
杖を向け、その魔人の顔面に赤い魔法陣を出した。
「ファイアバード」
ゴオオオォォッ!
前かがみになっている魔人の顔から背中にかけて火の鳥が通過して行った。魔人は少し体を反らす形でのけ反ったが、
「うわっ!」
「のわっ!」
左手を払って攻撃してきた。ギリ避けることができたが、フェザーローブを装備していたことも災いして風圧で飛ばされた。
「2人とも、大丈夫!?」
「大丈夫」
「ああ」
ずっと風魔法で飛んでいるとMPが目減りしていくので、樹氷の上に着地した。高松さんたちもすぐ近くの樹氷に着地。
「中野くんはMP温存しといて。その一撃に全部使ってもらうから。最初は僕と高松さんでちょっとずつ攻撃していく」
「オッケー! って今、上級魔法使わなかったか?」
「それぐらい必要でしょ。相手を見てよ」
「あは・・・だな・・・」
空を飛んで魔人の攻撃を避けつつ、ヒットアンドアウェイ、攻撃食らいそうになったら即座にエイドローブに変更、だな。この、頭がぼんやりして全身の骨が痛む状態で、こんな戦いを要求されるとは。だが、どんなコンディションでも、勝負の時は訪れる。国を救えなかった言い訳に「体調が悪かった」なんて言って、誰が許してくれようか。みんな、歯を食いしばって耐えている。
魔人が手を前に出して開いた。
「来るわ! 吹雪の魔法よ!」
「吹雪?」
「魔法だ! 猛吹雪が出る! ブリザードって言うらしい!」
「そんなのがあるんだね」
警戒していると、後ろで何かが光ったような感じがした。振り向くと魔法陣があった。半分が水色で、もう半分が黄緑。水と風の合成魔法か。間違いなく上級だろう。魔人に向かって吹くようにセッティングする辺り、敵も中々に賢い真似をしてくる。
「真上に逃げよう!」
「ええ!」
だが、飛び始めた瞬間に吹雪が出て来た。
「しまっ・・・!」
「うわあああぁぁぁぁ!!」
「「きゃああぁぁぁっ!!」」
4人して吹雪に巻き込まれた。
雪から這い上がると、魔人の太い足が見えた。見上げると、右手を構えて既に攻撃体勢に入っていた。真下を見ているようだが、視線は俺からずれている。その視線の先を追うと、花巻さんが横たわっていた。まずい、花巻さんだけはやられる訳にはいかない。
魔人の右手が真下に向かって振り下ろされ始めた。
「花巻さんごめん! ウィンドショット!」
「うぅっ・・・!」
ドオォォン!
何とか魔人の攻撃は空振りさせることができたが、風に飛ばされた影響で花巻さんは22のダメージを受けた。
<私は、大丈夫>
<よかった、ごめん>
<ううん、ありがとう>
魔人はそのままギロリと俺の方を見た。一応エイドローブに変えて、
「ファイアバード」
「ジャスト・ワン・グリッター!」
俺のファイアバードは魔人の左足と顔を巻き込むように、高松さんのジャスト・ワン・グリッターは顔面に繰り出された。右足の少し前に右手を振り下ろしていた魔人は、大きくのけ反って体を起こした。直立になったならもう一度、
「ファイアバード」
足元から頭の先まで貫通するように、火の鳥が通って行った。
「う゛か゛ぁっ!!」
「大村君!!」
攻撃を受けた魔人が足を適当に振り回して俺を直撃、蹴られる格好になった。
「くっ・・・!」
油断した。受けたダメージは81。あの巨体だ、無理もない。気を付けないと、一瞬の油断が命取りになるぞ。
「ジャスト・ワン・グリッター!」
高松さんがもう一発魔人の顔面に攻撃して、花巻さんを連れて魔人の足元から離れた。中野も、走ってこっちに向かっている。
「あんまり離れすぎるとブリザードが来るよ。ほどほどの距離を保って、敵の攻撃を避けて反撃、を繰り返そう」
「そうね。・・・MPもつかしら?」
「最後は切り札、中野くんに魔人滅殺剣を決めてもらうしかないね。それでも倒せなければ、諦めてメタリックの工場に戻ろう」
「でも大丈夫なのか? ギリまで戦って。帰りも吹雪の谷とかあるんだぞ?」
「僕らが出て来た洞窟に、メタリックの工場まで行ける地下道があるから」
「ついでに、バスと、その運転手も縛り付けてあるわよ?」
「さらに言うと、工場の中に社員寮があって全回復できる」
「おいおい、マジかよ・・・。で、魔人滅殺剣もあるんだろ・・・? そんな都合のいいことあっていいのか?」
「全てが揃ってるから、魔人と戦うんだよ」
「バスは、都合よくあるんじゃなくて、ちゃんと準備してきたものよ」
「おいおい・・・」
ドスン! ドスン!
魔人が近づいて来る。
「メンタルヒール」
俺と、高松さんもMPが回復した。上級魔法だけで戦う上に風魔法も頻繁に使うから消耗が激しい。150ちょいだった俺と、200ちょいだった高松さんのMPが300になった。元から300ちょっと残っていた中野も少し回復したようだ。お礼を言っても余計な気を遣わせるだけだから黙っておいた。
ドスン! ドスン!
「さあ、早くあいつを倒して工場に戻ろう」
次回:決めろ光の最強魔法




