第124話:あいつらがいれば
「ぬぅおおおおおおぉぉぉぉ!!」
たった1人で挑む、魔人との戦い。既に敵はパンチの構えをしてる。動き遅いしこっちからも攻撃してやる。あんな奴、デカいだけだろ。
「食らいやがれえぇ!!」
魔人の手が動き出した。だがこっちも闇魔法を撃った。けどそれは、魔人のパンチであっさりかき消された。
「やべっ、逃げ…」
ドオォォン!
「ぐわあああぁぁぁっ!」
真っ正面から食らっちまった。
「がっ!」
樹氷にぶつかってその場で地面に倒れ込んだ。痛ぇ。
「くっ、そが・・・」
普通にやってもパンチにかき消されるなら、
「うらあっ!」
杖を横に振って長い線にした闇魔法を撃った。
トン。
魔人の腹に直撃したが、奴はまるで俺の攻撃なんて無かったかのようにパンチを繰り出してきた。
ドオォォン!
「うわああああぁぁぁぁっ!」
俺はまた殴り飛ばされ、樹氷にぶつかって倒れ込んだ。魔人の動きはそんなに速くないのに、避けられずに攻撃を食らってる。くそっ、風魔法があれば簡単に避けれるのに。
「まだだぁっ!!」
何度も殴られてあちこち痛ぇが、俺は立ち上がった。
「ジャスト・ワン・グリッター!」
まずはあの邪魔な手を狙って、攻撃範囲は狭ぇけど強い技を使った。魔人の手は何かで弾かれたように後ろにいった。
「うっしゃあ! もういっちょ…」
ドオォォン!
「ぐわあああぁぁぁっ!」
反対の手で、攻撃された。今度は何にもぶつからずに、しばらくして地面に落ちた。
「ち、っきしょ・・・!」
いってぇ。くっそ、やっぱ1人じゃ無理なのか・・・?
「ダメだダメだ! 何を弱気になってやがる! あいつらは来ねぇ! 大村たちも、ユラスたちもだ!」
仲間よりも、自分たちを大切にする奴らなんだ。来るはずがねぇ。“あいつらがいれば”なんて、ぜってぇ思わねぇからな。こいつは俺がブッ潰す!
手が2本あるなら両方とも使えねぇようにするだけだ!
「ジャスト・ワン・グリ…」
ドオォォン!
「ぐわあああぁぁぁっ!」
ダメだ。魔法陣出してる間に攻撃されちまう。
ドスン!
魔人が一歩進んで来た。殴り飛ばされたおかげでまだ離れてる。そうだ、この距離なら奴に攻撃されずに魔法が撃てる。ジャスト・ワン・グリッターじゃないと対抗できねぇけど、使い過ぎるとMPなくなっちまう。やっぱあれ、倒すの無理じゃね・・・?
・・・・・・。
やっぱり、逃げちまおう。ウォーターランドとホワイライトの間で植物の化け物に襲われた時も逃げたんだ。大村だってあの化け物は倒さずに逃げた。時には逃げることも大事なんだ。って、何で俺は大村の奴なんか参考にしてるんだよ! でも・・・、
ドスン!
これ、逃げるしかねぇだろ・・・。そうだ、俺の考えで逃げるんだ。大村が過去にどうしたとか関係ねぇ! 逃げるなら、手じゃなくて足に攻撃だ。
「ジャスト・ワン・グリ…」
魔人に杖を向けると、
「なにっ!?」
目の前に巨大な魔法陣ができた。またブリザードだ! そんな何度も連発でできんのかよ!? ・・・いや何止まってんだ俺! 先に攻撃す…
ゴオオオオオォォォォォォォッ!!
「うおっ!」
強烈な風と雪が吹いてきた。
「うわあああああぁぁぁぁぁぁぁっっ!!」
そのまま飲み込まれて、俺はまた意識を失ってしまった。
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くそっ、冷てぇ・・・。
雪に埋もれてるみてぇだ。確か、魔人に吹雪の魔法をされて、そのまま気ぃ失っちまったんだ。
くそっ、なんでこんなことに・・・。ユラスたちが裏切ったからか・・・? いや、それ以前に俺が1人になったのは千尋ちゃんたちがついて来てくれなかったからじゃねぇか。大村は1人でもいいとか言ってたから放置すりゃいいのに、なんでだよ。
今まで一緒に楽しく過ごしてきた千尋ちゃんがいきなりあんなこと言うなんて、どうしちまったんだよ・・・。ユラスたちも自分らのことばっかで俺のことほとんど考えてくれなかったし、誰を信じればいいんだよ・・・。
「うおっ」
体をガシッとつかまれて、雪の上に上げられた。目を開けると、魔人がいた。またこの巨大な手に捕まっちまったらしい。くそ、もう終わりだ・・・。どうすりゃこいつに勝てるんだよ。逃げることすらできねぇじゃんかよ。魔人滅殺剣はどこにあるんだよ。早くトドメ刺しやがれよ。死んじまった方が痛みも感じねぇし。
昨日千尋ちゃんと葵ちゃんも揃って死んじまってたのは、こいつに遭遇したのか? 昨日の今日でもうここには来ねぇかも知んねぇけど、来てくれねぇかなぁ。3人なら、何とかなるかも知んねぇ。
やっぱ、1人じゃ無理だろ。だから俺は、テンション上げて皆で仲良くして、一緒に困難に立ち向かおうとしてんのに、大村のヤツときたら、効率とか結果が最優先。あいつのせいで、千尋ちゃんも葵ちゃんも自分勝手に動くようになったんじゃねぇか。
でもこういう時、あいつは頼りになるんだよなぁ・・・。悔しいけど、事実だ。グリンタウンでもスターリー神殿でも、あいつがいたから乗り越えられた。あいつがもっと、人のこと考えて行動するようになりゃあ上手くいくはずなのにな。
魔人の手から、離された。地面に向かって落ちていく。魔人が両手を上に上げて、振り下ろして来た。ああ、終わりだ。
感じた痛みは、一瞬で消えた。
<中野勘太郎さんが戦闘不能になりました>
わぁってるよ、くそ。俺は、どうすればいいんだ。やっぱ、あいつらがいなきゃダメなのか? 俺は1人じゃ、何もできないのか・・・?
そうだな、今もこうして、死んじまってるからな。くっそ・・・。ああ、また泣いちまってるし。情けねぇ・・・。そうだ、泣いて頼めば、またチームに入れてもらえるかな・・・? でもケンカして出て行っちまってる。いくら優しい千尋ちゃんたちでも、いくら大抵のことを気にしない大村でも、無理だろ。
あいつらがいれば、あいつらいれば、あいつらがいれば。
ああくっそ、俺、まじダセぇ。自分でキレて出て行ったクセに、あいつらに頼るのかよ。今更もう、戻れねぇよ・・・。確かにあの時はムカついたけど、俺がちょっと我慢すればケンカになんてならなかったんじゃねぇのか・・・? あの楽しかった日々に、もう一度戻りてぇ。壊しちまったのは、俺だったのか・・・?
「パーフェクトリバイブ」
「え?」
体の周りが、真っ白に光り出した。何だ、何が起きてるんだ・・・?
・・・・・・。
あ、復活した。生き返ってる。てことは回復魔法か? でもそんなの誰が。
「啖呵切って出て行った割には、随分と苦戦してるみたいだね」
「おお、むら・・・?」
そこには、ケンカ別れしたはずの3人の仲間がいた。あのデカい魔人も見えてるはずなのに、いつも通りの何てことない顔をしてやがる。
「あれが魔人? まあ、確かに簡単じゃなさそうだね」
あいつらがいれば、どんな敵でも倒せる気がした。
次回:最強の中ボス、4人の魔法使い 対 雪山の魔人




