第121話:中腹の難所、吹雪の谷
―――8月30日、中野サイド―――
吹雪の谷の入口に着いた。このクモの巣みたいになってる道を、崖に落ちないように進まなきゃなんねぇんだな。
「ここからは新モンスターが出る。マウンテンウォーラスとフリーズシーホースだ」
「どんなやつなんだ?」
「マウンテンウォーラスは、セイウチみたいなやつだ」
「げっ! まさか水の魔法使うやつか!?」
「それはキャニオンファーシールだな。あいつはフライングリバーを使うが、マウンテンウォーラスは更に厄介なことにアイスマーメイドという回復魔法を使う」
「回復!? マジで!?」
「だから早いとこ片付ける必要がある。別種のモンスターも回復されるから、一撃で倒せるクリスタリッスの次に優先して倒すべき相手だ」
「うっげ~~。マジかよメンドくせ~~。でも魔法は回復だけだろ? だったら楽なんじゃねぇのか?」
「確かに攻撃魔法はない。だが、冷気のブレスを吐いてくる」
「ブレスぅ!?」
「結構痛むのと、下手すると凍傷になるから気を付けてくれ」
「お、おう・・・。で、もう1匹の方は?」
「フリーズシーホースは、タツノオトシゴだ。こいつも氷の塊を吐いて遠距離攻撃してくるが、マウンテンウォーラスほど厄介ではない。動きが早い上にHPもそこそこだから、後に回してじっくり倒すのが吉だ」
「なるほどな~」
「そして忘れてはならないのが、魔人ニアトムウォンスだ。巨大な雪だるまみたいなやつで、人を一撃で動けなくできる破壊力の攻撃に、水と風の上級合成魔法ブリザードを使う。はっきり言って勝ち目がない。こいつが出てきたら、悪いが街まで引き返す」
「ああ。そればかりは、しゃあねぇな」
アンディーとの話が終わると、パンパンとユラスが手を叩いた。
「新モンスター講座は終わりかな? それじゃあ行こうか。カンタローは荷車頼む。だが、クリスタリッスが出たら構わず攻撃してくれ」
「おう任せろ!」
歩き出して、吹雪の谷に突入だ。基本的に北に進んでいけばいいらしいが、天気が悪すぎて向こう岸が見えねぇ。ポツポツある樹氷も邪魔だな。
「来たぞ、ホワイトウルフだ!」
さすがに、狼1匹にも2人掛かりでやってる。この吹雪の中よくあんなのと戦えるな。
ポーン。
リスのやつも出て来た。
「マジ・・・!」
地面から出て来たリスが、風に飛ばされて横に動いてやがる。アンディーが弓矢を撃ったけど外れた。
「ちぃっ。 ぬおっ!」
「アンディー!」
アンディーがリスのタックルを食らっちまった。
「死ねぇ!」
俺はデカめの闇属性の玉を飛ばして、リスに攻撃した。タックルの後もリスは風で流されていたが、何とか当たった。
「大丈夫か、アンディー!」
「ああ。助かった」
うっし、俺も役に立てる時が来たぜ! アンディーも一発目でリスを仕留めれるようになってきたが、たまに外して俺が潰すことが何回かあった。狼はもう、ユラスとスキャッタに任せっきりだ。
「くっ・・・!」
さすがに人力車運ぶのがキツいぜ。
「アンディー、交代頼めるか?」
レベル上げ関係なしに、マジでキツい。
「ダメだ」
なぜか返事をしたのはユラスだった。
「なんで・・・!」
「ここは正念場だ。さすがにアンディーに荷物運びをさせるのはリスクが大きい」
「あ、いや、そうだけどよぉ・・・」
とは言ったものの、そうか? アンディーが攻撃外して俺がリス仕留めてんの何回もあんじゃん。それなのに俺の方が弱いみたいな言い方しやがって。
「だそうだ。すまないな、カンタロー」
「あ、ああ。頑張って乗り切ろうぜ」
てかこれ四次元収納にしまえねぇのか? ・・・できねぇ。くっそ、いつも無駄に便利なくせに肝心な時に使えねぇ。
「くぉ・・・!」
猛烈な風と雪で超ヤバい状態だが、少しずつ進んでいってるはずだ。
「出たな、マウンテンウォーラス」
新モンスターが出て来やがった。アシカだかオットセイか分かんねぇが、クリフキャニオンの奴と違ってこいつには牙がある。確か、氷のブレスと回復魔法を使うんだっけか。
目の前のオットセイみたいな奴は両手を地面に着けてエビ反りみたいな感じになって、口を開けた。
「ブレスだ、避けろ!」
ゴオオォォッ!
「うおっ!」
マジでブレスだ。オットセイみたいな奴の口から白いブレスが吐き出された。この吹雪でも普通に見える。
「一気に行くぞ!」
まずはアンディーが弓矢、俺も魔法で便乗、そしてユラスとスキャッタが2人掛かりでオットセイみたいな奴をボコボコにして倒した。
「ううぇえーーい。結構ヨユーじゃねぇか」
「こいつ1匹だけならな。他のモンスターと一緒に出られると厄介なんだ」
で、マジで狼と一緒に出て来た。スキャッタが狼を足止めしつつ、3人でオットセイみたいな奴を倒しに行った。ユラスが一度攻撃したら俺とアンディーも近くまで行けて、3人で攻撃してたら何もされずに倒せた。
今度は、オットセイみたいな奴と水色のタツノオトシゴが一緒に出て来た。
「あれがフリーズシーホースだ。どうやって宙に浮いてるかは分からん。こいつが吐くのはただの氷だが、この天気だと見辛い上に、速くてかなり痛いから気を付けろ」
「おう」
さっきと同じように、タツノオトシゴはスキャッタ、オットセイみたいな奴は3人で戦った。
「ぐおっ!」
「スキャッタ!」
タツノオトシゴが吐いた氷に当たったみたいだ。やっぱ痛ぇんだな、あれ。
「カンタロー、こっちが先だ! あいつのHPを減らしても回復されるぞ」
「お、おう!」
スキャッタに悪いと思いながらオットセイみたいな奴に振り向いたら、
「ぐほっ!」
背中に石を投げられたような感じがした。リスの突進よりも硬くて痛ぇ。
「すまんカンタロー! 攻撃を許してしまった」
スキャッタの声だ。背中を押さえながら足下をみたら氷が落ちていた。これがタツノオトシゴが吐いたやつか?
「カンタロー早く! マウンテンウォーラスを潰すぞ!」
「そうだった、いけねっ」
オットセイみたいな奴の方に行こうとしたら、魔法陣が出て来た。半分が水色で半分がピンクだ。
「くそっ! アイスマーメイドだ。発動される前に潰せ!」
3人でオットセイみたいな奴に攻撃したが間に合わなくて魔法陣からなんか出て来た。マジで、氷の人魚だ。両手でデカい楽器を持ってる。
「くっ・・・。回復される前に潰せるか?」
「いや、厳しそうだ。もうハープに手を掛けた」
「ぬおっ!」
オットセイみたいな奴は、俺たちが近づけないように尻尾を振り回した。氷の人魚が楽器を鳴らすと、奴の周りに氷の粒がキラキラする渦巻きができた。そのあと、氷の渦巻きと一緒に人魚も消えた。
「くそ、回復されたか。3人で攻撃しないとキツいな。一気にいくぞ!」
「ああ」
「おう!」
ここでデカいの一発入れてやるぜ!
「ぬおおぉぉっ、ジャスト・ワン・グリッター!」
俺が光の上級魔法を叫ぶのとほぼ同時に、ユラスとアンディーがもうオットセイみたいな奴のすぐそばまで一気に近づいた。やべっ、魔法陣が白くて小さいから吹雪で見えなかったんだ!
「やべっ、2人とも離れろ!」
「「ん?」」
俺が出した魔法陣から強烈な光が出た。
「「うおっ!!」」
2人後ろの方にヘッドスライディングして何とか避けれたみたいだ。危ねぇ、助かった。
「くそがっ!」
タツノオトシゴと戦っていたスキャッタがこっちに来て、俺の魔法を食らってのけ反ってるオットセイみたいな奴に攻撃した。ヘッドスライディングしてた2人も立ち上がって、立ったまま動けなかった俺が見ていたなか3人掛かりで潰した。
「次はフリーズシーホ…ぐあっ・・・!」
「アンディー!」
アンディーがタツノオトシゴの攻撃を食らったみてぇだ。そうだ、あいつを倒さねぇと! 今は近くに仲間はいねぇな。さすがに上級魔法はMPがもったいねぇ。
「スターストリーム!」
タツノオトシゴに向けて飛ばした魔法は、あっさり避けられてしまった。
「しまっ・・・!」
俺の横を、ピュン、と弓矢が飛んでタツノオトシゴに当たった。そのまま3人が近づいて行って、タツノオトシゴをボコボコにして倒した。
「カンタロー、さすがに今のは困るぞ。強い魔法を出す時はちゃんと確認してくれ」
「わ、悪ぃ・・・」
「まあまあスキャッタ、そう言うな。この天気だし、初めて戦う敵で慌てちまったんだろ」
「そうだな。すまん、言い過ぎた。ただ、覚えておいてくれ」
(慌てようと落ち着いてようと、前衛の動きを気にする習慣がないのが問題なんだけどな・・・)
「あーいや、悪ぃのはこっちだから。気を付けるぜ」
「話は済んだか? 一旦休憩しよう。久々にあの氷くらったがやはり痛いな」
(なんでこいつ、魔法使いになったんだろうな。バンバン行きたいなら前衛職にすれば良かったものを)
それからも時々ダメージを受けながら、猛吹雪の中を歩いて行った。もう、何分経ったか分かんねぇ。人力車が重ぇ。雪がベチベチ当たって痛ぇ。
「ぐあ・・・!」
スキャッタの声だ!
「どうした、スキャッタ!」
「このっ!」
これはユラスの声だ。
「何があったんだ!?」
「スキャッタがホワイトウルフに噛まれた。幸いにも傷は浅いが、もしかして愛属性魔法もってたりするのか?」
「あ、いや、すまねぇ、光と闇だけだ」
「そうか・・・。まあ、そうだよな、すまない」
(光にも回復はあるはずだが、カンタローは覚えてない・・・? プレイヤーの魔法の習得が、いまいち分からないな)
あ、いや、光でも回復魔法あったわ。さっき思いっきり光魔法使ったからバレるか・・・? でも何も言ってこねぇからこのままでいっか。回復係にされたくねぇし。
「くっ、この風、何とかならんのか」
「これを越えた先にあるからこその、エーデライトさ」
吹雪はずっと最初から変わらない調子だったが、崖から落ちることもなく順調に進んでいった。
「見えたぞ! 向こう岸だ!」
「マジ!? さっさと行こうぜ!」
ポーン。
リスうぜえぇぇ!
「死ねぇ!」
反射的にアンディーよりも先に攻撃しちまった。でもリスの野郎をブッ潰したぜ!
「はははっ、最後はカンタローに持って行かれたな」
うっしゃ! これでもう格下扱いなんてさせねぇぞ。
ついに、吹雪の谷を抜けた。地面はちゃんと続いてる。また樹氷が出て来たが下の方よりは少ねぇみたいだ。でもまだ雪が降ってる。谷のド真ん中よりはマシだけど。
「あそこに洞窟がある! 一旦休憩しよう!」
早く休憩したくて、まだちょっと離れたけど洞窟までみんなで駆け込んだ。
「ふいぃ~~~っ、疲れたぜぇ~~~っ」
「全くだ。しかも、谷を越えたのに雪は止まないしな」
「確かに」
「ま、いずれ止むだろう」
「ちょっと早いけど、昼飯にしないか。次いつ休めるか分からないぞ」
「さんせ~い」
人力車から色々と取り出して、昼飯の準備を始めた。
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「ぷは~~っ。食った食った」
ポンポンと腹を叩きながら洞窟の中でくつろいでいる。
「もうちょっと休んだら行くか」
「んじゃ退屈しのぎに、俺はちょっと採掘するかな」
アンディーが立ち上がって、錨っぽい道具を持ってった。
「お、早速エーデライトじゃないか」
「お、マジマジ? どんなのだ?」
「こいつだ」
アンディーが指差しているのは、銀に光るやつだ。
「ほえ~~~っ、結構キレイじゃねぇか」
「こいつが、カッパライトより高く売れる。ここまで来る必要があるし、量もとれないがな」
結局、4人ともここで鉱石掘りを始めちまった。
疲れてきた辺りで休憩して、今度こそ出発。さっきよりマシにはなっちゃいるが、まだ結構雪が降ってやがる。敵は時々出て来たが、吹雪の谷よりは戦いやすかった。
<高松千尋さんが戦闘不能になりました>
「はぁ!?」
マジ!? 千尋ちゃん!?
「どうした、カンタロー。突然大声出して」
「あ、悪ぃ悪ぃ。仲間のうちの1人が戦闘不能になったみてぇだ」
「あー。ケンカ別れしてたってやつ?」
「さすがにちっと心配だけど、まあ大丈夫だろ」
葵ちゃんもいるこ…
<花巻葵さんが戦闘不能になりました>
「葵ちゃん!?」
どうしちまったんだ!? 2人とも!!
「どうした、また何かあったのか?」
「あ、ああ。もう1人戦闘不能になったみてぇだ。もう1人と俺まで死んぢまうと全員元の世界に戻されちまう」
「へぇ、プレイヤーってそうなってんのな」
「じゃあカンタローは気を付けねぇとな」
「あ、ああ。さすがに怖ぇから慎重に行くぜ」
「それでも、全滅さえなければ後で生き返れるってのは羨ましいけどな」
「そうだよな。みんなはマジで1つの命だもんな」
それからも、見つけた洞窟に入って奥まで行って魔人滅殺剣がないか探して、行き止まりで休憩とちょっと採掘もして、また別の洞窟に行くのを繰り返した。他のチームとは全然会わなかった。やっぱみんなあんまここまで来ねぇのか。
「今日はここまでにするか。もう4時過ぎたし、次の洞窟がいつ出て来るかも分からん」
「そうだな。今日は吹雪の谷もあって疲れたし、この辺にしておこう」
「んじゃ今日は、この洞窟でキャンプなんだな」
「そういうことになるな」
薪を組んで火を起こして、運んで来た肉とか野菜を串に刺して焼いてバーベキューをした。4人しかいねぇし、さすがに山ん中じゃみんな酒を飲まなかったが、それでも結構盛り上がった。
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―――8月31日―――
朝起きたらみんなもう起きてて、串に刺さった魚を焼いてた。
「ほれ、カンタロー。自分の分を焼きな」
「おう、サンキュー」
もらった串を薪の上に置いて、焼けた魚にかぶりついた。
「ん~。ウメぇ」
「体慣らしにちょっと採掘やって、それから行こう」
外に出たら、今日は晴れてた。
「おっ、今日はいい天気だな。でも昨日降ってた雪が深いから足元には気を付けよう」
昨日と同じように、見つけた洞窟には入って分かれ道も全部行って魔人滅殺剣を探して回る予定だ。
だが歩いていると、空が曇ってきて、風もちょっと強くなってきた。
「うわ、マジかよ・・・」
「まあ、山の天気は変わりやすい。こんなもんだろう」
それから10分ぐらいで雪も降りだした。風も、さっきより強ぇ気がする。
「マジかよ、くっそ・・・」
「早いとこ次の洞窟が見つかればいいが」
山の壁沿いを歩いてるが、洞窟はなさそうだ。反対側の壁は、なんか霧っぽくなってて見えねぇ。メッセージ機能がありゃ二手に・・・あーいや、モンスター強ぇから無理か。せめて空が飛べりゃあなぁ。
ゴオオオオオォォォォォォォッ!!
「おわっ!」
「「うわっ!」」
「ぬぅ・・・っ!」
いきなりめっちゃ強い風が吹いた。雪もゴツくて、昨日の吹雪の谷以上だ。と思ったら真っ白になって何も見えねぇ!」
「うおっ! 何も見えねぇ! みんないんのか!?」
「いるぞ! すぐに止むはずだから絶対に動くな!」
「お、おう!」
風で飛ばされないように人力車の棒をしっかりつかんで、風と雪が止むのを待った。少しずつ風が弱くなってきて、真っ白だった目の前も景色が見えるようになったきた。
「おっ、一気に止んだぞ!」
さっきのが嘘みてぇに風も雪も止んで、出発直後みたいに晴れた。
「その代わり、別のが出て来たがな」
「ん? は・・・!?」
目の前に、特撮ヒーローで出て来るようなデカい怪物がいた。真っ白だ。今の一瞬でこんな近くまで!?
「魔人ニアトムウォンスだ! 逃げるぞ!!」
「いぃっ!?」
3人ともこれまで通って来た道を戻り始めた。って俺も逃げねぇとヤベぇ!
「カンタロー! それは後でいい! 洞窟でやり過ごせば回収できるはずだ!」
「お、おう!」
洞窟に隠れてれば大丈夫なのか!? いやでも、あんなデカいやつから吹雪の谷の向こうまで逃げるなんて無理じゃね?
「うおっ! くそっ、走りづれぇ!」
時々雪に足が引っ掛かりながら、必死に逃げた。
ドオォォン!!
「ぐわあああぁぁぁ!!」
「「だああぁぁぁ!」」
「うお・・・っ!」
後ろ見てなかったから何されたか分かんねぇけど、攻撃されたみてぇだ。マジでやべぇ!
「大丈夫か、みんな!」
「ああ」
「逃げるぞ!」
立ち上がって雪も払って、みんなでまた走り出した。
ドスン!
「なんだ!?」
後ろを見たら、魔人が足を一歩前に出してた。歩幅がデケぇ!
ドスン! ドスン!
「ひっ、ひぃ・・・!」
歩いて近づいて来る。
「カンタロー! 前を見て走れ!」
「お、おう!」
ドスン! ドスン!
思わず後ろを見ちまう。お、そこそこの距離保ててるか? 前を向き直したら、いきなりデカい魔法陣が出て来た。
「ブリザードだ!! 近くの樹氷にしがみつけ!!」
ユラスがそう言った後すぐに、魔法陣からさっきみたいな猛吹雪が出て来た。
「「「うわあああぁぁぁぁぁ!!」」」
「くっ・・・!!」
4人とも巻き込まれて、目の前も、頭の中も真っ白になった。
「く、お・・・!」
いってぇ。でも何とか生きてるみてぇだ。雪から出ると、いきなり影ができた。上を見たら、さっきの魔人がすぐそばにいた。近くの樹氷がなぎ倒されている。
「うおっ! ちょっ、待ってくれ!!」
魔人は顔を真下に向けて俺を見ている。
「待って、待ってくれ! 何もしねぇから、殺さないでくれ!!」
そう言ったら、魔人の顔が少し俺の後ろの方を向いた。助かったか?
「え・・・?」
魔人の視線の先には、逃げる3人の姿があった。
「おい! ちょっと待ってくれ!!」
グッ。
「うわっ! なんだ!?」
魔人に捕まえられていた。
「放せっ、放せっ!!」
そう言ったら放り投げられた。
「うおおぉっ!!」
俺の体は宙を舞い、やがて、ボスッ、と雪に落ちた。
「いってぇ・・・」
でも何とか、生きてるみてぇだ。残りHPは、132。やっべ、結構減ってんじゃねぇか。
「カンタロー・・・」
「ん? ・・・ユラス! みんな!」
魔人に投げ飛ばされたおかげで追い付いたんだ。
「酷ぇじゃねぇか、置いてくなんてよぉ・・・」
「すまない、自分のことで精いっぱいだ。それにカンタローは死んでも生き返れるんだろ?」
「ま、まぁそうだけどよぉ・・・」
それでも仲間を見捨てるかよ?
ドスン! ドスン!
やべぇ、魔人が歩き出した。
「・・・あ」
「どうした? アンディー」
ユラスが返事をして、みんなでアンディーの方を見た。
「カンタロー、囮になってくれないか?」
「・・・は? いやいやいやいや、何言ってんだ?」
俺たち仲間だろ? 目的のためなら仲間を囮にする。あいつらもそうだったし、俺が囮になることも結構あったけど、案外悪くなかった。でも女子いなきゃカッコつける意味ねぇし、そもそもコイツらとはそういう関係になりたくねぇ。仲間同士、お互いを思いやっていきてぇんだ。
「・・・確かに」
「それがいいな」
「はぁ!?」
ユラスとスキャッタも乗りやがった。
「なんで、なんでだよ!? 俺たち仲間だろ!?」
「仲間だからこそだ。俺たちは一度死ねば終わり、お前は他のプレイヤーが生きてさえいれば復活できる。お前がここで時間を稼いでくれれば俺たちは生き延びれるんだ。それが仲間のために動くということだろう?」
アンディーがドライな感じで言った。大村みてぇなこと言いやがって。
「ふ、ふざけんじゃねぇ! お前ら俺をいいように使ってるだ…」
アンディーが、弓矢を向けて来た。
ドスン! ドスン!
魔人の足音が迫って来る。
「昨日と今日の取り分は全部お前が持ってっていい。だから、頼む」
それが、人にものを頼む態度かよ・・・。ユラスとスキャッタも、アンディ―を止めようとしない。
「カンタロー、頼む。な?」
何なんだよ、お前ら、マジで・・・。
「わがっだ。もういい・・・。行っでぐれ・・・・・・」
涙が出てきやがった。
「っ・・・」
泣きながら突っ立ったままの俺を置いて、3人は行ってしまった。大事な時のこそ仲間を思いやる奴らだと思ってたのに・・・。
ドスン! ドスン!
後ろを見たら、魔人がもうすぐそこまで来ていた。手を顔のとこまで上げて、パンチの構えをしてた。
「くっそがああああああぁぁぁぁ!!!」
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―――8月30日、大村サイド―――
疲労と、鞭で叩かれた痛みでクタクタになりながらも事業所に帰着。洞窟での作業中、女性陣が2人とも戦闘不能になった。メッセージを送ってもしばらく反応がなかったが、返事があり、魔人に襲われてグループが丸ごと壊滅したとのことだった。
10台戻って来たバスのうち1台は運転手しかおらず、全員集められて説明があった。同時に人事異動も発表され、採掘班Eグループの人たちは、その顔を絶望に染めた。まるっと人がいなくなる採掘班Eグループには、明日にはビジナの囚人が来るらしい。おそらく、普通のメタリック社員も数人ほど混ぜられているだろう。
もう、気分が悪い。吐き気がする。辛うじて食欲はあったので昨日と同様に食事をとり、風呂に入り、身支度を済ませて寝た。
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―――8月31日―――
起床。まだ暗い。時間を見たらまだ3時過ぎだった。
少し、悪寒がする。
次回:悲鳴




