第115話:探せ光の最強魔法
―――8月22日、中野サイド―――
サウスポートに着いた。いや~風が気持ちよかったな~! 船ってのも悪くないな!
欲張ってオーシャンスイートにしようと思ったら1人だと1.5倍の値段取るとか言われたから1等席にしちまったけど、外に出てれば部屋なんて関係なかったな。
まだ1時半ちょいか。ちょっと街中ウロついてからレベル上げ行くか。あいつらはメタリックのことばっかだから急がなくていいだろ。あいつらが宿屋に集まってる時に死んじまったら戻されっから気を付けねぇと。タンカ切って出てったのに戻されたんじゃ笑いモンだぜ。
にしても賑やかでいい街だな! ブラッキはなんか空気汚ぇし人もシケた面だったし。船で昼飯食ったけどちょっと腹減ってきたし何か食うか。
「すいません、何かメシ食うとこってあります?」
「ああ、だったらトラベラーズカフェに行くといいよ。装備屋も一緒になってて君のような人も集まるから」
「マジっすか!?」 そんなのあるんスか?」
「うん、あっちの方にあるよ。近くまで行ったらまた誰かに聞いてみて」
(細かく教えても忘れそうだし、大体の方向を教えとけばいいかな)
「あざっす! 行ってきます!」
「気を付けて」
トラベラーズカフェなんてものがあるのな。聞いてみるモンだな。大村のヤツは何でいつも看板ばっか見るんだろうな。人に聞いた方が早ぇじゃん。
「ほえ~~。テンション上がるね~~」
なんか、魚とか野菜が外に並んでてオッチャンとかオバチャンが大声で売りさばいてる。
「へい兄ちゃん! ひと切れどうだい?」
「あ、いいんスか!?」
「はいよ!」
刺身をもらった。
「おぉ・・・! ウメぇ!」
「だろ? ゆっくりしてってくれよ!」
「おう!」
ときどきオッチャンとかオバチャンから物をもらえた。いいねぇ、こういうの。
「あれ? そういやドコなんだ? 大体こっちの方ってことしか聞いてなかったぜ」
ま、また誰かに聞きゃいいか。
「オバチャン、トラベラーズカフェってどこか知ってる?」
「もうちょい進んだ先にあるよ。はい、コレ。カフェもいいけど魚もね」
「オバチャンありがとう!」
それからも3回ぐらい人に聞いてトラベラーズカフェに着いた。左が装備屋で右がカフェっぽいな。金は100万ちょいか。まだBランクしか使えねぇしAランク用に金貯めとくか。確かレベル60だったな! もうちょいじゃねぇか。よし、カフェの方に行こう。
「へえ、男の魔法使い1人とは珍しいな」
「ん?」
既にパスタ食ってるヤツが話しかけてきた。2人組だ。
「一緒にどうだい? 1人じゃ寂しいだろ」
「お、マジ?」
せっかくだし他のヤツらとも仲良くなっとくか。てか今まで何でそうしなかったんだ? 大村のヤツが人と関わろうとしないからか。やっぱマジないわ。
「ああごめん、注文はカウンターだから何か頼んでくれば?」
「おっとそうだな」
ピザを頼んで席に戻った。
「見ない顔だけど、最近来たばっかか?」
「おう。さっきまでブラッキにいたんだが、仲間割れしちまってよ、1人で飛び出して来ちまったぜ」
「仲間割れ? それで1人で行動しようなんて、よっぽどだったんだな」
「あーもう、アイツら意味わかんねぇ。なんて言うか、ストイック過ぎて無理なんだわ」
「あっはは、性格の不一致ってやつだね」
なるほどな。まぁ確かに、大村と葵ちゃんは学校じゃ絶対関わらない感じのタイプだし。これが性格の不一致ってやつか。千尋ちゃんはノリがいい方だったんだけどなぁ・・・。
「てな訳で1人でスノーウィーン行って魔人滅殺剣探すことにしたんだわ」
「魔人滅殺剣? エーデルマウンテンの?」
「ん? ああ、それ山の名前か。そうそう、光属性の最強魔法よ。男だったら取りに行くべきだろ」
「それは構わないが・・・」
なんか、ザコも強いとか、じゅひょう? で視界が悪いとか、魔人がいるとか色々と教えてもらった。だが俺はやめるつもりはねぇ。1人じゃキツいかも知れねぇが、その魔人ってヤツも俺が魔人滅殺剣でブッ潰してやるぜ!
「そうか・・・そこまで言うなら止めないよ。自信もあるみたいだし」
「っしし、ぜってぇ手に入れっから楽しみにしててくれよな。ところで、オメェらは何やってんだ?」
「俺らは・・・」
こいつらは、この辺り一帯でトレジャーハンターとか護衛をやってるらしい。魔人滅殺剣ゲットしたらそういうのも良いかもな。ずっと同じ街ってのも退屈だからあちこち行ってみてぇし。ユニオンもまだだしな!
ピザも届いて、しばらくこの2人組と食っちゃべってた。これだよこれ、こういうの。こういうのを待ってたんだよな~。冒険の醍醐味だろ! 女の子もいた方がテンション上がるけど、贅沢は言わねぇ。今までがシケてた分これから楽しもうっと。
ピザも食い終わり、気も済んだ。4時過ぎたし、暗くなる前にちょっとレベル上げすっか。
「んじゃ俺行くわ。またな!」
「ああ。期待してるよ、魔人滅殺剣」
「おう!」
立ち上がってドアに向かう途中、
「あんた、スノーウィーンに行くんだって?」
話し掛けられた。今度は3人組だ。
「良かったら一緒にどうだい?」
「え、マジ!? いいのか!?」
「もちろん。俺らもスノーウィーン行って、さすがに魔人とは戦えないが、鉱石集めて金稼ぎするつもりだ。もちろん魔人滅殺剣見つけたらアンタがもらってっていい。悪くない話だろう?」
「おぉ・・・!」
確かに、あの狼とリス強ぇからな。1人より人数多い方がいいだろう。コイツらもノリ良さそうだし。
「んじゃよろしく頼むわ。ぶっちゃけ1人じゃキツいかもって思ってたんだよな」
「出発は明日だが、いいかい?」
「ああ。だが俺プレイヤーで、暗くなる前にちとレベル上げしたいんだけど良いか?」
「う~~ん。俺らはレベルとかないからな~。明日、鉱石集めながらでもいいだろ?」
「あーなるほどな。そうだな、ムリ言って悪ぃ」
「いいってイイって。んじゃよろしくな、俺はユラスだ」
握手を求めてきた。そういうのもイイねぇ。出された手をしっかり握って握手をした。
「おう。俺は中野勘太郎だ、よろしくな」
「んで、こっちはスキャッタに、アンディーだ」
スキャッタ、アンディーとも握手をした。
「プレイヤーだとファミリーネームがあるんだっけか。カンタローでいいよな、よろしく頼む」
「おう!」
そう言や、あいつらみんな俺のこと中野って呼んでたな。なんか他人行儀なんだよな。やっぱ名前呼びの方がしっくりくるぜ。
「ま、とりあえず今日のところは酒場でゆっくりするか。旅のお供が増えたことだしパーーッといこうぜ」
「酒場? マジ?」
宿屋のすぐそばに酒場があって、そこに行った。トレジャーハンターたちの行きつけらしい。
「あっはははははは!」
「いいぞー! もっとやれー!」
「っっぷはー!!」
うわすっげ! 昼間っから大盛り上がりじゃねぇか!
ンだよ、こういう感じのとこもあるんじゃねぇかよ。
「こういう所にはあんま来ないのか?」
「ああ、こういうの嫌いそうなのが2人もいたからな。普通のレストランとかだけだったぜ」
今まで知らず知らずのうちにアイツらに合わせてたんだな、俺。全く、それでして俺には合わせてくんねぇとかマジでナイわ。
「んじゃ今日は盛大に行こうぜぇ? お前さん、酒はいける口か?」
「あーいやぁ、俺ぁ酒は無理だ。ジュースでもいいぜ。それでもテンション上げれっから」
「はっはは、さすがだな」
それからは、マジで楽しい時間を過ごした。メシもジュースもウマいし、スタッフの姉ちゃんも可愛い。途中で話した弓使いの姉ちゃんも良かったなぁ。やっぱ女子欲しかったなぁ~。あとは歌い始めたヤツがいて手拍子したり、見ず知らずのヤツと肩組んで踊ったり、とにかく最高だったぜ!
っとと、ちゃんとレベル上げもしねぇとな。明日はみんなでスノーウィーン行って鉱石採掘? しながら魔人滅殺剣探しだ。テンション上げすぎて疲れて、酒場の椅子をくっつけたやつで寝ちまった。
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―――8月23日―――
「おーい、カンタロー、起きろー」
名前を呼ばれて、体を揺さぶられる感じがした。
「ん、ん・・・?」
目を開けると、見慣れないヤツがいた。
「あー、ん? 大村じゃねぇ・・・ああ! そっか! えっと・・・スキャッタだな!」
「当たり。今のはギリ覚えててくれてたことにするよ」
「悪ぃ悪ぃ、昨日の今日だからつい」
ユラスとアンディーもいた。
「もう9時過ぎちまってるし、軽く腹ごしらえしたら行くか」
ユラスはそう言って親指でドアの方を指した。
「おう!」
この酒場で朝飯も出るらしくてハンバーガーを食った。一緒に大量のポテトが付いて来てマジヤバかった。コイツらあんなん毎日食ってんのか?
北の方から街を出て、まずはウォーターランドに行くことになった。
「カンタローは、ここは通ったことあるのか?」
「あ? ああ。ウォーターランドの方からチョットだけな。敵、強ぇんだろ?」
「そういうこった。前は俺とスキャッタで行くから、カンタローとアンディーで援護射撃頼むな」
「おう!」
「ああ」
早速、黒い狼が出て来た。ユラスが普通の剣、スキャッタが変わった形の剣(ナタって言うらしい)を持って狼の方に走った。狼もこっちに走って来る。俺は魔法、アンディーが弓で援護係だ。でも今は2対1、援護の必要もなくユラスとスキャッタであっさり狼を倒した。
「ううぇーーい。いいねぇ」
「ま、1匹だけっだし余裕っしょ」
「俺にもちょっとやらせてくれよ。レベルも上げてぇし。これでも接近戦もできるんだぜ?」
「「はあ?」」
ユラスとスキャッタがオーバーなリアクションが返って来た。なんだ? 変なこと言ったか?
「お前面白ぇこと言うな。あーそっか、1人だったから接近戦もやってたんだな。でももう俺らがいっからリスク高ぇことしなくても大丈夫だぞ。敵が増えて囲まれそうになったりしたら頼むわ」
「あー、まぁそうだな」
やべやべ、今までが魔法使いしかいなかったせいで変な癖がついちまった。せっかく気の合う仲間ができたのに揉めたくねぇし、そのうち魔法の出番もあるからいいだろ。
今度は前から狼と左からワニが1匹ずつ出て来た。んじゃ俺はワニをやりゃいいんだな。
「死ねぇ!」
「おわっ!」
俺が魔法を出そうとしたらスキャッタが左に走り出して、俺は勢いを止められず魔法を出しちまった。スキャッタが止まったから当たらずに済んでワニに直撃した。
「カンタローちょっと待ってくれ、とりあえず俺オオカミ潰すわ。スキャッタはワニを頼む」
ユリスとスキャッタが走って行って敵を潰して、それからこっちに戻って来た。
「おいおいカンタロー、レベル上げたいのは分かるけど援護射撃って言ったろ。俺らじゃ手に負えない時だけでいいからよ」
「あ? あー・・・悪ぃ悪ぃ」
そっか、そういう常識みたいなモンがあるんだな。いけねいけね、俺いま空気読めてなかったわ。
それからも基本的にはユリスとスキャッタに任せて進んでいった。3匹以上出た時には援護射撃をしたり、敵の数が減ったのに魔法出して前衛に当たりそうになって軽く文句言われたりしながら順調に進み、ウォーターランドに着いた。MPがまだ300以上残ってる。レベルは55のままだがかなり楽だったな。やっぱ剣士がいると違うな~。この調子で無理なくちょっとずつ上げて行きゃいいか。
「んじゃちょっとパン買ってから水上バスで食うか」
「おう!」
水上バスで休憩がてらパン食いながら移動。ノースブリッジに着いてからまた歩き出し、北側の門と森を抜けて雪のとこに着いた。ここに来るのも3回目だな。俺のレベルも上がったし強ぇ味方もいるから大丈夫だろ。さっきと同じでユラスとスキャッタが前衛、俺とアンディーが後衛だ。
「ここは何と言ってもクリスタリッスが厄介だ。奴が出てきたら2人で率先して潰してくれ。もちろん俺らには当たらないようにな」
「あっはは・・・マジ気を付けるぜ」
狼はユラスとスキャッタが潰してくれるし、リスは魔法でも弓でもほぼ一撃でブッ殺せる。面白ぇぐらいに順調に進んで、サウスポートからノーダメージでスノーウィーンまで着いた。今まで途中で引き返してたのに、マジ凄ぇ!
しっかしさすがに寒ぃな。そうだ、ウォームローブ、ウォームローブ、っと。ふいぃ~~っ、あったけぇ~~~っ!
それと、あの雪のゴツゴツしたやつ凄ぇな! あれが樹氷って言うらしい。始めて見たな。でもあそこでもモンスター出るらしくて視界が悪いから気を付けた方がいいらしい。マジ死ぬのはゴメンだからな。
「キリがいいし、ここで昼飯にすっか。鉱石探しは昼からだ」
「魔人滅殺剣も忘れんなよ?」
「あっはは、もし見つかったらな。どこにあるかも分かんねぇし、鉱石メインでいいだろ? 見つかったらラッキーってことで」
「ああイイぜ。確かにドコあっか分かんねぇし」
鉱石探すって言うぐらいだからアチコチ歩き回るだろ。
「あ、そうだ。宿屋で回復してきていいか? さすがにMP減っちまった。5分ぐらいで終わっからよ」
「宿屋で回復?」
「お? お前ら知らねぇのか?」
今までプレイヤーと関わってきたことねぇみぇだな。まぁゲームだしプレイヤーに根暗なヤツも多いからな。せっかくだからプレイヤーの特徴とかを話してやった。やっぱ死んで全滅しない限りはも生き返れるっていうのが羨ましいみてぇだ。
回復してから合流して、さすがにここに昨日みたいな酒場はないからレストランを探して入った。昼飯食ったらいよいよ雪山だな!
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―――8月29日、大村サイド―――
第13会議室で迎えを待っている間、
<大村君が入った門の反対側にバスが10台ぐらい並んでるわ>
高松さんからメッセージが来た。どうやら、工場の周りを歩いているらしい。
<ありがとう。僕はいま会議室で待機中。建物の中は社員寮と、普通の部屋だけだね。作業場は別の場所に移動かも>
<なるほどね。じゃあバスが動いたら後を追ってみようかしら>
<気を付けて>
メッセージのやりとりを終え、迎えが来るのを待った。
ガチャリ。
ノックもなくドアが開いた。グレーの作業着を来た男の人だ。
「君が、大村、佑人だな」
「はい」
返事をして、立ち上がった。
「ほう、本当に魔法使いのようだな。悩んだところだが、君は採掘班に回ってもらう。ついて来い」
「はい」
採掘班? まさか、鉱石の採掘でもするのか。確かメタリックは採掘から自分たちでやってるんだったな。採掘の他は、加工は・・・どう見ても設備がない。まぁ採掘場もここに無さそうだし、他の班のこともそのうち分かるだろう。作業着の男の後ろを歩き、部屋を出た。
「聞いたぞ。部長にケンカを売ったそうだな。全く・・・もう後はないぞ、ここでは余計な気は起こさぬことだな」
「あはは・・・気を付けます」
後がない、か。次なんかやらかしたらどうなるんだ? 気を付けるのは本心だが、余計な気はブラッキで入社する時から起こしてます。だって志望動機だから。
「本来は作業着を着てもらうところだが、お前にはそのままの恰好でいてもらう。その方が目立つからな」
やっば、警戒されてんじゃん。
3階の大部屋の事務室に通された。既に職場の人たちが整列している。40か50人ぐらいだ。女性の姿もあるが、髪は全員いわゆるベリーショート。男女問わず全員グレーの作業着だが、シワが多くて汚れも目立つ。今思えば、俺をここまで連れて来たこの人の作業着は綺麗だ。管理職で、現場作業はないのだろうな。そして、作業者たちの顔は、心なしかやつれて見える。
「今日からこの採掘班Dグループに新しい仲間が加わった。魔法使いのオームラだ。プレイヤーらしい。みなと違う恰好ではあるが、やることは変わらない。よろしく頼む」
「大村です。よろしくお願いします」
ペコリと頭を下げて、挨拶。パチ、パチ、パチ、と、まばらな拍手。
さて、まずは採掘現場を見てみるか。文字通り体を張って実態を拝ませてもらおう。
次回:スノーウィーン工場採掘班




