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ゲームの中の悪役令嬢  作者: 春の堤
攻略チャート
7/9

表面上の笑顔

とはいえやはり情報の整理は必要だ

脳内で考えるにも限度がある

できればノートに書き出したいが、中を他人に見られるリスクは高い

頭のおかしい子供だと思われればまだましだが、セレスティーヌに本来私が知り得ない情報がバレれば潰されかねない。

今の私が生きているのは彼女のサンドバッグ認定されていてかつ私の運がいいからだ。

誰にも見られず、かつ記憶のアウトプットができる媒体を作らなければ。

朝食を食べながら、あれこれ考えてみるがなかなかいいアイデアが浮かばない。

今日は光の日。3週間ぶりに神殿に向かいに祝詞を捧げながら悩み続けるが結局何も降ってこなかった。


となるとやはり最初のプランしかない

一応、私は文字の読み書きの練習として日記をつけることが義務付けられている。

もちろん、乳母の検閲付きで

私の書いた物は基本彼女の確認が入る。

新しいノートを取り寄せることは可能だろうが、ここにどうやってゲームの記憶を書き出すか。

ぱっと思いついたのは日本語で書くこと。漢字とカタカナを混ぜればそれなりに読みづらくなるはずだ。

この場合どうやって言い訳すればいいだろうか。

いや、理由は「私はこの国の王女だ」で問題ないだろう。こういう時、やはり身分は便利。


「クラリス。私、新しい日記帳が欲しいのだけれど」

「日記帳はまだ使いきっていなかったと記憶しておりますが」

にっこりと笑いかける

「つい先日、失態を犯した者とは思えない態度ね。誰の温情で働けていると思っているのかしら」

「・・・今日中に用意いたします」



乳母の言う通り、その日の夜の内に届いた新しい日記帳に向き合う日々がしばらく続いた。

ひらがな、カタカナ、漢字の練習から手をつけたのだがこれがかなり難しい。

私の記憶にある言語は英語と日本語のみ。英語は実用に足る程の情報はなかったため切り捨てたが、おそらく私の国の言語は英語の方が近いのだろう。フランス語やスペイン語なるものもあるらしいが。

とはいえ2週間も練習すればそれなりに文章書けるようになってきた。

まずはヴィリディヴィナ王国で一般的に使われる翠葉文字で日記を書き、それを日本語に翻訳していく

少しずつ翻訳の作業が早くなっている。

それから更に3週間がたった。

春は過ぎ去り、夏の暑さが目立ち始めている。

日本語もそこそこ板についた所でゲームの記憶の整理に取り掛かろう。

不思議なことに前世の記憶が目覚めてから2ヶ月たとうとしているのに全く前世の記憶も、私の恋心も薄まる気配がない。

気まぐれの自覚はあったのだが

まずは・・・登場人物からね

主人公のフィオーレや攻略対象達の情報を書き出していく

次にゲームの設定

最後に主人公と攻略対象達のストーリー

これはレオンハルトルートのみでいいだろう

次にこの世界とゲームの中の設定が同じである理由の考察。

それを変える為にどうしたいのか、私がどう思っているのかを書き出していく。

とりあえずまずはフィオーレの捜索が必要だ

朝から机に齧り付いていたのでかなり疲れたがフィオーレの捜索の手段を考えなければいけない

彼女が両親を亡くし孤児院で暮らしていることは分かっているが、その孤児院がどこなのかはゲーム内に示されていない。

自力で捜索しなければいけないのだが、私には圧倒的に手駒が少ない。

私の使用人達に国中を探し回り一人の少女を見つけ出すことなど出来ないのはわかりきっている。

大人の手が必要だ。

フィオーレを殺すことに積極的になりそうな動機を抱えてて、そう簡単に裏切れない弱みを私が知っていてかつそれなりの権力を持つ大人。

『私の愛を欲するのなら、それに相応しい働きをしなくてはいけないだろう?ルヴィニア』

「・・・クラリス、お母様に私が再教育を頼んだ使用人がどうなっているのか聞きたいので二日後に訪問したいと手紙を書いてちょうだい。それと私にもノクトゥルナ公爵を紹介して欲しいと記載して欲しいわ」

これでお母様の興味をひけるかどうかは分からないが揺さぶることは出来ているはず。返事が来なければまた別の手を考えればいい。

フィオーレがただの孤児でいるのは10歳まで

その時が来る前に彼女を殺す。



次の日の朝

お母様の方から返事が返って来ていた。

そこには訪問の許可そして最近暑くなっているので体調に気をつけて欲しいと書かれている。

なんとなく、代筆してもらってそう。



そして今、私はお母様の部屋の扉の前で立ち止まっている。

私の使用人達がついてこれるのはここまで。イザベラは招待していない人間が部屋に入るのを嫌う。

呼吸が少し浅い。体が勝手に緊張していた。

ぎぃと重厚な雰囲気を纏った扉が開く。

部屋の中心には車椅子に座る女がいた

深海色の艶やかな髪を纏め、冷たい宝石のような赤い瞳が青白い肌によってより引き立っている。私によく似た顔立ちの美女。

普段から外に出ることがほとんどないのだろうか。ノクトゥルナ家の紋章が描かれている手紙を指は枯れ枝のように細く、病人のような印象を持った。

「お前のほうからやって来るとは、随分と珍しい。そんなに私の機嫌取りに必死か?ルヴィニア」

「ええ、愛するお母様へのお手紙ですもの。お母様に喜んでいただけるうよう真心を込めて送りましたわ」

「ただの気まぐれだ。聖霊に認められなければ人としての地位すらない。あまり思い上がらない方がいいぞ」

どうやら私には椅子すら与えられていないらしい

車椅子に座る彼女専用に作られた机は私のよく知るものよりかなり高い。机の上にには紅茶一つ用意されていなかった。

「それで、私にあんなつまらん建前と陽動で頼みたいことはなんだ?私の時間は貴重だ。手短に言え」

「旧王家の血を引いた聖女を探して欲しいのです」

「旧王家が存続している証拠は?」

「ありません」

「証拠がないのにこの私を馬車馬のように働かせようとしていたのか?」

「ノクトゥルナ公爵は吸血鬼だと知っていることは私の情報が正確だと言う証拠になりませんか」

「ならない。ありふれた噂話に踊らされていてずいぶんと滑稽だぞ」

「では貴方がノクトゥルナ公爵と結託し、我が国の聖地に魔王を誘致する計画を立てていることも噂なのですね」

初めて彼女がこちらを見た。その顔には笑顔が貼り付いている。

「荒唐無稽にもほどがある。物書きにでもなったつもりか?」

「とてもいい考えですわ。早速この話を本にして貴族の皆様にも広げましょう」

そう言ってにっこりと笑いかえす。

「セレスティーヌ様などこの話を読んだらどう思うのでしょうか」

「嬉々として私の調査を始めるだろうな。お前のように私と対等に交渉できると踏んで」

「帰れ。私は子供の妄言に付き合うほどの暇はない」

「ありがとうございます、お母様。まさか私の夢物語にここまで付き合っていただけるなんて思いもよりませんでしたわ。それでは、ご機嫌よう」

そう言って彼女に背を向ける。

ああ、そうだ一応聞いておこう

「私が紹介した使用人はどうなりました?」

「名前も忘れたな」

今頃吸血鬼の仲間入りといったところか。

私にはどの道関係ない。

私がイザベラの計画に気付いていることを伝えられただけで十分だ。

少なくともイザベラは旧王家の生き残りについて調べるだろう。

もし聖女が生まれてしまった場合、魔王にとって最も大きな障害になりうるのだから。

もしフィオーレが見つかった場合、イザベラは私がどうやって情報を仕入れたのか、どこまで何を知っているのか聞き出そうとするはずだ。

次の段階として私の知る知識と引き換えにフィオーレの居場所を聞き出すこと

情報をタダで渡さないよう気をつけなければ

ふう、と息をつき寂しいと言う感情に蓋をする。

母親ではない。利用するためだけに私を産んだ女なのだから。こっちだって存分に利用してみせる。

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