心のセーブポイント
体中に虫が這ってるみたいにむずむずと痒い
喉からヒューと呼吸が漏れた
その拍子の喉からも痒みが襲って来る
あまりの不快感に目を開けた
外は暗くなりかけており、ベッドサイドにあるランプが私の顔を照らしていた
「ルヴィニア様・・・お目覚めですか?」
すぐ横を見れば乳母の顔がある
「一体、なにがあったの?」
「ルヴィニア様は中庭を抜けようとした所で倒れ、頭部を強く打ちつけました。倒れた原因は不明です。我々がついていながら2度もこのような事態を起こしてしまい申し訳ありません。」
「そう、あと2年もすれば貴方も解雇でしょうし今回の件は不問にするわ。どうせ次の仕事なんて失態だらけ貴方に見つかるはずもないでしょうし」
というか本気でどうでもいい
今、私の脳みその半分はレオンハルトのご尊顔で締められている。
時期国王と目される非常に優秀な第一王子。選ばれた聖霊は私と同じ炎。自分が不義の子供であることを薄々感じており、自分の地位を盤石なものにしようとヒロインに近づくが、その純粋さに絆されていく。
ヒロインであるフィオーレは
内乱で途絶えたはずの王家の子孫で
その内乱の原因は、魔王の配下であるカミラによるもので
カミラはイザベラを取引を行いイザベラの足を直す代わりに、聖地への誘致を企てて
イザベラの足が動かない理由はセレスティーヌが毒を盛ったからで
毒を盛った理由はイザベラが先代国王を唆して帝国に戦争を持ちかけようとしていたからで
イザベラが帝国に侵攻しようとした理由は・・・
いや、話が逸れている
聖霊の加護はこの国の中心にある聖地ウェネラの庭に住む7柱の聖霊からもたらされるもので
そしてその力を狙ってのちに魔王と呼ばれるヴァルガス・エクセリオンが・・・
ダメだ、情報が全く整理できない。そもそも前世の記憶を自分から掘り出そうとするのは今回初めてやったことだと気づいた。
シナリオの内容から関連する情報が流れてきて話が逸れていく。
というか最初はレオンハルトに関するものを探そうとしていたのに
はあ、とため息をつく。
レオンハルトの見た目はすごく綺麗でかっこよくて、笑顔が冷たいけどほんとは優しくて、私が一番好きな彼のスチルは
ハッと我に帰る。
急に体温が上がった気がした。恥ずかしい。屈辱だ。
こんなことを考えるようになるなんて
頭を振って邪な考えをどうにか振り払う
思考を切り替えろ
そもそも私は何故彼に恋をした?
言っちゃなんだが私は攻略対象達が私に散々悪口を言っている場面を記憶している
『母親に縋るしかない子供』『帝国の傀儡』『虚勢を張るばかりの中身のない女』『見ていて痛々しい』
その他色々
私の彼らに対する好感度はマイナスだったはずだ
なるべく関わりたくもなかったし
まさか、私は他の3人の攻略対象にも恋をするとでも?
いやそれはない・・・はずだ。
「ヴィリディヴィナ:古き血脈の天光」に逆ハーレムルートは存在しない。
そしてルヴィニアはプレイヤーが決めた攻略対象を好きという設定でフィオーレを虐め抜く。
つまり、この世界はレオンハルトのルートを選んだ場合のシナリオで動く可能性が高い。
でも、誰がプレイヤーなんだろうか?
そんな考えが頭をよぎる
順当に考えればフィオーレ。
だが、彼女の言動もシナリオごとに決まっている。
ルートを選択し、会話の選択肢を選ぶプレイヤーがいなければいけない
今まで漠然とこの世界は乙女ゲームの中の世界だと思っていたが、それならどうやってこの星は作られた?前世の記憶にある惑星は、宇宙の中にあり無数の偶然によって人類が生まれたものだ。
太陽も、月もある今の私が生きているこの星が地球と同じように作られていると仮定するならば、こんなゲームの中とそっくり同じの文明が発展することなんて偶然あるのだろうか。
それならまだ、何者かがこの星の文明をゲームの中と同じになるよう、操作したと考える方が現実味がある。
その何者かがプレイヤーとしてレオンハルトのルートを選択し、この世界がゲームのシナリオ通りに進むよう国を操っているのであれば
私が彼の事を好きになったことにも説明がつくのではないだろうか
馬鹿げている。こんなことあるはずがない
これは恋を認められない私の妄想だ。
でも、もし私が操られているならプレイヤーを殺してしまえば私は自由になるのではないだろうか。
その時初めて私は、一人の人間として生きていけるようになるのかもしれない
その時、レオンハルトと結ばれたいと心の底から願っていたら、彼を愛してると言えるのではないだろうか
そうだ。別にプレイヤーを殺す必要もない
乙女ゲームのシナリオ通りにことを運ばせなければいい。
私が今からできそうなことの中で最も簡単で、乙女ゲームのシナリオに影響があるもの・・・
それはやっぱりヒロインの暗殺だろう
今の彼女は王女でも神殿によって担ぎ上げられた聖女でもない
ただの孤児だ。
レオンハルトと結ばれるであろうフィオーレがルヴィニアは心底気にならないと思っている。
ゲームの中の自分と同じ結論に行き着くのは大変遺憾だ。失敗する気しかしない。そう思うとやっぱり笑えてくる。
失敗するのは怖い。一歩間違えれば恐らく私は死ぬ。
でもフィオーレと仲良くしている自分を想像するだけでも鳥肌が立つのだ。
不快だ。嫌い。死んで欲しい。
そんな醜い感情が私を支配する。
どのみち行動しなければレオンハルトと恋人になる未来はない。
それに、もし私がゲームと違う結末を迎えられたならそれは私が人間であることの証明になる。私もそう思うでしょう?
レオンハルトに恋をする悪役令嬢のわたくしとゲームの中のルヴィニアを自分と認めたくない私の心が同じ方向を向いた
いつのまにか体の痒みも治っている
未来を変えたいと、その為ならどんなこともして見せると強く思った
ルヴィニアは母親譲りの蜂蜜アレルギーです




