地下経済は、地下にある
――回転する中華テーブルを囲む俺たちとノーム。
テーブルの上には豪華な中華料理。ノームのおじいさんは厨房とテーブルを行ったり来たりしてめっちゃ歓迎してくれる、
「丹波さんたちから話は聞いてますじゃ。まずはたくさん食べてほしいですじゃ」
(完全にレジスタンス仲間だと思われてる……)
壁にはうざいくらい『魔王モール打倒』などと書かれた張り紙や横断幕がある。
「他の皆さんも、上の方でゆっくりされているはずですじゃ」
上もこんな雰囲気なのか気になったが、安全なことは間違いないようだ。
ひとまず、出された酒と食事を取ることにした。
目の前のシュウマイを一つ口に放り込む。……うまい。肉汁がほどよくしみ出してくる。結局こういう堅実な料理が一番信用できる。
「やっぱり気になるのはヒルデ師匠なんだけど……。ん、ちょっと待てよ。全員、ヒルデ師匠が生きていたのに驚かなかったように思えるけど……?」
イゴラくんが元気のない様子で答える。
「ヒュームンさんが教えてくれたんです」
レンゲで麻婆豆腐の豆腐のみを食べている。四角いの、ほんと好きだな……。
「なるほど……。皆を連れてくるときに話してくれたのか」
「まあ、今回間に合うかどうかまでは微妙だったようですけど」
「ヒルデ師匠……、魔法を使ってたみたいだけど」
「それは、僕にもわかりません。とにかく、ボクは卵の殻のような防御壁すら出せません」
イゴラくんは魔法が消えたことが相当堪えているようだ。いつもは意外とどっしりとしているのに、魔法がなくなったらこうも変わってしまうのか。
ちらりと、魔法を無くしたもう一人を見る。
「はあ……」
「ルルドナ、大丈夫か」
大きなため息をつくルルドナに声をかける。
「はあ~……」
紹興酒をがぶ飲みしている。がぶ飲みするようなお酒でもないような。
「おいおい、元気ないな」
「そりゃそうよ……」
全ての力及ばず、負けたのだ。しかも完敗に近い。
「3億売り上げがあったからいいだろ」
胸ポケットから小切手を出す。
「そんなの、いつ受け取ったのよ……」
「土下座したとき」
「ちゃっかりしてるわね……」
そっちだってお礼言ってただろ、とツッコミをしたかったがそれすら許されない雰囲気。
「おいおい、落ち込みすぎだって。俺たちは戦うためにこの世界に来た訳じゃないぞ」
「あんたはそうだろうけど、私は……。それにもう、強力な重力魔法も使えないし……」
途中に、助けが来てくれなかったら……。
「まったくこれだけら好戦的なやつは……戦闘民族かよ」
「なんとでも言いなさい……。もう、魔法が使えないのよ……」
魔王に負けたことより、魔力がなくなったことのほうが堪えてるようだな……。
「俺なんて最初から使えないんだが」
「それは……、わかってるけど」
正直、あまり実感はなかった。普段の俺には、魔法なんて無かったし。
「雑貨屋の仕事には必要ないからいいだろ。元気出せって。だいたいもう相手だって魔法使えないんだろうし」
例外はあるみたいだけど……。
「用心棒失格ね……」
「あの、用心棒として働いてもらってる覚えはないんだけど」
「夜勤は用心棒をかねてるのよ」
そうだったのか。
暗い雰囲気の俺たちに、ノームの爺さんは明るく声をかける。
「皆さん、まずは食べて元気になるですじゃ! それに、魔法が消えることはある程度予想通りですじゃ」
「え?」
ノームの爺さんは、俺たちの目が丸くなるのを楽しそうに見つめる。
(魔法が消えることを、予想していた……だって?)
「地下経済を知ってる者にとっては、常識ですじゃ」
得意気なノームの顔。
……だから、地下経済の意味、違いますよ……。




