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丘の上の雑貨屋と魔王モール  作者: 登石ゆのみ
第23章 異世界崩壊編

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地下世界で危険なのは子どもの声

 闇。

 穴の中は、完全な闇だった。飛び込んでから数十メートルを一気に駆け抜け、ようやく魔王忖度部隊の巨人たちを振り切る。

 先を行くのは、何重ものローブを纏った謎の人物だ。


 最初は夕日が差し込んでそれなりに明るい道が続いていたが、もう今はほぼ闇に包まれていた。

 だが、不安なほど、闇が広がり、どんどん地下へ下っていく。

 湿った空気が辺りを包んでいる。

 鍾乳洞ってやつだろうか。


「ずっと下りのスロープが続いています。足音を立てずに、着いてきて下さい。しばらく灯りはつけられません」

 先導する人物におとなしくついていく。

 というか、黒い布に包まれて、引っ張られるように足を進めているだけなのだが。


 しばらくすると、待ちきれないという感じの声がした。

「そろそろ、灯りをつけてもいいんじゃないか? 丹波くん」

(丹波……? あの、占い師の?)


 かわいらしい声の魔女ヒルデの声が洞窟内に響く。

 それに対し、ローブの人物から反射的な声が返ってくる。

「……! ヒルデ様! 子どもの声はいけません!」


 次の瞬間、周囲がぼんやり明るくなる。そこは何でも無い、くりぬいたような穴が広がっているだけだった。

 ただ、魔女ヒルデの全身が蛍のように光り輝いていた。

「お? そんなに可愛くてプリティな声だったか……?」

 魔女ヒルデの姿が光に包まれ、その姿が薄らいでいく。


「サナさん!」

 丹波さんの切迫した声。

 その隣にいた小さな影が黒の衣を伸ばすが、ヒルデの影をすり抜ける。

「ふふ、ヒーローの次はお姫様か、小さくなってみるものだ。では諸君、ステキな救出劇を頼むよ……」

 そうして、余裕たっぷりのお姫様は、あっさりと姿を消した。

 全員、あっけにとられる。


「師匠、魔力切れ、本当だったんだ……」

 俺のつぶやきにローブの人物が大きめの声で問いかける。

「魔力切れ?」

「さっき、コスプレ魔法を2回使って……」

「またそんな無茶を……! 連れてくるだけでよかったのに」


「えっと、丹波さん……、魔王モール3号店にいた占い師さんですよね? お久しぶりです」


「そう。丹波よ。だけど、詳しく話す暇はないわ。ここ、まだ安全じゃないの」

 辺りを警戒した様子で見渡しながら丹波さんが続ける。隣の小さな黒装束もそわそわしている。

「とにかく、子どもはいないわよね? 子どもが声を出すと洞窟の精霊に連れて行かれるわ。危険はないんだけど……」


(え、ちょ。それ完全なフラグ発言ですよ……)

  嫌な予感に背筋が凍る。だが、その予感を現実にするのは、いつだって空気を読まない身内だ。


「そんな子ども、いるわけ無いでしょ。にしても魔女ヒルデが生きていたって、どういうこと?」

 ルルドナが呆れた様子で呟く。すると。

 案の定、先ほどと同じような光が輝く。


「え?」

 目を見開くルルドナ。そうだ、ルルドナは、こっちの世界で生まれた存在だ。元AIの魂が、こちらの土人形に転生したんだ。知識はあるけど、子どもと認識されても仕方が無い。

「おいっ」

 反射的に彼女の手をつかむと、こちらまで光が広がる。


「この光は伝説の……!」

 イゴラくんが近づいて解説しようとする。キャラ的に解説係から逃れられない宿命……! すると、彼も光に包まれる。

(イゴラくんもゴーレムにしてはまだ子どもだ……!)


「みんな、しゃべるな!」

 その声を最後に、俺と、ルルドナ、イゴラくんは、その場から――消えた。

 最後に注意した俺の声は、どこか学校の先生のような、場違いな雰囲気をもっていた。

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