宰相の評価
僕が開拓地を訪れて、その後どうなったかというと――
あの日以来、狼の出現頻度は激減し、開拓者たちは意気軒高。ゴーレム20体の活躍もあって農地開墾は大いに捗った。遅延していたスケジュールを一気に巻いて開拓は完了。ちなみに使命を果たしたゴーレムたちは姿を変えて今も役に立っている。ウッドゴーレムは小屋を建てるための材木に、クレイゴーレムは外敵を阻む土塀に。
「陛下はこのゴーレムの用途をあらかじめ想定していたのですか?」
「勿論ですよ。ザイード宰相」
執務室で、俺はザイード氏に農地開拓の件を報告していた。
成果は上々でザイード氏もそこは認めてくれたようだ。
「……大したものですな」
「フン。わかればよいのじゃ、若造めが」
俺の代わりにエンズが薄い胸を反らしてふんぞり返る。
「で・す・が」
ザイードは一度表情を柔らげたが、すぐに厳しいものへと変えた。
「現地で狼退治とは無鉄砲にも程があります! そんな軽率な真似をなさるとは国王としての自覚はないのですか!?」
「い、いえ、あの、でもですね。僕が居たから民にも開拓地にも被害が出なかったわけですし……」
「そういうのを結果論というのです」
ぴしゃりと言われてしまった。
「でも、放置してたら最悪の場合、犠牲者が出ていた可能性だってあったと思うんですよ」
「その点は仰る通りかと存じますが、そういった時のために騎士団が存在するのです。王が軽率に前線に出てなんとしますか」
正論が耳に痛い。
しょんぼりする僕とは対照的にエンズは笑っていた。
「若造が説教したくなる気持ちも、わからんではない。我が主はどうにも危なっかしいところがあるのでな。ま、それはさておくとして、じゃ。此度の我が主の手並みはお気に召したかな? んん?」
「せ、成果だけ見れば期待以上と言えます」
「どんな相手であっても正当な評価を下せるというのは美徳じゃな」
ニヨニヨと笑うエンズに覗き込まれてザイード氏は顔を背けた。
「……狼退治に関しまして、今回は不問とします。が、無茶はおやめください陛下。ご自身だけの身体ではないのですから!」
「あ、はい。今後は気を付けるようにします」
僕は曖昧に頷いた。
なるべく気を付けよう。うん、なるべく。
「それでは私はこれで失礼致します」
「はい。お疲れ様です。結果報告を聞いてくれてありがとうございました」
「こちらこそありがとうございます陛下。またご相談させていただく際にはよろしくお願いいたします」
早口でまくし立てて一礼するとザイードは執務室を退出していった。
僕はエンズと顔を見合わせた。
「うーん……。ちょっとは評価してもらえったっぽい、かなぁ?」
「まだまだあの堅物の信用を得るには足らんがの」
「そうだよね」
「一日やそこらで先代と同じだけの信を得られるものか」
「だよねぇ」
「我に相応しい王になる日を楽しみにしておるぞ」
「アッハイ。が、頑張ります……」




