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邪竜と軟弱者  作者: なが
第2部
30/35

16-1



自分の部屋に戻ってきてからずっと、今までのことをぐるぐると思い返していた。

部屋の壁にもたれ掛かって、ただ廻っている時計の秒針を、何となく追っていた。

気になったことがある。


――――そうだ、また機会があったら、家に遊びに来て。


もしグラファイトの気持ちが理解できていたとしたら、戻って来れないことは分かっていたはずだ。

なのにアルドはそういう風に、確かに言った。

そう思い返してみると、こっちに来る前に家の中を整理していたのは、もしかして、死ぬ前に遺品整理をしていたということなのかな。


そして、テスラの言葉。


――――アルド、他に何か言うてなかったか?いや、わっしゃとずっと仲良うしとったから、何か遺言ってか、まぁそんな言葉無かったかなー思うてな。


確かに、それはもっともだ。

もしかして、アルドの家に遺書――――遺書とまで行かなくても何か――――があるんじゃないか?

僕は、そういう結論に至った。




……頭を使いすぎて、何だか眠たくなってきた。

欠伸をしながらふと時計を見ると、既に日をまたいでいた。


「あれ、もうこんな時間……」


思わず呟いてしまった。

かれこれ2時間も考えていたんだな。疲れがどっと出てきた気がした。

とりあえず明日、いや、今日確かめてみよう、と心に決めて、布団に潜り込んだ。






――――――グラファイト、……グラファイト!




起きると、目元が冷たかった。


僕は目元を手で拭って、上半身を起こした。

グラファイトがもがき苦しむ夢だった。

檻の向こうでもがいているのをただ見せつけられる傍観者役は、もう嫌だ。

その光景を思い出すとまた、胸がぎゅっと握られた心地がする。

早く、グラファイトの元に行かないと。


朝食を急いで食べてから、グラファイトの元へ向かった。


「グラファイト、」


グラファイトはいつものように臥せて、ただ僕の方を見据えていた。

何も言わなかったが、何となく、前より表情が穏やかになった気がする。


「今日は一緒に行ってほしい所があるんだ。来てくれないかな?」


「何処だ。」


グラファイトは口だけ動かした。


「アルドが住んでいた家に、ね。」


グラファイトは黙りこくってしまって、微動だにしなかった。

僕は少し不安になった。


「聞いてる?」


僕が尋ねると、グラファイトは小さく口を開いた。


「……そも、どうやって我を外に出すつもりだ。」



……あっ








「これは自分勝手の領域になる。アルドの家に行くのはブレイズから聞いていたけど、勝手に敷地内に部外者を招いたりするのは――」


「部外者という言い方は、無いと……思います……」


言葉を遮ったところで、相手がノルデン隊長だということを思い出した。

僕は目線を足下に逸らした。


「あのね、これは一般化して言っただけで、ラグルの行為が間違っていたとか、そういう話をしている訳じゃ無い。一軍人として、それ相応の行動をしてくれないと困る、ということ。分かっているかね?」


僕は一歩下がって頷いた。ノルデン隊長はふう、と溜息を吐いた。


「今度からはちゃんと“事前に”報告するように。良いね?」


「はい。」


僕は胸に深く刻みつけた。突っ走る前に、報告。

重要な事だ、といつも心がけているのに、いつも勝手に突っ走ってしまう。

それは自分でもよく分かっていた。


「檻全体の錠前も、鍵は同じにしてある。使うのなら使っても良いけども、万が一他国のドラゴンを見つけたら、見つからないよう直ぐに戻ってくること。交戦はしない、といってもまだ戦い方を知らないね。戦い方と言っても、大した事は無いけどね。とにかく逃げる、いいね。」


「はい。ありがとうございます。」


僕は深々と頭を下げた。

これでグラファイトと一緒に行ける。

心躍る中、ノルデン隊長は「あ、」と声を漏らした。


「そうだ。ドラゴンの背に乗ったことはあるかい?」



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