13-1
「君も大変だったね。」
「今思い返してみると、そうかも知れないね。」
グラファイトのことも大体話し終え、昼ご飯も食べ終えると、また縁側に座った。
いつの間にか、グールは戻ってきていた。
口元に血がべっとりと付いていたのは、全員が無視を通していた。
ふわりと生暖かい風が吹き抜けた。空を見上げると、薄く灰がかかっていた。
何だか沈んだ気分になる。
僕は大きく息を吸って、吐いて、アルドの目を見据えた。
「あの、お願いがあるんだけど。」
「何?」
「グラファイトに会ってくれないかな、一度でいいんだ。」
途端に、アルドは表情を曇らせ、庭の方に目をやった。
「その……無理だったら別にいいんだけど……あなたが怪我をしない保証は、どこにも無いからね。」
アルドはしばらく俯いて黙りこみ、そして顔を上げた。
「……、分かった、行くよ。力になれるかどうかは分からないけどね。僕だって、グラファイトと一生離れ離れなんて、嫌だから。」
すぐに、にこやかに肯定した。その笑顔は、どこか哀しげだった。
「良かった、ありがとう。」
僕は、どんな顔をしたら良いか分からず、俯いた。
「そうだ、行く前に、ちょっと家の中を整理していきたいんだ。いいかな?」
「もちろん、良いよ。」
「じゃあ、表で待ってて。」
ちらとブレイズの方を見ると、何か言いたそうに口を開けて、閉じた。
「何か言いたいことが――――」
「いや、大丈夫だ。気にするな。」
ブレイズは一度も目を合わさずに、玄関の方へ歩いていった。
僕はブレイズと少し間隔を開けて歩いていった。明らかに、おかしい。
その後ろからグールが赤みがかった涎を垂らしながら歩いているのは、とにかく無視をした。
玄関でずっと待っていたが、アルドはまだ出てこない。何分経つだろうか。
ブレイズはどこか落ち着かない様子で翼をバサバサと動かしていた。
「まだかな、ちょっと見てくる。」
「待て!……じきに来る。」
僕が家に入ろうとすると、ブレイズが急き込んで言った。
やはり、ブレイズがいつもと違う。確信が持てた。
どうしてだろう、と思案していると、アルドは黒縁のゴーグルを持って出てきた。どこか緊張した面持ちで出てきた。
「大丈夫?」
アルドは緊張した面持ちを崩さずに後ろを振り返った。
「良いんだ、大丈夫。そうだ、また機会があったら、家に遊びに来て。」
「良いの?」
アルドは肯いて、照れくさそうに顔を少し隠して笑顔を見せた。僕も、笑った。
アルドはゴーグルをかけると、ブレイズの背によじ登っていく。
「お前は、俺のここだな。」
グールは口の端を上げながら、自らの口を指さして言った。
「僕は……、ブレイズの方がいいな。」
引きつった笑みを見せながら、一歩ずつ後ずさりをしていく。
「グール、これから直接行くんだ。今回は私が運ぶ。心配するな、また連れて来てやるさ。」
ブレイズは僕の方を見下ろし、にやりとした。この兄弟、何だか恐ろしい。
「行かないの?」
ブレイズの背からアルドが顔を覗かせてくる。一瞬、何だか変な雰囲気を感じた。
違和感、というべきなものか……よく分からなかった。
「そうだね、行こう。」
とりあえず、先へ進まないと。




