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邪竜と軟弱者  作者: なが
第2部
23/35

12-2



数分して、グールは戻ってきた。


「大丈夫だってさ。」


そう言ったグールの陰から、一人の男が姿を現した。


「初めまして、アルドです。」


ブレイズの言ったことが、納得できた。

青年アルドは、背も顔も体格も、僕とよく似ていたのだ。

鏡に映ったような一致ではないのだが、その雰囲気が、僕と似ていた。

もしかしたら、グラファイトやグールと初めて会ったとき、僕のことをアルドだと思って、驚いていたのかも知れない。


「あ、初めまして、ラグルです。」


「君のことはグールから聞いていたよ。ジグリオス国でグラファイトの世話をしてくれていたんだね。」


「はい。」


僕は少し緊張して言った。


「あの、それで、いくつか聞きたいことが……。」


その途端、やはりアルドは表情が強ばったのが見えた。


「嫌なことを思い出させて、ごめんなさい。でも、僕は知りたいんです。」


「分かってる。そのつもりで、あなたに会ったのだから。とりあえず、家の中へどうぞ。」



昔から空き家だった古民家だそうだ。

木造の平屋建てで、なかなかエキゾチックで風流な家だ。

中もきっちりと整理されていて、いや、何だかあまりに整頓されすぎているような気もする。気のせいか。


「どうぞ、そこの縁側で座って待っていてください。」


「はい。」


やはり、グラファイトを裏切れるような人じゃない、というのは痛いほど分かった。

何か理由があったのだ、と確信した。

ふと縁側の外を見ると、グールとブレイズが庭で伏せていた。


「あ、そうだ。グール、どうしてアルドのことを知ってたの?」


「ん?ああ、お前と同じだ。襲おうとしたら、ブレイズがどうとかこうとか言うから、話を聞いたのが始まりだ。」


「そうなんだ。」


アルドは冷えた麦茶を持ってきた。


「飲みながら話そう。」


僕は頷いた。

そして、話を切り出した。


「僕は、アルドがお金欲しさにグラファイトを売ったと聞いたんだ。けど僕には、そうは思わない。」


「どうして分かるんだい。」


「……勘かな。」


麦茶を一口飲んだ。冷たくて、体に染み渡る感覚がした。


「面白いね、勘だけでここまで来たのかい?」


「う……そうだけど、でも、パートナーなら……あ、バディなら、グラファイトを酷い目に遭わせたいなんて、普通は思わないよ。何か理由があったんだと思った。本当のことを知りたいんだ。」


アルドは一つ溜息を吐くと、僕の顔をじっと見つめ始めた。

どんな話が来るのかと、固唾を飲んで見据えた。


「分かった。

……本当は、ジグリオス国は金だけを要求してきたんじゃ無かった。両親の命と引き替えだった。」


僕はその一瞬、呼吸の仕方を忘れた。

やっぱり、アルドはグラファイトのことを捨ててなんていなかった。


「ほ、本当なの? どうして言わなかったの? 言ってたら、グラファイトだって……。」


「僕だってそうしたかったさ!……でも、ノルデン隊長が、グラファイトには本当のことを言うな、って命令されて……。」


「どうして?」


「……それが、最善策だったんだ。」


僕は首を傾げた。


「もしグラファイトがジグリオス国に従ってしまったら、ラスヴァル国はかなり不利になる。グラファイトはとても強いから。」


「他に、……他にグラファイトが傷つかない方法は無かったの、探さなかったの?」


アルドは目を逸らし、一気に麦茶を飲み下した。


「グラファイトが連れ去られたのを知ったのも、両親が脅されていたのを知ったのも、全てグラファイトがジグリオスに連れて行かれた後だった。僕はお金で釣られていることしか知らなかったんだよ。僕ならグラファイトを敵国に送るなんて、絶対にしない。」


アルドは拳をぐっと握っていた。僕は思わず、その拳を優しく掴んだ。

僕は何とかアルドを諭そうと言葉を探したが、こういう時に限って良い言葉が見つからない。

ブレイズとグールも心配そうにアルドを見ている。


沈黙を破ったのは、ブレイズだった。


「そうだ、グラファイトとの楽しい思い出を話したらどうだい?」


「……僕も聞きたい、グラファイトって、やっぱり昔は優しかったの? そうだ、出会った時はどんな感じだったの?」


僕は明るく繕った。アルドも無理に笑いかけた。


「……元々グラファイトは、軍の中にいた訳じゃなくて、森の中で傷ついていたのを僕が看病してあげたんだ。」


「そうだったんだ。」


「グラファイトは最初、看病するのを嫌がっていたんだけど、強引に傷の手当てをして、何度も通ってたら心を開いてくれたんだ。」


「最初から心を開いていたわけじゃないの?」


アルドは肯いた。

アルドは残っていた麦茶を一気に飲み干した。


「うん。グラファイトには、大きなプライドがあったのだろうね。」


「プライド……。」


「元々は人間を見下していたのだと思う。といっても、ただの餌と思っていたぐらいじゃないかな。憎んだり、そういう感じじゃ無かったし。」


「そうだったのか……」


「ところで、今のグラファイトはどんな様子なの?噂に聞いた通り……?」


「うん、まぁ、そうなんだ。……あれ、グールは?」


ふと庭を見回すと、ブレイズのみになっていた。いつの間に……


「狩りに出かけた。気にしなくていい。」


ブレイズが頭を掻きながら言った。


「と、じゃあ、とりあえず、昼ご飯にしませんか?」


「じゃあ、昼ご飯の間に、今までのことを話すよ。」


台所の方へ歩いていくアルドの後を追いかけていった。





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