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邪竜と軟弱者  作者: なが
第2部
15/35

8-2







森の中の、とある広い洞窟。


「――――その、グラファイトに会おうとして、軍の建物の前まで行ったんだ……ん?」


ようやく気分が落ち着き、これまでのいきさつを話そうとした僕の耳に、はためく翼の音が聞こえた。

何だろうと振り返って見ると、それもまた赤いドラゴンだった。


「兄さん、」


さっきまで話していた方のドラゴンがそう言った。地面に降り立ったドラゴンは、こちらへと歩み寄ってきた。

グールもブレイズもグラファイトぐらいの大きさで、広い洞窟とはいえ、少し窮屈だった。


「グール、ここに居たのか。」


「まあな。」


飛んできた方のドラゴンをよく見ると、グラファイトが去っていったあの時のドラゴンなのかもしれない。

自信は持てなかったのだけど、薄らぐ記憶の中で何となく似ていた。


「確か、グラファイトの……。」


やっぱりそうだ。間違いなくあのときのドラゴンだ。僕は肯いた。


「知ってるのか、兄さん。」


「話すのは初めてだな。確か名前は……何だったか?」


「ラグル……です……。」


僕は力なく言った。

もしかして、ラスヴァル国が僕を殺させようとしているのかもしれない、と思うと心苦しくなった。


「私の名はブレイズ。こいつは私の弟のグール。」


「あの……。」


僕は思い切って、ブレイズに向き合って訊ねた。


「僕を、どうする気……?」


ブレイズはぐっと頭を近づけると、暫く僕の顔を見据えた。

上を見上げたまま呼吸がうまくできず、首を絞められたように息苦しい。

グラファイトとは違った威圧感に、僕はたじろいでしまった。


とその時、フフン、と、ブレイズは鼻で笑った。


「私はお前を取って喰うつもりはない。グールが喰わない限り、な。」


「え、……?」


僕は思わず首を傾げた。

ブレイズは首をぐっと擡げた。


「ジオグルス国に居たときのグラファイトの様子が聞きたくてな。それに、お前のこともだ。本当にお前は、グラファイトを誑かしたのか。」


ブレイズは無表情だった。


「違う、そんな事してない、僕は、――――」



―――――



「兄貴、聞いたか?」


我は頭を擡げた。何やら、厭な予感が躯を通り抜けた。


「何をだ。」


「ラグルって奴がここに来たんだってよ。」


「何だと!」


我は身震いした。まさか、あ奴が此処に来たとは……。

奴が誑かしたというのは間違っていたのか。

ぐぬぅ……我は、我は崇高なる竜族だ。一度でも我を誑かせば、罰を受けるに値する。

だが確かに、今改めて考えると、その話を聞いたのは、最も信用ならぬ人間からだった。


……


あの集団の中の一人が、名は分からぬが、人間がやってきた。

さっきまで散々侮辱した、丸々と肥えた餌だった。ラグルが出て行く時機を見計らったようだ。

そいつは檻の向こうから話しかけてくる。

無性に檻を破壊したくなった。


「……何だ、貴様か。」


「ラグルを待っていたのか、化け物。」


「誰が人間などを……」


「だろうな、ずっとお前を騙し続けていたんだからな。」


落ち着いてその攻撃を受け止める。我にはその余裕があった。


「……では、何故奴は我を騙す必要があるのだ。」


「金のためだ。ラグルは貧しい家の出だ。だから、お前を手懐けたらお金をやろうと言ったのだ。」


我はびくりとした。金……


……そうか、金だったのか。ラグルは我を騙していたのか。

怒りを覚えた。つい先程、同じように我が騙されたことを告白したではないか、だのに奴はその我を同じ手法で陥れたなど……。

然もさも同情したかの様に振る舞いおって。


「そしたら奴は喜んで引き受けたさ。結局は奴も、アルドと同じさ。」


アルドと同じ……同じだと……



……



「お前を唆した奴、なんだよな?」


我は、認めなければならぬ気がした。と同時に、我は認めたくなどなかった。

我は分からず、ただ矜持に従って、頷いた。




――――


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