02.うちの子は天才
俺は魔術書を持って庭に出る。
さすがに部屋の中で使うわけにもいかないしな。
魔術書を片手に右手を前に出す。
今から出すのは水魔法だ。
どうも、初心者が最も扱いやすい魔術らしい。
確かに、火やらなんやらよりは身近でイメージしやすい。
魔術書に書いてある通りに詠唱を始める。
「大気よりなる湧水よ、我が掌に集いて一つの球へとその形を変えよ、水球」
全身から何か熱いものが掌に集まるのを感じる。
そして、自分の頭の中で何かと何かが繋がったような感覚がした。
これが魔法回路が繋がるということなんだろうか。
最初、小さな水滴ができると段々と膨らんでいく。
そして手のひらサイズの水の球体ができた。
これが魔術か!
感動もほどほどに、次に取りかかる。
魔術書によると、水球というのは魔術の練習に使うのに持ってこいな魔術だそうで。
水球を維持する、大きさを変える、形を変える。
この魔術一つで魔力コントロールというものの練習ができるらしい。
ためしにやってみるが、これがなかなかに難しい。
ぐにゃぐにゃして、なかなか形状が定まらない。
うーむ、どうしたものか、と考えていると一つ妙案。
掌、水の玉、形状コントロール…何か思いつかないだろうか?
そう。
某忍者漫画の必殺技、螺○丸である。
あれはたしか形態変化を極めた技だった。
ならあの主人公と同じ要領でできないだろうか?
俺は魔術書を置き、左手にも魔力を込める。
そして両手で水球をコントロールする。
するとなかなか簡単に形状の変化に成功した。
確かに異世界系あるあるではあるが、前世知識は意外と役に立つんだな。
それから数十分は水球で遊んだが飽きたので次の魔術を使ってみる。
「清流よ、流れを束ね、彼の者を穿つ弾丸となれ、水弾」
水球と同じように魔力が掌へと集まり、魔法回路の繋がる感覚がした。
が、特に何も起きない。
どういうことだ?
魔法回路が繋がったということは詠唱を間違えてはいないはずだ。
次は水球のときのように両手で使ってみる。
しかし、何も起きない。
さて、これは先程よりも難題である。
そもそも魔術の発動すらできていないのだ。
何を改善しようにも悪いとことがわからなければ改善のしようがない。
丸1日考えたが答えはでなかった。
¨¨¨
翌日となった。
今日も魔術の練習をしようと思う。
水弾についてだが、もう諦めることにした。
わからないものはわからないのだ。
父親が帰ってきたら聞いてみようと思う。
剣士といえど冒険者だ。
初級魔術の知識くらいなら持ち合わせているだろう。
今日も水球を使った、魔力コントロールの練習をしていく。
水弾が使えない現状で、その先の魔術を使えるとは思えないしな。
それに何ごとも基礎練習は大切だ。
水球を出し、形を変えていく。
圧縮、膨張、簡単な星形やハート型、それから複雑な形を試していく。
形が複雑化するほど、細部の調整が難しくなる。
水球を変化させ、家にある色々なものを再現していく。
椅子、机、果物など、大小さまざまなものを模倣する。
いずれこれを使って等身大の分身を作れるようになったりして。
俺が魔術に夢中になっていると後ろから声がする。
「ア…ル?それって…、まさか魔術!?」
後ろを振り返るとそこに立っていたのはラミダ・アフォーレル、俺の母親である。
「母様…、あの、その、これは、えっと…」
別に悪いことをしているわけではないはずだが動揺してしまった。
まさかこんなに驚かれるとは思っていなかった。
ラミダが駆け寄って来た。
怒られるのかと思い、俺は目を瞑る。
しかし、そんな予想とは裏腹にラミダは俺を抱き上げた。
「すごい!すごいわ!うちの子は天才なのね!」
¨¨¨
今日は父親が家に居る日だ。
ラミダは父親に今日のことを話す。
それを聞いた父親も相当驚いた顔をしていた。
俺はもうすぐ三歳になる幼児だ。
驚くのも無理ない。
「アルはすごいな。将来は魔術師かな?」
そう言いゴツゴツとした大きな手で俺の頭を撫でる。
この男が俺の父親、グロワール・アフォーレルだ。
「それでね、あなた…」
どうやらラミダは俺に家庭教師を付けて、本格的に魔術をやらせたいらしい。
それを聞いたグロワールはしばらく考えた後、俺に問いかけた。
「アルはどうなんだ?魔術、習いたいか?」
俺は首を縦に振った。
自分に才能があるかもしれないと分かって、ここでノーと言うやつなどいるだろうか?
「よしわかった。まずは俺の周りから募ってみるよ。それでいなかったら街で募集をかけよう」
これで躓いていた水弾もなんとかなりそうだ。
これはもしかすると、俺TUEEEE的な展開もあり得るかもしれないな。
「だが、条件がある」
グロワールが口を開く。
表情からその真剣さが伺え、俺もしっかりと身体を向け直した。
「一つ目は途中で投げ出さないこと。二つ目は母さんの言うことをしっかり聞くこと。そして最後に…」
グロワールの表情が少し崩れた。
「たまには父さんと、剣術の練習もしてくれ」
グロワールは照れ臭そうにそう言った。
剣術も習いたかったし、グロワールが教えてくれるのなら俺としてもありがたい。
もちろんですと、返事をするとグロワールは嬉しそうに笑った。
それから1ヶ月後、グロワールは一人の魔術師を家に連れてきた。
皆さん気づいていると思いますが、ここまでほぼ無職転生のパクリです。
たぶんここからは別物になっていくので応援してね。




