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01.転生

「●▽■●◇◎」


 騒がしい。

 まだ死んでいない?


「◇▼▲♡★」


 俺が混乱しているだけだろうか?

 日本語には聞こえない。


 さっきよりは身体の自由が効く。

 目を開けると、西洋風の若い美女が覗き込んでいた。

 その側には美女と同じくらいの歳であろう若い男。

 美女は俺に微笑みかけ、男は涙を浮かべている。


 容態が悪すぎて海外の病院にでも飛ばされたのだろうか?


 状況を確認するため身体を起こそうとするが、それが出来ない。

 海外に行くくらいだ。

 相当身体が弱っているのだろう。


「あー、あぅ」


 その証拠にまともに発声することも出来ない。


 しかし、入院の費用はいったい誰が払っているのだろう。

 海外の病院なんて日本より格段と高いだろうし、両親が払えるとは限らない。

 俺に同情した富豪やらなんやらが、助けてくれたのだろうか?

 いや、そんなこと現実的には考えにくい。


 この状況を説明できること…、一つ思いつく。


 ラノベや漫画でよくみる、『転生』というやつだろうか?

 いや、そっちのほうが現実味がないか。


 ¨¨¨



 あれから半年以上が経った。


 どうやら俺は転生したらしい。


 しかも、同じ世界にではない。

 剣や魔法で戦う世界、いわゆる異世界にだ。


 ほんとうにラノベのような展開になってしまうとは。

 いやはや、人生何があるかわからないものだ。

 半年前に始まったんだけどね。


 初めにみた男女が俺の両親らしい。

 父親は冒険者をしているようで週1、2日しか家に居ない。


 家を女に任せきりなんて、現代日本じゃフェ○ニストに叩かれる…なんて思うかもしれないが、父親は冒険者として成功しているらしく、家には三人のメイドが常駐しており、母親はあまり大変そうではない。


 現在、俺はハイハイを習得して家中を探索している。

 と言っても段差を登ったり扉を開けたりはできない。

 しかし、そういうときは…


「どうしました?アル坊っちゃん」


 自分にできないことは大人に頼ってしまえばいいのだ。

 俺が階段の方を指さすとメイドは察してくれる。


「ああ、二階に行かれるのですね」


 メイドが俺を持ち上げる。

 顔に柔らかいものがあたり、顔を埋める。


 グヘヘ、これこそ男の夢よ。


 赤ん坊だからか、メイドは全く気にする様子がない。

 この身体のせいか俺も全く欲情しない。

 ただやってみたかっただけだ。


 母親にメイド三人、合わせて四人の美女たちがいるというのに全くエロい気は起きない。

 が決して俺の性的対象が女性じゃないわけではない。

 前世でちょっち可愛い看護師さんを見て起きてしまったりはしていた。


 身体がまだ精神年齢に追い付いていないからだろうか?

 きっと某名探偵も苦労したことだろう。


 さて、俺が二階に来た理由だが、それは本を読むためだ。

 もちろん、まだ字なんて読めないので読み聞かせてもらうかたちだが。

 早く字を覚えれば、より多くの情報を得られる。

 それこそ、魔法書っぽいものも置いてあるので字が読めるようになったら魔法の練習もしたい。


 異世界系のあるあるで、幼少期から魔法に触れることで魔力量が増えて…みたいなチート展開もあり得るかもしれないしな。


¨¨¨



 もう二年が経過した。


 この歳になるといよいよ本当に自由に動き回れるようになる。

 字の読み書きも簡単なものならできるようになった。


 勉強はあまり得意ではなかったが、さすが子供の身体。

 知識の定着が早い。

 ということで念願の魔術書を読み初めようと思う。


 家にあるもっとも簡単であろう、魔術書を取り出す。


『0から学ぶ初級魔術』


 いかにもな本を見つけ、ページを捲っていく。

 そして夢中になり読み進めていく。

 ところどこでわからない単語があるが、そこは後でメイドたちに聞こう。


 さて、読んでいくと色々なことがわかった。


 まず、魔術と言っても二つの種類がある。


・魔力魔術:自らの体内に宿る魔力や、特殊な物質から出る魔力を利用して起こす魔術

・精霊魔術:契約した精霊の力を借りて起こす魔術


 主流なのは前者であるが、後者は魔力量が少ない者やそもそも魔力をもたない者でも行使可能で使用者はそこそこいるんだとか。

 もっとも、後者の場合、発動の有無や魔術の威力などは精霊の気分次第で、ピーキーな性能をしているらしい。


 そして、次に書かれていたのは魔術の発動方法。

 魔法陣と詠唱の二つがあり、こちらは魔力魔術、精霊魔術ともに共通している。


 魔法陣と詠唱。

 どちらがより優秀なのかというと、使う魔術によって変わるらしい。


 そもそも、魔術の発動として古来から用いられていたのは魔法陣だ。

 しかし、魔法陣は一度魔術を発動すると魔法回路が焼き切れてしまい、再利用が不可能だ。


 そこで人間の言語として魔法回路を起こしたのが詠唱というものだ。

 これなら、文言を覚えれば魔力が底をつきるまで何度も使用可能だ。


 これだけ聞くと詠唱の方が優秀だと思うかもしれないが、そうにもいかない。

 簡単な魔術なら詠唱で良いが、複雑で高難易度の魔術、つまり魔法回路が複雑化するほど詠唱時間が長くなる。


 つまり、大規模な魔術を使うなら魔法陣に起こして置いた方が発動しやすいのだ。


 ここまで聞いて察しが良いやつならだいたいわかったと思うが…この世界、魔術師弱くないか?

 単純な強化魔法を詠唱で重ね掛けして、剣士が突っ込んでいった方が強そうだ。


 そういえば冒険者の父親は剣士をやっていたっけか。

 せっかく魔法のある世界なんだから、魔術師を目指そうとしていたが、早速ジョブチェンジか?


 まぁ、まだ初級本しか読んでいないし。

 レベルの高い魔術書を見れば考えも変わるかもしれない。

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