10.紅鷹
本当にめんどくさい展開になってしまった。
どうかログロースよ、ここは穏便に済ませてはくれないか。
「あぁ?なんだ、お前。やんのかぁ?」
うん、これは駄目そうだ。
「ログロースさん、喧嘩はしないって約束でしょう?」
「あ、あぁ。そうだった、そうだった。悪いな、お前みたいなのの相手するほど、ガキじゃあないんだ」
よし、いいぞログロース!
えらいぞ、ログロース!
「なんだぁ、お前。ビビってやがんのか?お子ちゃま達はさっさと帰って、ママのおっぱいでも吸っとけ」
そう言って、周りの仲間らしき奴らと一緒に男は笑った。
なんだ、そのガキみたいな煽りは。
そんな煽りに乗るやつなんて、それこそお子ちゃまじゃないか。
「なんだって?もう一遍言ってみろ!」
お子ちゃまだった。
「お子ちゃまは一度じゃ聞き取れないんだな」
「あぁ?シバくぞ」
「シバけるもんならシバいてみろ」
ガキの言い争いか。
お酒って怖いね。
いい歳した大人が二人揃ってこうもなるなんて。
言い争いが勢いを増す。
内容は本当に子供じみているが、これ以上酷くなったら言い争いじゃ終わらなくなる。
手が出てしまう前に、止め…
「うぐぅ!ってぇな何しやがる、このクソアマ!」
「蹴りだよ、蹴り。見て分からんなら、もう一発食らわせたろうか?」
遅かったか。
ここまで来たら俺には止められないな。
仲裁に入って巻き添え食らうのも嫌だし。
幸い(?)ログロースは未だに魔術は使っていない。
前回で少しは学習したのか、取っ組み合いで我慢している。
「この女、もう許さねぇ。お前はA級冒険者パーティ『レッドホーク』のリーダー、この紅鷹のレオン様を怒らせてちまったんだぜ?後悔してももう遅いぞ」
レッドホークで紅鷹って…、少し安直すぎやしませんか?
A級冒険者パーティのリーダーということは、冒険者の中でもトップクラスの実力を持っているということだろう。
そんなやつがこんな喧嘩っ早いなんて、冒険者という職業はよっぽど治安が悪いのだろう。
俺はその紅鷹の仲間らしき奴らを見る、メンバーは紅鷹を除いて五人。
その内、三人が男で二人が女。
男三人は喧嘩を囃し立てるようなことを言っており、この状況を楽しんでいるようだが、女性陣はそうでもないようだ。
一人は呆れた様子で、一人は関心すら無いような様子。
リーダーがこんなになってるのだから止めてもいいのに。
恐らくだが、こんな経験が何度もあってもう止めるのを諦めているのだろう。
なんか親近感が沸いてきた。
¨¨¨
だいぶ時間が経った。
両者は殴り殴られでもうフラフラだ。
「へへっ、お前なかなかやるじゃねぇか」
「ったりめぇだ。この紅鷹様をなんだと思ってやがる」
ヤンキーが喧嘩をした後にお互いを認めて仲良くなるような、そんな昭和のドラマのようなものを感じるのだが気のせいだろうか?
「これで、終ぇだぁ!」
「うぉぉぉ!」
お互いに頬を殴り合う、クロスカウンターのようになったかと思うと、両者一斉に倒れた。
ログロースのもとに駆け寄ると、頬を真っ赤に腫らせながら伸びていた。
すると、紅鷹の仲間もこちらに寄ってきて、その内のいかにも面倒見の良さそうな男が話しかけてきた。
「すまんなぁ坊主、うちのリーダーが」
「いえいえ、こちらこそご迷惑をお掛けしました」
「よかったら、そこの嬢ちゃんと一緒に宿まで送っていってやろうか?」
「是非おねがいしたいです。僕一人だと持ち運ぶのが大変で」
ありがたい話だ。
仲間の方は割かし常識があるのかもしれない。
「坊主もこんなこと良くあるのかい?」
「えぇ。旅をしているんですが、前の街でも同じようなことがあって」
「そうかぁ。互いに苦労しているなぁ」
そう思うなら止めてもくれても良かったのではないか?
俺も止めには入らなかったし、どっちもどっちか。
レッドホークのメンバーが、ログロースを担いでくれて早速宿へ向かおうとしたのだが、
「まさかそのまま帰るつもりではねぇよな?」
酒場の店主に止められた。
当たり前か、こんなに店をぐちゃぐちゃにしておいて、ただで帰れる訳がない。
前回は店内の全員が気を失っていたが、今回はそうではない。
こんなことなら、ログロースに魔術を使わせればよかった。
店主には店の内装の修理代と迷惑料をガッツリ要求されだ。
だか、俺たちはそんなお金は持ち合わせていなかったので俺たちの分はレッドホークが肩代わりしてくれた。
その代わり俺たちが街に滞在する間、レッドホークの受ける依頼を手伝うことになった。
修理代と迷惑料を合わせたらなかなかの金額だったが、そんなことで肩代わりしてくれるなんて、冒険者ってやつらも捨てたもんじゃないな。
そうして、俺たちの泊まる宿に着く。
「すいません、ここまで運んでもらって。それにお金まで」
「まぁ、良いってことよ。新人の面倒を見ることも俺たちA級冒険者パーティの役目だからな」
宿に着くまでの道中に少し話をしたが、やはりリーダー以外はまともそうだった。
「それじゃぁ明日、日が昇る頃に街の北門に集合だ。遅れるなよ?」
「はい、わかりました」
早速明日、依頼があるようで俺たちが手伝うことになった。
「それじゃ、俺たちはもう行くから」
「はい、お休みなさい」
結構良い展開かもしれない。
正直に言うと、ログロースとだけ依頼をこなしても良いっちゃ良いのだが、A級冒険者パーティを間近で見れる機会だなんてそうそうないだろうし。
喧嘩も悪いことだけじゃないのかも?
とりあえず今日も疲れたし、さっさと寝てしまおう。
明日の朝も早いしな。
寝れねぇ。
気絶してても、いびきって掻くんだな。




