11.レッドホーク
日が昇る前に俺は準備を始める。
その物音でログロースも眼を覚ました。
まだ開ききらない眼を擦りながら、口を開いた。
「どこ行くんだ?」
「依頼ですよ。ログロースさんも行くんです」
気絶していたログロースは今日のことを把握していない。
そっかぁ、とか言いながらログロースは支度を始めた。
今ここで、俺の目の前で。
露になるボディーライン。
熟しきっていない二つの果実。
突きつけられる、ログロースが女だという事実。
「何見惚れてんだ、このマセガキ」
そう言って俺のことを小突いたログロースは未だに上半身を隠していない。
「は、早く隠してくださいよ!」
「あ?別にいいだろ、減るもんじゃないし。それにお前に見られたって何とも思わねーよ」
うーん、それは何か悔しい。
ログロースはエルフだ。
見た目が若くてもそれなりに歳を重ねてるだろうし、その…経験が豊富なのかもしれない。
そんな中で六歳のガキに見られても何も思わないのかもしれない。
だとしてもこちとら中身はもうすぐ三十になる男だ。
男として見られてないと言われるとそれなりにショックは受ける。
気の落ちたまま、俺は準備を整えた。
¨¨¨
街の北門に到着すると『レッドホーク』のメンバーは既に揃っていた。
「すみません、待たせてしまいましたか?」
「いや、俺たちも今来たところだ」
リーダーよりリーダーしている男と、そんな彼氏彼女のようなやり取りをしているとログロースが吠えだした。
「おい、アル!なんでこいつらがいるんだ」
「それはこっちのセリフだ、クソアマ!」
それに応えたのは紅鷹。
この二人は気絶していたため、今日のことを知らなかった。
昨日の最後、認め合うみたいな雰囲気になってたじゃん!
なんでまた仲悪くなっちゃうかな。
事の顛末を説明し、どうにか二人をなだめた。
そして、リーダーよりリーダーしている男が口を開く。
「それじゃあ、まずは自己紹介から始めようか。俺はガレス。クラスは重騎士でランクはA級だ。よろしく」
温厚そうな顔とは違い、重量感と威圧感を与える鎧。
そして、背中に背負う巨大な斧。
強キャラ感増し増しだ。
「じゃあ次俺な。名前はルークだ。クラスは弓使い。ランクは同じくA級だ」
爽やかイケメン。
それしか言うこと無し。
トム・ホ○ンドに似てる。
爽やかさの中に幼さを残してる感じ。
惚れそう。
「俺の番ね」
次にしゃべりだしたのはどこか胡散臭い男だった。
白髪糸目、裏切るとしたらこいつだろうなって顔。
「エリオットっていいます。ランクは横に同じくで、クラスは盗人。よろしくお願いします」
なんか見た目通りって感じだな。
見た目の所為かしゃべりが関西なまりっぽく感じてしまう。
さすがに気のせいだろうが。
「次は私ね!私はリアナ。双剣士でランクはB級よ」
元気系のヒロインといった感じだ。
動きやすくするためか、装備は軽量な感じでログロースのものに近い。
ローブがない分、こっちの方が露出度が高くえっちだ。
あとは一人か。
「ほら、あんたも挨拶しなさい」
リアナに押され、前へ出てくる。
ぼーとした様子で、何を考えているのか読めない。
「セリス。神官。B級」
無口で無愛想、いわゆる綾波系ってやつだ。
ただ、顔は良い。
歳は周りより幼く見える。
最後に紅鷹に眼を向ける。
「え?俺か?俺はいいだろ、昨日言ったし」
なんというかこう、流れがあるじゃないか。
空気読めねぇな、こいつ。
「それでは僕らの番ですね。僕はアルバーシア・グラハレットと言います。クラスは魔術師で、ランクはF級です。昨日登録したばかりの新人ですが皆さんよろしくお願いします」
皆で拍手をしてくれた。
どうやら受け入れてもらえたようだ。
続いてログロースの番だが…一向に口を開く気配がないので、一発尻をひっぱたく。
「アル!何すんだてめぇ!」
「ログロースさんが何も喋らないからですよ」
「うぐぅ」
俺がそう言うと少しばつが悪そうな顔をして、ようやく口を開いた。
「名前はログロース・グラハレット。クラスは魔術師で、ランクはエ…B級。よ、よろしく」
ぶっきらぼうだが挨拶できて偉いぞ、ログロース!
「うちには魔術師が居ないからな、二人がいてくれて心強いぞ!自己紹介も終わったことだし、早速依頼へ向かおう」
ガレスがそう言い、皆で門を出た。
紅鷹…レオンを見るとガレスの後ろに続いている。
本当にあいつがリーダーなのか?
今のところ、人間性や統率力を見れば明らかにガレスの方がリーダーっぽい。
視線に気づいたのか、レオンと目が合う。
「なんだぁ、ガキ。俺のこと見て」
「い、いやぁ。今日の依頼ってどんなのかなぁって思いまして」
「今日の依頼……?おいガレス、今日の依頼ってどんなのだぁ?」
お前知らないのかよ!
「昨日説明したろ。この先の森でゾンビ系の魔物の発生が確認されたらしい。だから今日はそれの調査および発見しだい駆除」
「だってよ、ガキ」
魔物…か。
グロワールの話で良く聞いていた。
何らかの魔力的要因で発生する魔力災害の一種…らしい。
「おい、ガキ。ビビってんのか?」
「ま、まぁ。魔物駆除なんて初めてですし」
「大丈夫だって!ゾンビ系ってのはよぉ、足はトロいし攻撃も弱ぇ雑魚だぜ?」
ガハハと笑いながらレオンは俺の頭を撫でる。
「それによ、俺が生きてるうちにはお前は死なねえよ」
その大きな掌に少し懐かしさを覚えた。




